【シュタゲ・クロスSS】岡部「俺が、バーナビーに?」【タイバニ】

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 12:33:49.97 ID:AxZGJovCI
フェイリス「そうニャン。バーナビー・ブルックスJrの代役、やってほしいのニャン」

岡部「一体何故俺がそんなことをせねばならんのだ!」

フェイリス「世界に選ばれし英雄バーナビー……彼は今自分と戦っているのニャン。その間、彼の居場所を守れるのは凶真だけなのニャン!」

岡部「なぜお前はそんな話を知っているんだ?」

フェイリス「実はフェイリスは先祖代々ヒーローに協力してきたのニャン!」

岡部「ここははぐらかさずに答えて欲しいポイントなんだがな? 個人的な付き合いでもあるのか」

フェイリス「もう、乙女のプライベートを詮索する男はモてないニャン」

フェイリス「それにタダなんて言わないニャン。やってくれるなら凶真の領域(テリトリー)に極寒の息吹(ヘルブリザード)を与えるニャン」

岡部「何ッ!? 極寒の息吹を、だと」

フェイリス「もちろん、それとは別に日給を支払うニャン」

岡部「うーむ……」

岡部「いいだろう。結ぶぞ、その契約!」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 12:38:40.27 ID:AxZGJovC0
虎徹「コイツがバニーの代役ですか? どんな能力を持つNEXTなんです?」

岡部「別に俺はNEXTじゃ……」

ロイズ「いや、君はNEXTだよ。検査結果も出ている」

岡部「馬鹿な!?」

ロイズ「しかし肝心の能力は、本人が使ってみないと分からないね」

虎徹「でもこいつ、今まで自分がNEXTだって知らなかったんですよね。戦えるとは思えませんよ」

岡部「俺はバーナビーのスーツを着ろとしか聞いてませんよ。戦うなんて無理です」

ロイズ「分かってる。バーナビーの体格にあって、かつNEXTという条件だけで探したから……戦闘に出てもらうつもりはない」

ロイズ「あくまでバーナビーが復帰するまでのつなぎだから」

虎徹「なんか不安だなぁ……」

ロイズ「文句言うならやめてもらっても……いや、今は困るか」

ロイズ「とにかく、よろしく頼んだよ」

虎徹「ちょ、ロイズさん!」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 12:42:24.82 ID:AxZGJovC0
岡部「行ってしまいましたね」

虎徹「ったく……あ、俺は鏑木・T・虎徹。まぁ分かってるだろうけど、ワイルドタイガーだ」

岡部「岡部、じゃなくて鳳凰院凶真です。よろしくお願いします」

虎徹「いや、この資料には岡部倫太郎って書いてあんだけど」

岡部「それは”機関”を欺くための偽の情報です」

虎徹「”機関”?」

岡部「おっと、”機関”に興味を持ってはいけません。いくらヒーローといえども奴らには勝てない」

虎徹「おいまさかその機関ってのは……」

岡部(待てよ? ヒーローってことは本物のやばい組織について知ってるんじゃ? これはマズイ)

岡部「あ、いや! なんでもないです! 気にしないでください!」

虎徹「? 変な奴だなぁ」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 12:45:54.10 ID:AxZGJovC0
虎徹「とりあえず明日ヒーローショーがあるから、頼むぜ」

岡部「なっ! しかし声でバレるんじゃ」

虎徹「大丈夫だ、スーツにはボイスチェンジャー機能がある。あとは台本通り読めばいい」

岡部「え、明日までに台本覚えるんですか!?」

虎徹「その必要もねーな、スーツ内に台本のデータが入ってる。ま、流れを掴むためにひと通り読んでおいてくれ」

虎徹「今日は特にやることないから、解散ってことで。何か聞きたいことはあるか?」

岡部「ふむ……バーナビーに一体何があったんですか?」

虎徹「悪ィ、それは企業秘密って奴だ。まぁ何日かすれば復帰するだろうよ」

岡部「そう、ですか。分かりました」

虎徹「これが俺の電話番号だ、何かあったら連絡くれ」

岡部「ありがとうございます」

岡部「ヒーローの電話番号……ククク、これさえあれば奴らもおいそれと手は出せまい」

虎徹「……本当にコイツで大丈夫なのか?」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 12:51:19.31 ID:AxZGJovC0
ラボ――

岡部「鳳凰院凶真、ただいま帰還したぞ!」

ダル「なんか臨時のバイトだっけ?」

岡部「そうだ。しかも報酬は最新式の極寒の息吹(ヘルブリザード)! 設置料も込みだ!」

まゆり「なんかすごそうだねぇ」

紅莉栖「ただのエアコンでしょjk」

ダル「さすがオカリン! 僕たちにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれるあこがれるゥ!」

まゆり「どれぐらいの間お仕事するの?」

岡部「わからん」

紅莉栖「はぁ? アンタ何やってんのよ! いくら最新式のエアコンもらえるって言っても、何日働くか決まってないって……」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 12:53:49.85 ID:AxZGJovC0
岡部「あぁ、それなら問題ない。エアコンとは別に日給も出るからな」

ダル「何それうますぎ……どんだけヤバイ仕事なん?」

岡部「簡単にいえば、きぐるみきていろいろやる感じだ」

まゆり「本当? オカリンがきぐるみ着た姿、見てみたいなぁ」

岡部「残念ながらこれは極秘任務なのだ。誰にも見せられん」

まゆり「えー、ラボメンでも?」

岡部「いくらラボメンでもダメなものはダメだ」

まゆり「残念なのです……」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 12:58:07.17 ID:AxZGJovC0
次の日――

虎徹「よう、来たか」

岡部「おはようございます」

ブルーローズ「へぇ、あなたがバーナビーの代わり?」

岡部「ブ、ブルーローズ! 氷河の大地を支配する女王……なんてオーラだ!」

ブルーローズ「は、はぁ?」

虎徹「気にすんなブルーローズ。こいつちょっと変わってるんだ」

ブルーローズ「ちょっとじゃないけど……まぁいいわ、よろしく」

岡部「よろしくお願いします、クイーン」

ブルーローズ「だれがクイーンよ!」

虎徹「たはは……んじゃ、スーツに着替えてくるか」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:03:19.83 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「倫太郎、スーツのサイズはどうだ?」

岡部「問題ないですね、ある程度は伸縮性ありますし」

岡部「それにしてもすごいスーツだ……ダルが見たら発狂しそうだな」

斎藤『ほほう、このスーツのよさが分かるか!』

岡部「どぅわぁああっ!」

ワイルドタイガー「斎藤さん、マイク通すと本当に声でかいですね……」

斎藤『細かいことはいいんだよ! 私は斎藤、このスーツを作った者だ』

岡部「あなたがこの素晴らしいスーツをっ!?」

斎藤『あぁ、私のノウハウをつぎ込んだ自信作だ』

岡部「あなたにはぜひ我がラボの方に来ていただきたい!」

斎藤『ラボ……君も科学者なのかい?』

岡部「はい! 狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真です!」

斎藤『鳳凰院凶真……どっかで聞いたような』

岡部「すでに俺のことを知っているとは光栄です!」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:07:04.56 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「あんまり時間ないんで、通信切りますよ」ブチッ

斎藤『ちょっと待て、タイ――』

ワイルドタイガー「あの人話し始めると長いからなぁ。それにしても、斎藤さんがお前のことを知ってるなんてな」

岡部「しかしあまりに俺の存在を知られると”機関”の連中が……」

ワイルドタイガー「はいはい。んで、台本データの出し方なんだが」

岡部「大丈夫です、すでに起動しました」

ワイルドタイガー「近頃の若い奴はメカに強いんだなぁ。俺なんかコンソール操作覚えるのに何ヶ月かかったことか」

岡部「なにせ俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真ですから!」
斎藤(鳳凰院凶真……うーむ、どこで聞いたんだったか)

斎藤(あぁ、@ちゃんの糞コテにそんな奴がいたな)

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:11:13.57 ID:AxZGJovC0
悪者たち「ウケケー!」

岡部「がはっ……!」

ワイルドタイガー「ぐわぁっ! だめだ、敵が多すぎる」

岡部(バーナビーがやられ役。しかもこんなザコみたいな奴にぼろ負けだと!)

岡部(というかこの鳳凰院凶真が、こんな連中にぼろ負けとか納得いかん!)

悪者たち「ウケケ、トドメだー!」

ブルーローズ「そこまでよ!」

悪者たち「!?」

ブルーローズ「私の氷はちょっぴりCOLD。あなたの悪事を――」

岡部「キサマらァ! 調子にのるなァ!」ドガーン

悪者たち「ウギャーーーー!!」

ブルーローズ「ちょ、ちょっと! 私の見せ場だったのに!」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:15:27.77 ID:AxZGJovC0
岡部「すみませんでした、つい……」

ブルーローズ「つい、じゃないわよ! 私の出番なくなっちゃったじゃない!」

虎徹「まぁまぁ、お客さんのウケはよかったし。お前は歌でステージ独占できただろ?」

ブルーローズ「まぁそうだけど……次からは気をつけてよね」

岡部「も、申し訳ない」

虎徹「いやー、お前面白いなぁ」

岡部「ふっ、なぜなら俺は狂気の」

虎徹「それなげーから!」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:19:14.76 ID:AxZGJovC0
数日後――

岡部「今日は……ゴミ拾い? 何か地味ですね」

虎徹「ルナティックのおかげで、ヒーローのイメージがた落ちだからな」

アントニオ「お前がバーナビーの代理か? 俺はロックバイソンだ、よろしくな」

岡部「あなたが牛角さんの中の人でしたか!」

アントニオ「そのあだ名定着しすぎだよなぁ……はぁ」

岡部「あ、もしかして嫌でしたか?」

アントニオ「スポンサー様のイメージが大きいってのは良い事なんだが、個人的にはな……」

岡部「では呼び方を変えましょう、ミスタードリラー」

アントニオ「おぉ、なんだかかっこいいな!」

虎徹(どこがだよ!)

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:24:25.58 ID:AxZGJovC0
キース「君がバーナビー君の……はじめまして、スカイハイだ」

岡部「あ、あなたが……キングオブヒーロー、スカイハイ! お会いできて光栄です!」

キース「ハッハッハ、ありがとう。私も君に出会えてうれしい、そしてうれしい!」

岡部「で、でた! スカイハイの迷言! しかしあなたの能力は実に素晴らしい……さしずめ、風の魔術師と言いましょうか」

キース「風の魔術師か……実にステキじゃないか!」
アントニオ(あれ、俺の時と扱いが……)

虎徹「ドンマイ」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:27:29.03 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「結構ゴミ落ちてんなぁ」

岡部「そうですね。普段あまり意識してないから気づきませんでしたよ」

ロックバイソン「こういう地味な作業、嫌いじゃないぜ」

キース「む……こ、こんな所にヒーローカードが捨てられている。悲しい、そして悲しい……」

ロックバイソン「誰のだ? こ、これは……」

ワイルドタイガー「お、俺のカードじゃねぇか! だーっ、最近結構活躍してるってのによぉ」

ロックバイソン「自分で言うなよ」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:32:14.54 ID:AxZGJovC0
女の子「バーナビー様! マスクとってくれませんかぁ!」

岡部(な、何っ!? まさかこの小娘、”機関”の工作員……?)

ワイルドタイガー(最近ずっとマスクだからな、怪しまれるに決まってんじゃねーか!)

岡部(と、とにかく虎徹さんに相談だ……通話機能、オン)

岡部『虎徹さん、聞こえますか?』

ワイルドタイガー『お、おう!』

岡部『この状況、どうすれば……』

ワイルドタイガー『ど、どうしような? 斎藤さんに聞いてくれ!』

岡部『そんな無茶な……いや、それでも斎藤さんなら何とかしてくれる! 斎藤さん、何とかしてください!』

斎藤『普通にマスク外していいぞ』

岡部『はい?』

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:35:29.24 ID:AxZGJovC0
斎藤『なにウジウジしている。めんどうだな、こっちから操作して外すぞ』

岡部『ま、待ってくださ――』

岡部(とうとう俺の素顔が全世界に!? このあと俺は”機関”の連中にあんなことやこんなことを……)

女の子「きゃー、バーナビーかっこいい!」

岡部(どういうことだ?)

斎藤『こんな事もあろうかと、お前の顔にバーナビーの顔テクスチャを貼り付ける機能、追加しておいたのさ』

岡部『さ、さすが斉藤さん!』

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:39:00.02 ID:AxZGJovC0
数日後――

バーナビー「ご迷惑をおかけしました」

虎徹「もういいのかバニー」

バーナビー「いい加減バニーって呼ぶのやめてください……おや、あなたは?」

虎徹「あぁ、こいつはこの数日間お前の代役をやってたんだ」

バーナビー「そうでしたか。ありがとうございます」

岡部「いや、こちらこそありがとうございます。貴重な体験ができました」

虎徹「短い間だったが楽しかったぜ、倫太郎」

岡部「俺もですよ」

虎徹「何かあったら、いつでも電話してくれよ?」

岡部「はい、ありがとうございました」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:42:29.22 ID:AxZGJovC0
岡部「鳳凰院凶真、ただいま帰還した」

ダル「オカリンお帰りー。いやー、エアコンがあるってマジ最高すなぁ」

岡部「な、26度だと!? 馬鹿者、電気代は俺たちで払うんだぞ。28度に変更だ」

ダル「ちぇー。タイムリープマシンの制作、かなり汗だくになるんだぜ?」

岡部「28度でも十分だろう。あー、それとだな……今日で臨時のバイトは終了した」

ダル「乙! んじゃオカリンのおごりで飯食いに行こうぜ」

岡部「フッ、いいだろう。タイムリープマシンが完成した暁には、いくらでもおごってやろうではないか」

ダル「マジっすか! さすがに厨二病患者は格が違った」

岡部「ところで、まゆりと紅莉栖の姿が見えないが……」

ダル「飯の材料の買い出しに行ったお。もうすぐで完成しそうだから泊まりがけで作業するってさ」

岡部「ほほう、それは楽しみだな」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:47:50.28 ID:AxZGJovC0
次の日――

紅莉栖「これでオッケー、かな」

ダル「ふぅ。さすがに徹夜はキツイっす」

岡部「完成、したのか?」

紅莉栖「えぇ……私達、とんでもないものを作っちゃったんじゃない」

ダル「実験するのかい、オカリン」

岡部「実験したい。なぜならこれは俺たちが作ったものだからだ」

岡部「だが、実際にタイムリープをするのは多くの問題がある」

紅莉栖「そうね。過去に例がないし、何が起きるか分からないわ」

岡部「…………」

岡部「実験は中止。マシンはしかるべき研究機関に託して、世間に公表しよう」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:51:12.40 ID:AxZGJovC0
まゆり「ただいまー、買い出し行ってきたよー。うわぁ、お寿司にピザ……豪華だねぇ」

岡部「Lサイズのピザを5枚とか気が狂っとる……」

ダル「ま、いざとなったら僕が全部食べるからおk」

まゆり「あ、フェリスちゃんは来れないみたい」

岡部「そうか……ルカ子も来れないようだし、食べ物が少々余りそうだな。指圧師も連絡がこない」

鈴羽「おーっす。今日店長が早めに店閉めたから遊びにきたよー。うわっ、すごい豪華じゃん」

岡部「フッ、すべてこの鳳凰院凶真の極秘任務の報酬によるものだ」

鈴羽「……極秘任務?」

岡部「悪いが質問には答えられんぞ。極秘だからな」

鈴羽「まぁ、いいけどさ」

岡部「それでは、タイムリープマシンの完成を祝って――乾杯!」

「乾杯!」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:56:51.54 ID:AxZGJovC0
ダル「うえっぷ、さすがに食い過ぎたお」

まゆり「ピザ3枚も食べるなんてすごいねぇ」

岡部「これ以上ブクるなよダル?」

ダル「そういうオカリンだってドクペ8本目ですよねそれ?」

岡部「フッ……狂気のマッドサイエンティストだからいいのだ!」

ダル「イミフにもほどがあるんですけど」

鈴羽「岡部倫太郎」

岡部「何だ、鈴羽?」

鈴羽「タイムリープマシンは完成してるんだよね?」

岡部「あぁ……今日完成した」

鈴羽「私、ちょっと外行ってくるね」

紅莉栖「……何なのかしら?」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 13:59:18.98 ID:AxZGJovC0
まゆり「何か面白い番組やってないかなぁ……って何これ!?」

クリーム『我々はウロボロス。我々は、この街に囚われている同志ジェイク・マルチネスの解放を求めます』

クリーム『ご賛同頂けないようでしたら、この街の主要な柱を破壊します。そうしたら、この街は瓦解しますわ』

クリーム『脅しでないということを証明するために、この街につながらう交通網を爆破して差し上げましょう』

少し離れた場所で大爆発が起き、床が大きく揺れる。

ダル「ちょ、爆破テロ!?」

岡部「ど、どういうことだ……」

クリーム『これで脅しでないと御理解いただけましたでしょうか』

クリーム『良い返事を期待しておりますわ』

36: ×つながらう ◯つながる 2011/11/12(土) 14:04:56.52 ID:AxZGJovC0
岡部「こんなに大きな犯罪なんて初めてだぞ!? どうなっているんだ……」

岡部がそうつぶやいた直後、ラボの扉が蹴破られた。
侵入してくるのは銃を構えた五人の男。

「動くな。両手を上げろ」

岡部「なっ……なななな!」

「声を出すな」

岡部「……」

蹴破られた扉の向こうから足音が聞こえる。まさかこんな時に、ラボメンの誰かが来てしまったのだろうか?
どうやらその予想は当たっていたらしい。
しかしそのラボメンは黒いライダースーツをまとい、手には拳銃を握っていた。
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:08:50.13 ID:AxZGJovC0
岡部「桐生、萌郁……!?」

萌郁「タイムマシンは回収させてもらう」

萌郁「岡部倫太郎、橋田至、牧瀬紅莉栖は我々に着いてきてもらう」

岡部「お前らは……SERNなのか」

萌郁「そう。SERNの実行部隊、ウロボロス」

岡部「ウロボロス……テレビでやってたテロ組織か! SERNはそんな奴らともつながっていたのか……」

隊員「M4、余計なことはしゃべるな」

まゆり「じょ、冗談だよね。萌郁さんはラボメン仲間、だよね?」

萌郁「…………」

萌郁「椎名まゆりは、必要ない」

萌郁はまゆりに拳銃の狙いを定め、そのトリガーを引いた。
まゆりの額に小さな穴が空いて赤い液体が飛び散る。糸が切れた操り人形のように、まゆりの身体は地面に崩れ落ちた。

岡部「まゆり、まゆりぃいいいいいい!」

ダル「う、うわあああああ!」

紅莉栖「そ、んな……」

岡部「まゆり、しっかりしろ! まゆり、まゆりぃいいいっ!」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:13:01.16 ID:AxZGJovC0
萌郁「分かった? これ以上抵抗するのなら、あなたたちも殺す」

岡部「桐生萌郁……殺す、殺してやる! うぉあああああああああっ!」

紅莉栖「岡部、ダメェエエエエッ!」

岡部「まゆりを殺したこいつだけは、絶対に殺してやる!」

萌郁「……それ以上近づくなら、撃つ」

岡部「俺も殺すか、まゆりを殺したように。やってみろよ!」

鈴羽「伏せて!」

ラボの入り口から鈴羽の声がした。鈴羽は萌郁の手に向かって銃を撃ち、拳銃を弾き落とす。
そして銃を持つ男たちを拳と蹴りで次々となぎ倒していった。

隊員「ぐわぁああああっ!」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:16:01.52 ID:AxZGJovC0
五人の男をなぎ倒した鈴羽が突如その動きを止めた。萌郁が予備の銃を鈴羽の額に押し付けていたからだ。
しかし鈴羽も即座に萌郁の額に銃口を押し付ける。

萌郁「あなた、何者なの……」

鈴羽はその問いには答えず、岡部の方を向く。

鈴羽「42型」

鈴羽「テレビ」

鈴羽「点灯済み」

岡部「!」

42型テレビ点灯済み……ラボの1Fにある大きなブラウン管テレビの電源が入ってるということだ。
そしてそれはタイムリープマシンを使う条件でもある。つまり、過去に戻れということだろう。

岡部(しかしあのマシンには多くの問題が……って俺は馬鹿か!?)

岡部(まゆりが殺されたんだぞ! こんな、こんな馬鹿な話があってたまるか!)

岡部と紅莉栖、ダルは開発室に駆け込み、タイムリープマシンの準備を始める。

紅莉栖「私が行くわ」

岡部「いや、俺が行く。俺がまゆりを助ける」

紅莉栖「でも、失敗したら……」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:18:26.36 ID:AxZGJovC0
鈴羽「チッ、そっちに一人いった!」

ダル「だああああっ!」

ダルは叫びながらその男に体当たりをかます。

隊員「ぐっ……邪魔だ」

しかし男はどこからか取り出したナイフでダルの身体を刺した。

ダル「ガハッ……」

岡部「ダルゥウウウッ! クソッ……!」

隊員「死ねぇえええ!」

ダルの血のついたナイフを岡部に向かって振りかざす男。この位置では避けられない。
しかし、その男と岡部の間に紅莉栖が身を挺して割り込む。

岡部「紅莉栖ゥウウッ!」

紅莉栖「岡、部……」

岡部「クソォッ……!」

ナイフで切られた紅莉栖の身体は男へと倒れこんだ。それによってわずかに隙ができる。
その隙に岡部は、ケータイの発信ボタンを押した。

岡部「跳べよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:21:45.89 ID:AxZGJovC0
岡部(タイムリープには成功した)

岡部(しかし再び桐生萌郁にまゆりが殺されてしまった)

岡部(そして再度タイムリープ)

岡部(だが、どこへ逃げてもSERNの連中は追ってきて……)

岡部(次も、次も……次も次も次も次も次も! まゆりは死んでしまった!)

岡部(何なんだこれは!? SERNはそんなにまゆりを殺したいのかよ!?)

岡部(あんな奴ら相手にどうやって戦えというのだ)

岡部(警察に話してみたが頭がおかしくなったと言われるし……)

岡部(誰か、誰かまゆりを助けてくれ)

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:25:08.04 ID:AxZGJovC0
岡部(未来から来ただなんてことを信じてくれる人なんて、いるのか?)

岡部(いるわけがないだろ、ははっ)

岡部(俺はどうすればいいんだ)

岡部(…………)

沈み込む岡部の脳裏に、ふとある壮年の男性の顔が浮かび上がる。

虎徹『何かあったら、いつでも電話してくれよ?』

岡部(!)

岡部(あの人なら、もしかしたら……)

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:30:23.06 ID:AxZGJovC0
岡部「頼む、出てくれ……」

虎徹『もしもーし、どちらさん?』

岡部「虎徹さん! よかった」

虎徹『その声、倫太郎か? どうした、いきなり』

岡部「虎徹さん! お願いします……俺の大切な人を、助けてください!」

虎徹『……何があった?』

岡部(あと数時間でSERNの連中がラボに襲撃にくる、時間がない)

岡部「すみません、ラボの方に来ていただけないでしょうか?」

虎徹『ラボ……あぁ、研究者だったな。場所を教えてくれるか?』

岡部「はい! 住所は……」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:33:54.44 ID:AxZGJovC0
虎徹「おーい、虎徹だ。開けてくれ」

岡部「虎徹さん! よかった、間に合った」

虎徹「それで、何があったんだ?」

まゆり「この人がオカリンが言ってたボディガードさん? はじめまして、椎名まゆりです」

虎徹「こりゃどーもご丁寧に。俺は鏑木・T・虎徹……ってボディガードぉ?」

岡部「はい。にわかには信じられないでしょうが、聞いてほしいことがあるんです」

虎徹「その顔……マジなようだな。分かった、話してくれ」

岡部「実は……」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:39:17.76 ID:AxZGJovC0
虎徹「何だってぇ!?」

虎徹「2時間後、爆破テロによりシュテルンビルトの外に出る手段がなくなる」

虎徹「そしてお前のラボが襲撃され、そこのお嬢ちゃんが?」

岡部「はい……」

虎徹「よく話したな、お嬢ちゃんに」

岡部「まゆりに押し切られてしまいまして……」

まゆり「隠し事はよくないのです」

まゆり「でも……まゆしぃはね、嬉しかったよ。オカリンが何度も何度も、まゆしぃを助けようとしてくれたこと」

岡部「まゆり……」

まゆり「でも、なんで萌郁さんが」

岡部「俺にも分からないよ」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:44:37.90 ID:AxZGJovC0
虎徹「さて、どうするか……。なぁ、その襲ってきた奴らについて分かることはないか?」

岡部「奴らはSERNの実行部隊、ウロボロスと言っていました」

虎徹「ウロボロス!?」

岡部「ご存知なんですか!」

虎徹「あぁ……。知り合いの両親がウロボロスに殺されたんだ」

岡部「そう、でしたか……」

虎徹「SERNってのは確かでけぇ研究機関だよな……そいつらの下位組織がウロボロスってことか。こりゃ相当でかそうだ」

虎徹「ここに来た奴の数は覚えているか?」

岡部「六人です。しかしラボから逃走した際にそこら中で襲われました」

岡部「街中に相当数が潜んでいると思います。街から出る道路には、大量のパワードスーツが配備されていましたしし」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:50:22.54 ID:AxZGJovC0
虎徹「なるほどね……。まぁ、ラボに襲撃してくる連中ぐらいは俺一人で余裕か」

虎徹「他のヒーローやアニエスに連絡を取ってみる。少し待っててくれ」

岡部「お願いします」

虎徹「出てくれよバニー……」

バーナビー『どうしました、オジサン』

虎徹「バニー! よかった」

バーナビー『よかった? 何がですか』

虎徹「突然こんなこと言っても信じられないかも知れないが、よく聞いてくれ」

バーナビー『なんです、そのまどろっこしい言い方は。らしくないですね』

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 14:55:00.08 ID:AxZGJovC0
虎徹「約2時間後、ウロボロスがこの街を襲撃する」

バーナビー『ッ!? どこでそんな情報を手に入れたんですか!』

虎徹(未来から来た奴に教えてもらった、なんて言ったら信じてもらえないだろうな)

虎徹「悪い、それは言えない」

バーナビー『出所を教えない情報を信用するとでも?』

虎徹「お前なら信じてくれると思ってるから話したんだ」

バーナビー『やれやれ、本当に馬鹿なオジサンだ。……詳しく聞かせてもらいましょうか』

虎徹「バニー……サンキュな」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:00:00.49 ID:AxZGJovC0
バーナビー『そんな大規模なテロを……ウロボロスめ』

バーナビー『市民の避難は無理でしょうね。爆破計画を前倒しにされる可能性が高い』

虎徹「だろうな、市民の避難はできそうにない」

岡部「やはりもう一度タイムリープを……」

虎徹「バカ。今まで成功してるからって、次も成功する保証はねぇんだぞ。副作用だってあるかもしれねぇ」

バーナビー『……オジサン?』

虎徹「すまん、こっちの話だ。バニーは市長が要求を呑むと思うか?」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:05:06.58 ID:AxZGJovC0
バーナビー『微妙ですね。市民の命がかかってるとは言え、極悪人を解放するとなると……あの人に決断できるとは思えません』

バーナビー『しかし、最終的には解放する流れになるかと』

虎徹「なぜそう言い切れる?」

バーナビー『おそらくマーベリックさんなら、逃したジェイクをヒーローが捕まえればいい……などと言ってくれると思います』

虎徹「確かに、マーベリックさんならやってくれそうだ。バニー、すまねぇが他の連中に連絡してもらえねぇか」

虎徹「俺が言うより、お前が言った方が信じてくれると思う」

バーナビー『分かりました。虎徹さんはどうするんですか?』

虎徹「少しやることがあってな。詳しいことは後で」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:09:26.72 ID:AxZGJovC0
虎徹「ウロボロスの連中は倫太郎たちを連れて行く、みたいなことは言ってないんだよな?」

岡部「言ってません。テレビで言ってたのはあくまでジェイクの解放だけ」

虎徹「市民巻き込まないだなんて言っておきながら、お前らをこっそり攫おうだなんてな。まぁ、俺が守ってやるから心配すんな」

まゆり「ボディガードさんはヒーローだったんだねぇ」

虎徹「な、なんで知ってるのかな? おい倫太郎!」

岡部「お、俺は話してませんよ」

まゆり「電話でバニーとかアニエスとか言ってた……バニーってたしか、ワイルドタイガーがバーナビーを呼ぶときに使うんだよね」

虎徹「あちゃー、他言無用で頼むぜ!」

まゆり「うん。ヒーローは正体を隠すものだもんねぇ」

虎徹「おぉ! よく分かってるなぁ、嬢ちゃんは」

虎徹「さて、とりあえずスーツを持ってきてもらうか。もしもし、斎藤さん――?」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:14:28.94 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「あと10分で爆破か。そして2分後にニュース、その直後にウロボロスの連中がここを襲撃」

ワイルドタイガー「二人は開発室に隠れていろ」

岡部「分かりました。まゆり」

まゆり「うん」

ワイルドタイガー「さーて、どっからでもきやがれってんだ」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:18:24.18 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「爆発――! そろそろ来るな」

ワイルドタイガー「…………」

ラボの扉が蹴破られた。

隊員「動くな。両手を上げろ」

ワイルドタイガー「お前らがウロボロスか」

隊員「ワイルドタイガーを排除する」

ワイルドタイガー(この反応、俺がいるってことを知ってたのか? 街中に潜伏してるんだから、おかしくはないか……)

ワイルドタイガー(だがこいつら、素人ってわけでもないが……エキスパートってほどでもない。能力は温存しておこう)

ウロボロスの兵士はワイルドタイガーに向けて一斉射撃。
しかし頑丈なスーツの前には豆鉄砲同然だった。

ワイルドタイガー「効かねぇなぁ……行くぜ?」

狭い室内、距離を詰めるのは容易だった。
ワイルドタイガーはあっという間に近づき、男たちを次々と殴り倒していく。

ワイルドタイガー「そんなもんか? そらっ!」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:22:14.20 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「大したことなかったな……おっと、もう一人いたんだったか。女を殴る趣味はないんだけどな」

萌郁「さすがヒーロー……普通の人間では歯が立たない」

ワイルドタイガー「なら降参してくれると助かるんだが?」

萌郁「その心配は、ない」

萌郁は何も持たぬ右手を前に出す。

ワイルドタイガー「おいおい、素手かよ」

萌郁「はぁああああ……」

萌郁が弱々しい声で気合を込めると、その右手に青く光るケータイが現れる。
目にも留まらぬ速さでケータイに文字を打ち続けると、携帯電話が徐々にその光を増していく。
まるで萌郁の右手が輝いているようだった。その様子はまさにシャイニング・フィンガー。

ワイルドタイガー「まさか、NEXT!?」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:30:09.51 ID:AxZGJovC0
萌郁「死ね」

ワイルドタイガーに向けて光る拳を振り抜く萌郁。
予想外の行動に対応できず、ワイルドタイガーはそれをもろにくらってしまう。

ワイルドタイガー「ぐわぁああああっ!」

萌郁「…………」

ワイルドタイガー「がはっ……なんて威力だよ?」

萌郁はダウンしているワイルドタイガーに飛びかかり、無言でラッシュを浴びせる。

ワイルドタイガー「ぐわっ、げほっ、ごほぁああああっ!」

岡部(あ、あいつNEXTだったのか……? こ、虎鉄さんが押されてる!)

まゆり(ダメだよオカリン、それ以上近づいたら気づかれちゃうよ!)

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:35:24.75 ID:AxZGJovC0
虎徹「はぁ、はぁ……仕方ねぇ、ワイルドに吠えるぜ!」

タイガーの身体を青い光がつつみ、ハンドレッドパワーが発動する。
5分間だけ身体能力を100倍にするという、虎徹のNEXTとしての能力。

のしかかっている萌郁の光る右腕を掴み、ラボの壁まで投げ飛ばす。

萌郁「うぐぅ、うぅ……」

ワイルドタイガー「女に暴力振るいたかねぇんだけどな……そうも言ってられねぇようだ」

萌郁は姿勢を直してワイルドタイガーへ殴りかかる。

萌郁「はぁあああっ!」

だが、今のワイルドタイガーには容易くかわせた。
そして萌郁の背後に回りこみ、首に手刀を入れて気絶させる。

ワイルドタイガー「少し寝ていてくれ」

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:40:34.53 ID:AxZGJovC0
岡部「すごい……これが、ヒーロー」

まゆり「あっという間にやっつけちゃったねぇ」

ワイルドタイガー「まぁな。だが敵はこいつらだけじゃねぇ……」

岡部「はい、分かってま――」

岡部がそう言いかけた時……ラボのガラスが割れ、何か小さなものが飛び込んできた。
次の瞬間、目の前に居るまゆりの身体がぐったりと倒れこんだ。

岡部「まゆり、まゆり! ちくしょう……また、まゆりが!」

ワイルドタイガー「ッ……狙撃か!」

岡部「くそっ……タイムリープするしか、ないっ!」

しかし再びラボにウロボロスの連中が現れる。先ほどの連中より凶悪な武装をしていた。

ワイルドタイガー「倫太郎、早く開発室に行け!」

隊員「そうはさせん」

ワイルドタイガー「お前らの相手は俺だ」

ワイルドタイガーがウロボロスの連中を押さえ込んでる間に、岡部は開発室に入る。

岡部「頼むから、跳べよぉおおおおおおおおおおおっ!」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:45:19.01 ID:AxZGJovC0
岡部(また、駄目だった。ヒーローの力を借りても……まゆりは救えないのか)

紅莉栖「おい、岡部。聞いてるの?」

岡部「ん? あ、あぁ……すまん」

紅莉栖「タイムリープ、してきたのね?」

岡部「!?」

紅莉栖「ケータイにかかってきた電話を取った瞬間、別人みたいな表情になったでしょ」

岡部「さすがは助手、だな」

紅莉栖「助手って言うな」

紅莉栖「今のアンタ、ひどい顔してる。未来で何があったの、話して」

岡部「分かった……」

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:51:52.30 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「そんな、まゆりが……」

岡部「どうすればいいか分からないんだ。ヒーローが居ても運命は覆せないなんて……」

岡部「ずっと緊張感張りっぱなしで、休まる時がまったくない」

岡部「まゆりが殺されたり、お前やダルが連れ去られたり……そんな光景を何度も、何度も見てきた」

岡部「もう、限界なんだ。俺は狂気のマッドサイエンティストでも何でもない……ただの大学生なんだよ」

紅莉栖「しっかりしなさい岡部! まだやれることはいくらでもあるでしょう?」

鈴羽「そう、牧瀬紅莉栖の言うとおりだよ」

岡部「鈴羽……いつの間に!?」

鈴羽「2010年は世界線が大きく変化する可能性がある年。今なら世界線変動率1.00%の壁を超えられるかもしれない」

岡部「???」

紅莉栖「???」

鈴羽「あちゃー、これじゃ意味不明だったね。とりあえず、この世界の構造から教えてあげるよ」

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 15:59:54.98 ID:AxZGJovC0
鈴羽「世界っていうのはさ、いくつもの可能性があるんだよ。その可能性ひとつひとつのことを世界線って言うんだ」

紅莉栖「可能性? 多次元世界……パラレルワールド理論とは違うのかしら」

鈴羽「違う。可能性はあくまで可能性、多次元世界理論みたいに異なる可能性同士が同時に存在するわけじゃない」

鈴羽「何かが起きたことによってスイッチのオンオフが切り替わって、世界が切り替わる感じ」

鈴羽「そして大量の世界線を束ねた、大きな世界線っていうのがあってね」

鈴羽「その大きな世界線の中の、小さな世界線同士でしか行き来はできない」

紅莉栖「つまり、何でもアリってわけじゃなくて、絶対に確定してることがあるってこと?」

鈴羽「そう。今いる世界線……仮にα世界線って呼ぶよ」

鈴羽「α世界線では、椎名まゆりが明日死ぬことは確定している。あとSERNによるディストピアが訪れることも」

鈴羽「他にもいろいろ確定事項はあるけれど……君たちに関係あるのはとりあえずこの2つ」

岡部「ちょっと待て……それじゃ、俺が何をしようとまゆりは助けられない、ということじゃないか!」

鈴羽「そう、α世界線だったらね」

76: 3行目 ×可能性同士 ◯世界同士 2011/11/12(土) 16:04:53.22 ID:AxZGJovC0
岡部「だがα世界線内にある世界線同士でしか移動できないと言っただろう」

鈴羽「例外がある。世界線の変動幅が大きい時期なら、α世界線を抜け出すことができる……かもしれない」

鈴羽「この2010年夏はまさにチャンスなんだよ、なんせ人類初のタイムマシンが完成した時期だからね」

鈴羽「そこにNEXTというこの世の理から外れた存在が加われば、もしかしたら……」

岡部「α世界線から抜け出せたら、まゆりは助かるのか?」

鈴羽「断言は出来ない。私はβ世界線になんて言ったことがないから、私にとってはどんな世界線なのか分からない」

鈴羽「でも、このα世界線にいたら椎名まゆりは絶対に死んでしまうよ」

岡部「そう、か」

紅莉栖「岡部……」

岡部「何をしょぼくれているクリスティーナよ! トリックさえわかればこっちのものだ」

岡部「さっさとそのβ世界線とやらに行くとしようではないか! フゥーハハハハ!」

紅莉栖「どうやって?」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 16:09:01.55 ID:AxZGJovC0
岡部「そ、それはだな……」

紅莉栖「何も考えてないのね。まったく……ま、その方がアンタらしいわね」

岡部「何を言うか助手、考えはあるさ。え、えーっとだな」

岡部「そ、そうだ。鈴羽は言ったよな、NEXTの力が必要だと」

鈴羽「うん」

岡部「実はこの鳳凰院凶真、NEXTなのだよ」

紅莉栖「は?」

岡部「は? ではない! 事実なのだよ」

紅莉栖「はいはいワロスワロス……冗談言っていい空気じゃねーだろ」

鈴羽「事実だよ。岡部倫太郎はNEXT」

紅莉栖「は? 阿万音さんまで何言ってるのよ」

鈴羽「岡部倫太郎のNEXTとしての能力……それは、別の世界線の記憶を継続すること」

鈴羽「リーディング・シュタイナー、だったかな」

岡部「あぁ……あれがNEXT能力だったのか」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 16:16:10.84 ID:AxZGJovC0
鈴羽「でもこの能力だけじゃダメなんだ。たぶんもっと強い力が必要」

紅莉栖「戦闘力皆無だしね」

岡部「以前のループではワイルドタイガーの力を借りたが、ダメだった……」

鈴羽「うーん、何をすればβ世界線に行けるか……それは私には分からないんだよね」

鈴羽「肝心な所で役に立てなくってごめん」

岡部「気にするな、お前が来てくれなかったら俺はもうだめだったかもしれん」

紅莉栖「む……」

岡部「もちろん紅莉栖もな、ありがとう」

紅莉栖「べ、別にアンタのためじゃないんだからなっ! まゆりのためよ、まゆりの」

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 16:24:03.81 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「今更なんだけど阿万音さん、あなたは何者?」

鈴羽「タイムトラベラー。α世界線から抜け出すために、未来から来たんだ」

鈴羽「未来ではSERNがタイムマシンを利用して世界を牛耳ってる」

鈴羽「争いはなくなったけれど、人間の感情もなくなった。みんな目が虚ろで……ひどい有様だよ」

鈴羽「だからお願い、岡部倫太郎。そんな未来を変えて欲しい」

岡部「鈴羽……」

鈴羽「それじゃ、私はタイムマシンの様子見てくるよ。何かあったら呼んでね」

岡部「あぁ、分かった」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 16:30:05.10 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「さて、どうする岡部?」

岡部「NEXTの能力か……ヒーロー全員にまゆりを守ってもらうとかどうだろう」

紅莉栖「テロリストが街を包囲してるんでしょ、ヒーロー全員が住民一人の護衛をするなんて無理」

岡部「た、確かに……」

紅莉栖「ヒーロー本部にまゆりをかくまってもらうっていうのはどうかしら」

岡部「どんな安全な所にいてもまゆりは死ぬ。っていうかそれNEXT関わってないだろ」

紅莉栖「あー、そうだった。NEXTをどうするかが問題よね」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 16:36:30.02 ID:AxZGJovC0
数時間後――

岡部「どれもこれもダメか」

紅莉栖「少し息をついたほうがいいかもね」

岡部「そうだった、すまんな紅莉栖」

紅莉栖「べ、別にアンタのためじゃないんだからなっ!」

岡部「少し外の空気を吸ってくる」

紅莉栖「いってらー」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 16:41:20.21 ID:AxZGJovC0
岡部「ふぅ……」

岡部「息をつこうにも、なかなかうまくいかないな」

岡部「ずっとまゆりを救うことを考えている……とりあえず、ラボから持ってきたドクペでも飲むか」

岡部「ごくごく……プハァーッ! やはりドクペはいいッ!」

岡部「ん? 電話か……どうした紅莉栖?」

紅莉栖『ちょっと聞きたいんだけど、岡部ってヒーローの電話番号持ってるわよね?』

岡部「あぁ、ワイルドタイガーのならな」

紅莉栖『教えて』

岡部「……何に使うつもりだ?」

紅莉栖『まゆりを救うためよ』

岡部「俺が電話をかければいのではないのか? 今どこにいる?」

紅莉栖『わ、私じゃなきゃダメなのよ。岡部の脳みそじゃ多分ついていけない』

岡部「…………」

岡部「お前がそこまで言うのだ。何か理由があるんだろう……分かった、教えよう」

紅莉栖『サンクス岡部』

87: >>84 いると思う 2011/11/12(土) 16:47:11.62 ID:AxZGJovC0

岡部「何か思いついたのだろうか? さすがは紅莉栖だな……」

岡部「さて、と……作業してる二人のための差し入れでも買ってくるか」

岡部「明日タイムリープマシンが開発できなかった、なんてことになっても困る」

岡部「とりあえずドクペとコーラ、あと適当に食べ物でも買えばいいだろう」

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 16:52:53.01 ID:AxZGJovC0
1時間後――

岡部「買いすぎたな……まぁ金は有り余ってるから問題ない。ダルや紅莉栖は俺とは比べものにならないほど頑張ってるしな」

岡部「ん、電話か。む、虎鉄さんから? 俺の電話番号教えた覚えはないんだが……はい、岡部です」

虎鉄『よう岡部。話は全部紅莉栖から聞いたぜ』

岡部「なっ、ななななななっ!?」

虎鉄『落ち着けよ。とりあえず深呼吸してみろ』

岡部「すーっ、はーっ……全部、とはいったい?」

虎鉄『明日の襲撃とか、まゆりって嬢ちゃんが死ぬこととかだな』

岡部(紅莉栖め、何を勝手に……いや、虎鉄さんには早めに言うべきだったな。これは紅莉栖が正しいか……)

岡部「そう、ですか」

虎鉄『そんでもって紅莉栖に聞いたぜ、嬢ちゃんを救う方法』

岡部「はいいいいい? 俺は知りませんよその話」

虎鉄『いやぁ、この作戦はお前に知られたら失敗するんだとよ』

岡部「……それを教えていいんですか?」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 16:59:01.12 ID:AxZGJovC0
虎鉄『あぁ。作戦があるってことは知ってもらっておいた方がいいらしい。あ、紅莉栖に代わるぜ』

紅莉栖『分かった岡部? 私がまゆりを救う作戦を考えてあげたから』

岡部「おい紅莉栖!」

紅莉栖『何?』

岡部「えっと、その、だな……あり、がとう」

紅莉栖『ッ!?』

紅莉栖『べ、別に岡部のためじゃ……』

岡部「ありがとう」

紅莉栖『もう……バカッ!』

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:06:03.51 ID:AxZGJovC0
岡部「それで、その作戦……自信はあるか?」

紅莉栖『あるって言いたいけれど、正直何が起こるか分からないわね』

紅莉栖『タイムリープマシンが完成したら、いつでもタイムリープできるようにしておいて』

岡部「分かった。おっと聞き忘れていた……俺は何かやることがあるのか?」

紅莉栖『何もな……あ、違うな。一日中ラボに居るようにして』

紅莉栖『あとタイムリープマシン実験は中止、打ち上げ会は実施で』

岡部「それだけか?」

紅莉栖『それだけよ』

岡部「了解した」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:11:29.08 ID:AxZGJovC0
次の日――

紅莉栖「これでオッケー、かな」

ダル「ふぅ。さすがに徹夜はキツイっす」

岡部「完成、したのか?」

紅莉栖「えぇ……私達、とんでもないものを作っちゃったんじゃない」

ダル「実験するのかい、オカリン」

岡部「実験したい。なぜならこれは俺たちが作ったものだからだ」

岡部「だが、実際にタイムリープをするのは多くの問題がある」

紅莉栖「そうね。過去に例がないし、何が起きるか分からないわ」

岡部「…………」

岡部「実験は中止。マシンはしかるべき研究機関に託して、世間に公表しよう」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:17:15.24 ID:AxZGJovC0
ダル「そんじゃ約束通り、今日はオカリンのおごりな」

岡部「任せておけ、いくらでも出してやろう。フゥーハハハッ!」

紅莉栖「んじゃ私とまゆりで買い出しに行ってくるから。行きましょ、まゆり」

まゆり「うん。分かったよ、紅莉栖ちゃん」

ダル「動くのめんどいし、ラボでgdgdしてるとしますか……」

ダル「昨日オカリンが大量にコーラ買ってきたから、まだ残りまくりんぐwwwうめぇwww」

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:20:49.69 ID:AxZGJovC0
まゆり「いっぱい買ったねぇ」

紅莉栖「えぇ、これだけあれば十分でしょ」

紅莉栖「ていうか絶対に買いすぎよ、これ……5人で食べられる量じゃない」

まゆり「あはは、そうかもね」

まゆり「橋田君ならたくさん食べてくれるよぉ」

紅莉栖「まゆり……それはタブーよ」

まゆり「あ、ごめんね」

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:23:34.26 ID:AxZGJovC0
まゆり「ただいまー、買い出し行ってきたよー。うわぁ、お寿司にピザ……豪華だねぇ」

岡部「Lサイズのピザを5枚とか気が狂っとる……」

ダル「ま、いざとなったら僕が全部食べるからおk」

まゆり「あ、フェリスちゃんは来れないみたい」

岡部「そうか……ルカ子も来れないようだし、食べ物が少々余りそうだな。指圧師も連絡がこない」

鈴羽「おーっす。今日店長が早めに店閉めたから遊びにきたよー。うわっ、すごい豪華じゃん」

岡部「それでは、タイムリープマシンの完成を祝って――乾杯!」

「乾杯!」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:28:04.47 ID:AxZGJovC0
ダル「うえっぷ、さすがに食い過ぎたお」

まゆり「ピザ3枚も食べるなんてすごいねぇ」

岡部「これ以上ブクるなよダル?」

ダル「そういうオカリンだってドクペ8本目ですよねそれ?」

岡部「フッ……狂気のマッドサイエンティストだからいいのだ!」

ダル「イミフにもほどがあるんですけど」

鈴羽「岡部倫太郎」

岡部「何だ、鈴羽?」

鈴羽「ちょっと風にあたってくるね」

岡部「あぁ……分かった」

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:32:41.31 ID:AxZGJovC0
まゆり「何か面白い番組やってないかなぁ……って何これ!?」

クリーム『我々はウロボロス。我々は、この街に囚われている同志ジェイク・マルチネスの解放を求めます』

クリーム『ご賛同頂けないようでしたら、この街の主要な柱を破壊します。そうしたら、この街は瓦解しますわ』

クリーム『脅しでないということを証明するために、この街につながらう交通網を爆破して差し上げましょう』

少し離れた場所で大爆発が起き、床が大きく揺れる。

ダル「ちょ、爆破テロ!?」

岡部(とうとう来たか……しかしヒーローが一人も来ていない。ラボの周りにでも居るのだろうか?)

岡部(しかしそれでは狙撃などされたらマズいんじゃ。いや、俺に出来るのは紅莉栖を信じる事だけだ)

クリーム『これで脅しでないと御理解いただけましたでしょうか』

クリーム『良い返事を期待しておりますわ』

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:35:34.79 ID:AxZGJovC0
岡部(ノーリアクションは不自然だよな、とりあえず驚いておこう)

岡部「一体どうなっているんだぁああああああああああ!」

ダル「少し落ち着けよオカリン」

ダルがそうつぶやいた直後、ラボの扉が蹴破られた。
侵入してくるのは銃を構えた五人の男。

「動くな。両手を上げろ」

ダル「ひっ……!」

「声を出すな」

岡部「……」

蹴破られた扉の向こうから足音が聞こえる。拳銃を持った桐生萌郁だ。
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:40:13.55 ID:AxZGJovC0
ダル「え、桐生氏……!?」

萌郁「タイムマシンは回収させてもらう」

萌郁「岡部倫太郎、橋田至、牧瀬紅莉栖は我々に着いてきてもらう」

紅莉栖「あなた達……何者なの?」

萌郁「SERNの実行部隊、ウロボロス」

ダル「ウロボロス……ってテレビでやってたテロ組織!? ちょ、SERNはそんな奴らとも組んでたのかよ!」

隊員「M4、余計なことはしゃべるな」

まゆり「じょ、冗談だよね。萌郁さんは仲間、だよね?」

萌郁「…………」

萌郁「椎名まゆりは、必要ない」

萌郁はまゆりに拳銃の狙いを定め、そのトリガーを引いた。
まゆりの額に小さな穴が空いて赤い液体が飛び散る。糸が切れた操り人形のように、まゆりの身体は地面に崩れ落ちた。

岡部「まゆり、まゆりぃいいいいいい!」

ダル「う、うわあああああ!」

岡部「まゆり、しっかりしろ! おい紅莉栖、どういうことだ!」

紅莉栖「……ごめんなさい」

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:46:32.13 ID:AxZGJovC0
岡部「失敗、なのか? なら急いでタイムリープを……」

紅莉栖「待って。岡部、何か感じない?」

岡部「何を言って……くっ、これは!?」

目に映るものすべてが乱れていく。聞こえる音すべてにノイズが入る。

紅莉栖「来た……ね、リー……シュ……イナー」

岡部「だがまゆりは俺の目の前で死んで……」

紅莉栖「あり、とう……。ごめ……さい……」

目の前にあるものがどんどん歪んで消えていく。
紅莉栖も、ダルも、倒れこむまゆりも、ラウンダーの連中も――。

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:49:52.45 ID:AxZGJovC0
すべてがなくなり目の前が真っ暗になったと思えば、次の瞬間に世界は再構築されていた。

岡部「世界線が……変わった?」

ロックバイソン「おい何ぼさっとしてやがる! 俺の後ろに隠れてろ!」

まゆり「そうだよオカリン、危ないよぉ」

岡部「え、まゆり!? 生きて、たのか……?」

ダル「オカリン、勝手にまゆ氏を殺すなよ」

場所はラボのすぐ近く。目の前には牛角さん。
そして視線を遠くに移すと、ウロボロスのパワードスーツと戦っているファイヤーエンブレム。

岡部「いったいどうなってるんだ!?」

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:54:43.15 ID:AxZGJovC0
岡部(リーディング・シュタイナーの弱点……それは、移動した先の世界線における過去の記憶がないことだ)

岡部(つまり俺はどうしてこんなドンパチの現場にいるかが、さっぱり分からん)

紅莉栖「ちょっと、静かにしてよ岡部」

岡部「紅莉栖、状況を説明してくれ」

紅莉栖「まさか……アンタタイムリープしてきたの?」

岡部「いや、違う。別の世界線から来たんだ」

ダル「リーディング・シュタイナー(笑)ですね、分かります」

紅莉栖「リーディング・シュタイナー(笑)とかいう厨二病に、付き合ってられる状況じゃないんですけど」

まゆり「まゆしぃはオカリンがウソついてるように見えないのです」

紅莉栖「うーん、まゆりがそう言うなら仕方ないわね……」

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 17:56:46.62 ID:AxZGJovC0
やっべミスってる
>>109はなかったことに

111: 訂正 2011/11/12(土) 17:57:56.44 ID:AxZGJovC0
岡部(リーディング・シュタイナーの弱点……それは、移動した先の世界線における過去の記憶がないことだ)

岡部(つまり俺はどうしてこんなドンパチの現場にいるかが、さっぱり分からん)

紅莉栖「ちょっと、静かにしてよ岡部」

岡部「紅莉栖、状況を説明してくれ」

紅莉栖「まさか……アンタ、タイムリープしてきたの?」

岡部「いや、違う。別の世界線から来たんだ」

ダル「リーディング・シュタイナーってやつ?」

紅莉栖「うーん……仕方ないわね、説明してあげるわ」

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 18:04:17.33 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「テレビ見てたらウロボロスとかいうテロ組織が、この街に居る極悪人を解放しろって言ってきたのよ」

岡部「ジェイク・マルチネス?」

紅莉栖「そう。要求はもうひとつあって……私たちラボメンの身柄」

岡部「俺、紅莉栖、ダルの3人だな」

まゆり「違うよぉ。そこにまゆしぃも入れて4人なのです」

岡部「はぁ? しかしまゆりは……」

紅莉栖「おそらくあいつらは、私達についてあまり詳しい情報がないんじゃない?」

ダル「まゆ氏も開発メンバーだと思ってるに100ペリカ」

紅莉栖「そんでヒーローたちに私たちは守ってもらってるってこと。オーケー?」

岡部「あ、あぁ」

岡部(なるほど、この世界線ならウロボロスに殺される可能性はなさそうだ……)

岡部(だがまだ油断はできない。まゆりが死なないとは限らないし、俺が死ぬ可能性も出てくる)

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 18:10:26.24 ID:AxZGJovC0
ファイヤーエンブレム「ぐぅ……数が多すぎるわね」

ロックバイソン「おい、大丈夫か!」

ファイヤーエンブレム「アンタはその子たちから離れないで頂戴……ファァアアアアイヤァアアアッ!」

ファイヤーエンブレムの両手からほとばしる炎が、パワードスーツを焼き尽くす。
しかし、倒しても倒してもキリがない。

ビルに設置された巨大モニタを見てみると、他のヒーローも苦戦しているようだった。

ワイルドタイガー『だーっ! こいつら何体いるんだよ!』

岡部(あんなに強い虎鉄さんがボロボロに……。ウロボロスやSERN、やばすぎるだろ……)

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 18:16:29.19 ID:AxZGJovC0
突然巨大モニタからジェイク・マルチネスの声がした。

ジェイク『ずいぶんと苦戦してるようだなヒーロー諸君!』

ジェイク『このままじゃ俺の圧勝で終わっちまうからな……チャンスをやるぜ』

ロックバイソン「チャンスだと?」

ジェイク『俺とヒーローでサシの勝負をしようじゃねぇか』

ジェイク『7人のヒーローのうち、ひとりでも俺に勝てればオーケーだ』

岡部(7人、だと……?)

クリーム『さすがジェイク様、なんて寛大なんでしょう』

ジェイク『という訳で楽しみにしてるぜ、ヒーロー諸君!』

テレビが切れた瞬間、パワードスーツの動きが止まった。

ロックバイソン「ちくしょう、舐めたマネしやがって……」

ファイヤーエンブレム「でもこれはチャンスよ、サシならあんな奴に負けるもんですか」

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 18:22:18.58 ID:AxZGJovC0
ロックバイソン「とりあえずこいつらを安全な場所に逃さないとな」

ファイヤーエンブレム「そうね……一緒についてきてもらうのが一番じゃない?」

ロックバイソン「だな。いいか?」

岡部「分かりましたよミスタードリラー」

ロックバイソン「? なんだそれ」

岡部(このあだ名を覚えていないだと? もしかして、世界線変動で俺がヒーローをやっていたことも無かったことに?)

紅莉栖「すみません、岡部はちょっと混乱しているみだいで……」

ファイヤーエンブレム「無理もないわね、いきなり命を狙われちゃうんだもの」

ファイヤーエンブレム「ま、私達がちゃんと守ってあげるから、心配しないで」

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 18:25:41.51 ID:AxZGJovC0
ロックバイソン「それにしてもすげぇな……タイムマシンなんて」

紅莉栖「い、いえ……そんな。ヒーローの方がすごいと思います」

ダル「ドラゴンキッドたんハァハァ」

岡部「自重するがいいぞ、ダル」

まゆり「ダルくんは変態さんなのです☆」

ダル「違うよ、僕はHENAIじゃないよ。HENTAIという名の紳士だよ!」

ファイヤーエンブレム「それにしてもアナタたち、結構のんきね……」

まゆり「ファイヤーエンブレムと牛角さんがそばにいるからだと思うのです」

ファイヤーエンブレム「嬉しいこと言ってくれるじゃなぁい」

ロックバイソン「俺は一生、牛角さんって呼ばれ続けるんだろうなぁ……」

127: 保守thx 2011/11/12(土) 18:50:19.60 ID:AxZGJovC0

岡部「なぁ……ヒーローって何人いたっけ?」

ファイヤーエンブレム「ヒーロー目の前にして、中々キツイ質問するわね」

まゆり「ファイヤーエンブレム、牛角さんにブルーローズでしょ」

紅莉栖「ワイルドタイガー&バーナビーにスカイハイ」

ダル「そしてドラゴンキッドたん! あわせて7人だろjk」

岡部「おいおい……折紙サイクロンをわすれるなよ」

ダル「誰っすか?」

岡部「いくら見切れ職人だからってそれはないだろ。まゆりは確か、折紙サイクロンのファンだったよな?」

まゆり「うーん……オカリンが言ってること、よく分からないよぉ。まゆしぃは牛角さんのファンなのです」

ロックバイソン「マジでっ!」

ファイヤーエンブレム「よかったじゃない、こんなに可愛いファンがいて」

岡部(世界線変動で折紙サイクロンの存在が消えたのか?)

岡部(世界線が変わる前の紅莉栖は、一体何をやったんだ?)

134: 保守thx 2011/11/12(土) 18:59:43.25 ID:AxZGJovC0
ロックバイソン「ここがジェイクに指定された闘技場だな」

ファイヤーエンブレム「なかなかいい趣味してるじゃない」

ロックバイソン「中に入るぞ。俺が先導する、ファイヤーエンブレムは後ろを頼むぜ」

ファイヤーエンブレム「分かったわぁ」

そして指定された部屋に入ると、他のヒーローたちが居た。

バーナビー「これで全員そろいましたね」

ドラゴンキッド「あんな奴に、絶対に負けないよ」

ブルーローズ「当然よ。懲役250年から1000年にしてやるわ」

まゆり「うわぁ、すごいね。ヒーローたちが勢ぞろいだよ」

ダル「生のドラゴンキッドたんktkr」

紅莉栖「橋田自重しろ」

ワイルドタイガー「こいつらがタイムマシンを? 見えねぇなぁ」

岡部(虎鉄さんも、俺のことは覚えていないだろうな。あまり干渉しないでおこう)

ブルーローズ「タイガーには言われたくないんじゃない、それ?」

スカイハイ「その通り、そしてその通り!」

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 19:05:24.45 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「対戦順は奴がクジで決めるらしい。俺が一番だったら速攻でぶっ飛ばしてやるよ」

ファイヤーエンブレム「アンタじゃ不安ねぇ。ここはやはりアタシが」

ロックバイソン「いやいや、俺だろう」

ワイルドタイガー「それはないな」

ファイヤーエンブレム「ないわね」

まゆり「そんなことないよ。牛角さんはとっても強いと思うのです」

ロックバイソン「まゆり……。ありがとう、そしてありがとう……」

ダル「イイハナシダナー」

紅莉栖「イイハナシカナー?」

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 19:12:09.77 ID:AxZGJovC0
部屋に設置されたモニターの電源が入り、ジェイクとクリームの姿が映し出される。

ジェイク「それじゃあ一回戦を始めるぜ。相手はこのダーツで決める……とうっ!」

クリーム「おーっと、ジェイク様の投げた矢が刺したヒーローは、スカイハーイ!」

ジェイク「いきなりキングオブヒーローかよ……こりゃ参ったぜ」

ワイルドタイガー「頼むぞ、スカイハイ」

紅莉栖「キングオブヒーロー……頑張ってください!」

岡部「何だ紅莉栖、スカイハイのファンなのか?」

紅莉栖「わ、悪いかっ」

岡部「別に悪いだなんて言ってないだろう、噛み付くな」

スカイハイ「フッ……ファンの目の前で負けるわけにはいかないな。私にお任せ、そしてお任せ!」

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 19:17:46.47 ID:AxZGJovC0
スカイハイが空を飛んで闘技場の戦場にやってくると、すでにジェイクが待ち構えていた。

スカイハイ「ジェイク・マルチネス! キサマの悪事もここまでだ!」

スカイハイ「今日の私は最大風速、計測不能! スカァアアアアアイ、ハァァアアアイッ!」

スカイハイは空中に浮かびながら風の弾丸を猛スピードで連射する。

ジェイク「おいおい、こりゃやべぇな……」

ジェイクはその場から動かず、次々と風の弾丸をくらう。
その状況をのんびりと実況するクリーム。

クリーム『おっと、さすがキングオブヒーロー。この怒涛の攻撃にジェイク様もピーンチ?』

スカイハイ「やったか?」

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 19:22:15.18 ID:AxZGJovC0
ジェイク「やって……ねぇなぁ!」

ジェイクは無傷だった。
しかし彼が立っている地面には大きなクレーターができており、スカイハイの攻撃力の高さを物語っている。

スカイハイ「バカな、無傷だと!?」

クリーム『さすがはジェイク様! あの猛攻を受けて傷ひとつついていません!』

ジェイク「それじゃ、こんどはこっちの番だ」

手を前にかざすと、その先端から何かを撃ちまくるジェイク。
スカイハイは華麗にかわしていく。

ジェイク「やるねぇ……ちょこっと本気だすか」

スカイハイ「フッ……本気と言ってもスピードも何も変わっていないな。これなら簡単に……ぐぁあああっ!」

スカイハイがジェイクの攻撃を交わした瞬間、移動した先に次の攻撃が飛んできていた。

スカイハイ「バカな……」

ジェイクの攻撃を受けて墜落するスカイハイに向けて、ジェイクは容赦なく追い打ちをする。

スカイハイ「ぐわぁあああああああっ!」

クリーム『勝負あり、ジェイク様の勝利ですわ!』

142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 19:28:38.64 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「そんな、キングオブヒーローが……」

ワイルドタイガー「あれはレーザーの類か?」

バーナビー「そう決め付けるのは早計ですよ、オジサン」

ワイルドタイガー「む……まぁ、相手の能力がなんだろうとぶっ飛ばしてやるまでさ」

クリーム『さて、次のヒーローは……』

ジェイク『そーらよっ!』

クリーム『おっと、相手は……ロックバイソン? あぁ、牛角さんですね!』

ジェイク『誰だァ、そいつ?』

ロックバイソン「どいつもこいつもバカにしやがって……」

まゆり「ひどいよね、牛角さんかっこ良くて強いのに! ね、オカリン!」

岡部「あ、あぁ……ばっちり俺達を守ってくれてたしな」

143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 19:34:29.89 ID:AxZGJovC0
ロックバイソン「タイムマシン開発者のボディガードともなれば人気がでる。ジェイクを倒せば人気急上昇まちがいなし……やってやるぜ!」

ファイヤーエンブレム「アンタの防御力なら、そうそうやられたりはしないでしょうけど……気をつけなさいよ」

ロックバイソン「分かってる……って尻を触るな!」

ファイヤーエンブレム「スーツ越しじゃ楽しくないわね。硬いだけだったわ」

ダル「アッー!」

紅莉栖「ヒーローもHENTAIがいたのね、最悪」

バーナビー「申し訳ございません……」

145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 19:40:34.70 ID:AxZGJovC0
まゆり「牛角さん、やられちゃった……」

ファイヤーエンブレム「アイツの防御力すら突破するなんて、なんて威力なの?」

ドラゴンキッド「ボク達の防御力じゃひとたまりもなさそうだね」

クリーム『ヒーローが弱すぎてジェイク様は退屈そうですね』

ジェイク『まったくだぜ、次と次の相手決めちまうか……そらっ!』

クリーム『おっと、次の相手はワイルドタイガー。その次はバーナビー・ブルックスJr……これは面白い事になりそうです!』

ワイルドタイガー「よっしゃあ……叩き潰してやるぜ!」

バーナビー「それは僕の台詞ですよ。ジェイクは僕が倒す」

ワイルドタイガー「はぁ? そりゃつまり俺が負けるって言いたいのかバニーちゃんよぉ」

バーナビー「いえいえ、そんなことは一言も言ってませんよオジサン?」

まゆり「テレビでは仲のいい二人って言ってたのに……」

ダル「ネットではめちゃくちゃ仲悪いって書かれてるお」

ブルーローズ「ちょっとふたりとも……ファンの夢を壊さないでよね!」

146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 19:47:53.84 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「ジェイク……俺はお前が倒す。ワイルドに吠えるぜ!」

クリーム『おっとワイルドタイガー、いきなり能力発動です!』

ジェイク「そう来なくっちゃな。せいぜい楽しませてくれよ?」

クリーム『ワイルドタイガー、目にも留まらぬスピードでジェイク様に向かって走る! そしてそのままタックル!』

ジェイク「見えてるんだよ」

クリーム『しかしジェイク様これをあっさりかわした!』

ワイルドタイガー「マジかよ!?」

クリーム『再びジェイク様に近づき何度も拳を繰り出すワイルドタイガー……しかぁし、そのいずれも当たらない!』

紅莉栖「何よあれ……あり得ないわ」

岡部「紅莉栖?」

紅莉栖「あんな常識を超えたスピードの攻撃、かわせる訳がない……来ることが分かってたりしない限りは」

バーナビー「ま、まさか、奴の能力は……」

147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:00:17.28 ID:AxZGJovC0
岡部「未来予知?」

紅莉栖「かもしれないわね。私は相手の思考を読むっていう能力だと思うけど」

ダル「でも牛角さんとの戦いでバリアを利用して攻撃するって分かったじゃん? 一人の能力は一つっしょ?」

ファイヤーエンブレム「もしかして能力を二つも持っているっていうこと?」

バーナビー「だとしたら……厄介ですね」

ドラゴンキッド「あのすごいバリアと相手の行動を読む能力……心を無にするしかないかな」

ダル「無心にするって結構難易度高いよね。キッドたん以外には無理じゃね?」

148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:07:08.63 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「だーっ、なんで当たらねぇんだよ」

ジェイク「おっと、能力が切れちまったようだな。そろそろ反撃といくか」

クリーム『ジェイク様がどんどん攻撃を放つ! 能力が切れたワイルドタイガー、避けることすらできません!』

ワイルドタイガー「がはぁあ……っ!」

ワイルドタイガー「まだだ、能力が切れようと……ヒーローは諦めたりしねぇんだよ!」

ジェイク「そんなのろまな動きじゃ無理だっての」

ワイルドタイガー「うぉおおおお……のわっ!」

クリーム『おっとワイルドタイガー、体勢を崩して前につんのめり……前にぐるりと一回転……そしてそのカカトがジェイク様の額に直撃!』

ジェイク「ぐわぁああああっ!」

150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:12:13.22 ID:AxZGJovC0
ジェイク「クソ虎鉄ゥ! よくもこんなヘボイ蹴りを……殺してやるッ! 死ねぇ――」

ワイルドタイガー「がはっ……ぐ、ぐわぁああああっ!」

クリーム『おっとジェイク様の堪忍袋の緒が切れてしまったようです! 容赦ありませーん!』

ワイルドタイガー「げほっ、げほっ……」

ワイルドタイガー(身体が動かねぇ……もう駄目なのか? すまねぇな友恵、楓、かーちゃん……岡部)

ジェイク「ん? お前……例のラボの岡部って奴と知り合いなのか? なら後で思いっきりボコボコにしてやるよ!」

虎鉄(あれ、岡部って……誰だっけ?)

ジェイク「天国でその様子を眺めて後悔しな、死ね――!」

萌郁「……させない」

どこから現れたのか、青く光る右手を持つ女がジェイクの攻撃を薙ぎ払った。

ジェイク「テメェは……例のラボに時々来ていたやつだな? まさかNEXTだったとは……」

152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:18:08.16 ID:AxZGJovC0
岡部「萌郁!?」

まゆり「萌郁さんすごーい!」

バーナビー「お知り合いですか?」

ダル「内のラボのメンバー。普段はラボの下にあるブラウン管工房で働いてるお」

岡部「しかし奴はSERNの、ウロボロスの手先じゃ!?」

ダル「は? オカリン何言ってるん? SERNとウロボロスにつながりがあるとかwwSERNはただの研究機関っしょ」

岡部「待て待て。SERNの悪事は、サーバーにハッキングして分かったじゃないかスーパーハカー」

ダル「SERNにハッキング? んなことしてねーよ」

紅莉栖「アンタが元いた世界線ではそうだとしても、ここでもそうだとは限らないのよ」

岡部「それは、そうだが……」

ドラゴンキッド「事情はよく分からないけど、ボクはあの人味方だと思うよ」

ファイヤーエンブレム「それに、かなり出来るわね」

154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:25:28.02 ID:AxZGJovC0
岡部「それとあいつの能力が分かったわ。相手の思考を読む能力だな」

まゆり「え、そうなの?」

ドラゴンキッド「さっぱり分かんないよ……なんでそう言い切れるの?」

紅莉栖「ワイルドタイガーの本名って、コテツ?」

岡部「そうだ」

ブルーローズ「なるほどね……明かされてないはずのヒーローの本名を言ったから」

ファイヤーエンブレム「ふーん。それにしても、タイガーの本名知ってるなんて只者じゃないわね」

紅莉栖「そうね。それにジェイクはタイガーが岡部の知り合いだとも言ってたし」

岡部(もしかして虎鉄さんは、俺のこと覚えてるのか……?)

155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:31:14.55 ID:AxZGJovC0
萌郁(岡部君を助ける。岡部君を助ける。ラボのみんなを助ける。市民を守るヒーローを助ける)

萌郁(岡部君を助ける。街を滅茶苦茶にしたウロボロスを倒す。岡部君を助ける岡部君を助ける岡部君を助ける……)

ジェイク(どうなってやがる……こいつの思考、滅茶苦茶じゃねーか! クソッ、頭がグラグラしてきやがる……)

萌郁「は――」

ジェイク「ガハッ……!」

クリーム『謎の乱入者の攻撃にジェイク様が押され気味? 頑張ってくださいジェイク様!』

ジェイク(相手の思考を読む能力はカットだ。こいつを相手にするには邪魔でしかねぇ)

ジェイク(バリア能力に力を集中。奴が近づいてきた所で全力で繰り出せばイける筈だ)

156: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:36:59.09 ID:AxZGJovC0
萌郁「…………」

クリーム『無言でジェイク様に襲いかかる女性! どうなるジェイク様!?』

ジェイク「舐めんじゃねぇぞぉおおおおお!」

萌郁「きゃぁああああ……っ!」

クリーム『なんとジェイク様、バリアの出力全開です! 女性がバリアにあたり吹き飛ばされていきます!』

萌郁「ぐっ……」

ジェイク(ブチ殺したいところだが、この女は何をしでかすか分からねぇ。深追いはヤメだ)

159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:47:44.28 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「くそっ……情けねぇぜ」

バーナビー「オジサン、しっかりしてください!」

ワイルドタイガー「はは、大したこと……ねーよ……」

ワイルドタイガー「岡部はいるか?」

岡部「は、はい!」

ワイルドタイガー「俺とお前ってさ、どこかであったことるか?」

ワイルドタイガー「なんかさ、バーナビーのスーツをお前が着てたりした、記憶が浮かんだんだよな」

岡部「はい、あります……」

ワイルドタイガー「そっか。その時、お前やまゆりを守るって……約束した気がするんだ」

ワイルドタイガー「すまねぇな……約束、守れなかったわ」

岡部「そんなことは、そんなことはありません!」

バーナビー「僕が必ずジェイクを……倒して見せます。ゆっくり休んでいてください」

ワイルドタイガー「すまねぇ。後は頼んだぜ、バーナビー」

バーナビー「……分かりました、虎鉄さん」

160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:52:46.93 ID:AxZGJovC0
クリーム『乱入者も退治しましたし、バーナビー戦に行ってみましょう!』

ブルーローズ「頼むわよバーナビー」

バーナビー「奴の能力は分かりました。必ず倒して見せますよ」

紅莉栖「でもこっちの動きがすべて筒抜けって……どうするつもり?」

バーナビー「さっき乱入してきた彼女のように、相手を倒すことだけ考えて……本能のままがむしゃらに戦ってみます」

161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 20:59:03.62 ID:AxZGJovC0
ジェイク「期待のニューヒーロー、バーナビーか。楽しませてくれよ?」

バーナビー「ジェイク……両親の仇、取らせてもらうぞ!」

バーナビー「うぉぁああああああああああっ!」

クリーム『おっとバーナビー、能力を発動して突撃です!』

ジェイク(こっちの能力は割れてるわけか……だがな、その程度じゃ簡単に心が読めるぜ?)

クリーム『しかしジェイク様は華麗にかわしていきます!』

ジェイク(さっきの女ほど怒りに身を任せてこられたらヤバいがな……あんな奴はめったにいねぇよ)

バーナビー(くそっ、当たらない! 奴を倒すことだけを考えろ。余計なことは考えるな!)

ジェイク「どうしたバーナビー、その程度かぁ?」

バーナビー(くそっ、くそぉっ!)

163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:07:03.59 ID:AxZGJovC0
ジェイク「能力ももうすぐ切れるし、さっさと倒すとしますかァ!」

クリーム『ジェイク様の猛攻にバーナビー、為す術もありません!』

バーナビー(駄目だったのか……本能のまま闘うなんて、無理だったのか?)

バーナビー(もう身体が動かない……)

バーナビー(能力が分かるきっかけを作った虎鉄さん、実際に能力が分かった岡部さん)

バーナビー(応援してくれているヒーローや市民の皆さん……)

バーナビー(父さん、母さん……)

バーナビー(ごめんなさい、僕はもう……)

ジェイク「じゃあなバーナビー。天国で両親と仲良く暮らす妄想を描きながら、死ね」

バーナビー「ガハッ……」

クリーム『ジェイク様の一撃が決まった! バーナビーに致命的な一撃を与えました!』

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:09:24.03 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「そんな……」

ファイヤーエンブレム「あの強烈な一撃を食らったら……」

岡部「バー、ナビー……」

ドラゴンキッド「そんな、ウソだよね?」

まゆり「ひどい、こんなのひどすぎるよ」

ダル「キングオブヒーローと、次期キングオブヒーロー候補が……」

ブルーローズ「バーナビーが、死んだなんて……認めないんだから!」

166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:16:21.11 ID:AxZGJovC0
バーナビー(僕は、死ぬのか?)

バーナビー(今までのヒーローは殺されなかったはず。なぜ僕だけ?)

バーナビー(って何を考えているんだ? 殺される可能性なんて十分にあるだろう)

バーナビー(今まではジェイクのきまぐれと、乱入してきた女性がいたから殺さなかっただけだ)

バーナビー(…………)

バーナビー(死ぬのは……嫌だ)

バーナビー(両親の仇を取るためだけに生きてきたのに)

バーナビー(その仇が目の前にいるのに)

バーナビー(みんなに託されたのに)

バーナビー(嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ――!)

バーナビー「うわぁぁああああああああっ!」

クリーム『おっとバーナビーが起き上がった!? そして咆哮を上げながらジェイク様に襲いかかる!』

ジェイク「ば、馬鹿なッ!」

168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:21:01.52 ID:AxZGJovC0
ジェイク(チッ……だめだ、動きが読めねぇ!)

バーナビー「ジェイクゥウウウゥウウウウウウッ!」

クリーム『ジェイク様、逃げてぇええええ!』

バーナビーがジェイクをひたすら蹴る。単純な攻撃だが圧倒的スピードで繰り出されるそれは強烈だった。
蹴りを何十発も浴びたジェイクはいつの間にか気を失っていたが、バーナビーはひたすら蹴りを続ける。
それを止めようとしたクリームにも蹴りを浴びせ、倒した。

他のヒーローが止めに入り、ようやくバーナビーは攻撃をやめた。

ファイヤーエンブレム「少し落ち着きなさい、ハンサム」

バーナビー「僕は、ジェイクを倒せたんですか?」

ドラゴンキッド「うん。バーナビーの圧勝だよ」

バーナビー「そう、です……か」

地に伏すバーナビーの身体。最後にジェイクからもらった攻撃は、そうとう効いていたようだ。

ブルーローズ「バーナビー!? ちょっと、しっかりしなさい! すぐに医療班が……」

紅莉栖「駄目。もう……死んでる」

170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:27:51.31 ID:AxZGJovC0
次の日、ラボ――

紅莉栖「本当に行くのね?」

岡部「あぁ。俺はこんな結末、絶対に認めない」

まゆり「オカリン……」

ダル「あのジェイクを次も倒せるとは限らないんだぜ?」

岡部「分かってるさ。だが、俺が余計なことを言わなければ……バーナビーは普段とは別物の戦い方をすることはなかったんだ」

紅莉栖「普段の戦い方をして勝てる相手じゃなかったのよ」

紅莉栖「それに、新しく考えた作戦が通用するかも分からない」

岡部「いや、お前の作戦は完璧さ。前の世界線でも完璧だったからな」

岡部「それじゃ……行ってくる」

まゆり「いってらっしゃい、気をつけてね」

ダル「牧瀬氏だけじゃなくて、僕の技術力も信じろよな。いってら」

紅莉栖「いってこい、バカ岡部」

こうして俺は、決戦の前日へとタイムリープした。

172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:34:26.71 ID:AxZGJovC0
岡部(タイムリープ完了。すぐに行動を開始せねば)

岡部「ダルよ、閃光手榴弾のたぐいは作れるか?」

ダル「ひと狩りいくんですね分かります」

岡部「俺はまじめな話をしているんだ」

ダル「僕の専門はハードよりソフトなんだけど。まぁそれぐらい作れますけどね」

岡部「さすがスーパーハカー!」

ダル「ハカーじゃなくてハッカーだろ常考。てかハッカー関係ねーよ」

岡部「明日の昼頃までに頼む!」

ダル「ちょ、オカリンそれ無茶ぶりすぎ」

岡部「フェイリスと一日デートさせてやる」

ダル「! でもさすがに明日の昼までってのは……せめて明後日」

岡部「ドラゴンキッドの直筆サインもつけよう」

ダル「任せろ」

174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:40:53.21 ID:AxZGJovC0
岡部(次は萌郁だ。NEXTの戦いに割り込めるのは同じNEXTのみ。俺もNEXTだが、戦闘力皆無だしな……)

岡部「萌郁にはメールを送ろう。今ラボに来れるか?……っと」

岡部「お、もう返信が……さすが閃光の指圧師」

frm:閃光の指圧師
sub:オッケー
――――――――
近くにいたから、す
ぐにつくよー!
それにしても岡部君
に呼び出されるなん
て、ちょっとドキド
キしちゃうよ(*^_^*)
岡部「何か勘違いしてそうだが……まぁよし!」

176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:45:34.57 ID:AxZGJovC0
ラボの扉をノックする音が聞こえる。

岡部「どうぞ」

萌郁「何か、用……?」

岡部「よく来てくれた萌郁よ」

俺はそう言って萌郁に近づき、彼女の両肩に手を載せた。

萌郁「……っ!」

岡部「す、すまん。嫌だったか?」

萌郁はぶんぶんと首を横に振った。

岡部「ならばいいのだが。コホン……本題に入るぞ萌郁よ。お前のNEXT能力を生かして、やってほしいことがあるのだ」

萌郁「何?」

俺は今回の作戦を萌郁に話した。

岡部「どうだ、やってくれないか?」

萌郁「…………」

岡部(こ、これはだめか……?)

萌郁「分かった。岡部君が、そういうのなら……がんばる」

177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:49:34.76 ID:AxZGJovC0
岡部「ありがとう、萌郁。女にこんな危険な事はやらせたくないのだが……俺は弱いし、他に頼める奴もいなくてな」

萌郁はふるふると首を横に振った。どういうことだ?

萌郁「岡部君は、弱くない」

萌郁「NEXTっていう理由で、いじめられて……死のうとした私を、助けてくれた」

岡部(この世界線での俺についてはタイムリープ前に紅莉栖たちからある程度聞いている)

岡部(俺は萌郁の自殺現場に偶然居合わせて、それを阻止してラボに誘ったらしい)

萌郁「誰かを助けられる人って、とっても……強いと、思うわ」

萌郁「だから、私も誰かを助けたい……そう、思うの」

179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:54:57.65 ID:AxZGJovC0
岡部「後は紅莉栖に注意をしておけばオーケーだな」

紅莉栖「誰に注意するって?」

岡部「どわぁっ! 居たのか紅莉栖」

紅莉栖「ラボでイチャイチャするなとは言わないけれど、ほどほどにしなさい」

岡部「べ、別に俺はイチャイチャなど……なぁ、萌郁?」

萌郁「…………」

萌郁は顔を真赤にして俯いていた。

岡部(おいおい、そんな顔を見せられたら……こっちまで顔が赤くなってくるではないか)

181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 21:59:09.37 ID:AxZGJovC0
岡部「と、とにかく紅莉栖よ」

紅莉栖「なによ?」

岡部「ジェイク・マルチネスの能力に予測がついたり、あるいは分かったとしても……それを口に出してはいけない。決してだ」

紅莉栖「ジェイク・マルチネス? この街に収監されてる犯罪者よね。わけがわからないんだけど」

岡部「明日になれば分かる。俺を信じてくれないか」

紅莉栖「なっ……いきなり真面目な顔しないでよ」

岡部「紅莉栖、頼む」

紅莉栖「わ、分かったわよ。でもこんな意味不明なこと……あ、明日までしか覚えておかないからね!」

183: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:05:01.82 ID:AxZGJovC0
そして決戦日。
萌郁が最初からラボにいること以外は、前回とほとんど変わらずに進んでいった。
スカイハイと牛角さんが破れ、虎鉄さんの番。俺は何かあった時のために紅莉栖、萌郁、ダルの3人に小型の通信機を渡しておいた。

岡部『準備はできてるか、萌郁』

萌郁『うん……大丈夫』

岡部『よし、追って指示をする』

岡部『ダル、万が一萌郁が、閃光弾の使用方法を忘れたら教えてやってくれ』

ダル『ピン抜いて投げるだけですけどね。ま、把握したぜい』

185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:12:18.76 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「ジェイク……俺はお前が倒す。ワイルドに吠えるぜ!」

クリーム『おっとワイルドタイガー、いきなり能力発動です!』

ジェイク「そう来なくっちゃな。せいぜい楽しませてくれよ?」

クリーム『ワイルドタイガー、目にも留まらぬスピードでジェイク様に向かって走る! そしてそのままタックル!』

ジェイク「見えてるんだよ」

クリーム『しかしジェイク様これをあっさりかわした!』

ワイルドタイガー「マジかよ!?」

クリーム『再びジェイク様に近づき何度も拳を繰り出すワイルドタイガー……しかぁし、そのいずれも当たらない!』

186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:14:58.18 ID:AxZGJovC0
紅莉栖『アンタが昨日言ってたのはこれね? あの攻撃を回避するだなんて、まさかジェイクの能力は……」

岡部『そうだ、ジェイクのニつ目の能力は……相手の思考を読み取ること』

岡部『そしてこの能力を知っていたとしても、奴を倒せるわけじゃない。下手したら不利になりかねないんだ』

紅莉栖『なるほどね』

岡部『そこで紅莉栖に頼みがある。今から俺が言ったことを口に出してくれないか……驚いたような感じで』

紅莉栖『え……それ言ったら、他の人が能力に気づいちゃう可能性があるわよ?』

岡部『大丈夫だ、俺がフォローする。頼むぞ』

紅莉栖『……分かったわ』

188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:19:26.10 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「あ、あんな常識を超えたスピードの攻撃、かわせる訳がない! 来ることが分かってたりしない限りは!」

岡部(オーバーリアクションすぎるぞ紅莉栖!)

ブルーローズ「た、確かに……」

バーナビー「ま、まさか、奴の能力は……」

岡部(やっぱそうでもないかも、紅莉栖GJ!)

岡部「そう、ジェイクの能力は……相手の身体の筋肉などの音を聞きとって、相手の行動を予測する」

岡部「超聴覚だ!」

190: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:22:39.25 ID:AxZGJovC0
バーナビー「…………」

ブルーローズ「…………」

ファイヤーエンブレム「…………」

ドラゴンキッド「…………」

ダル「…………」

まゆり「オカリンすごーい!」

岡部(あ、あれ? 反応悪いな……)

岡部『紅莉栖、フォローしてくれ!』

紅莉栖「……な、なんだってー!」

岡部(だ、だめだこの助手。早く何とかしないと……)

191: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:26:42.86 ID:AxZGJovC0
バーナビー「ギャグで言ってるんですか?」

紅莉栖「いいえ、私も岡部の意見に同意するわ」

紅莉栖「生物は生きている限り、絶え間なく身体のどこかが動いてる」

紅莉栖「そして動きがあるっていうことは、その部位は音を鳴らしているの。私たちの耳じゃとても聞き取れないものもあるけれど」

その後も紅莉栖先生による講義が2分ほど続いた。

ブルーローズ「ふーん……すごいわねぇ」

ドラゴンキッド「拳法の達人なら、そういうこと出来る人いそうだなぁ」

バーナビー「さすがは天才少女、牧瀬紅莉栖と言ったところでしょうか」

ファイヤーエンブレム「えぇ、若干18歳にしてサイエンス誌に論文が載っただけのことはあるわ」

岡部(さすが俺の助手だな、うむ)

紅莉栖『大きな貸し一つね』

岡部『い、いいだろう。この戦いが終わった後、何でもしてやろうではないか』

193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:33:05.61 ID:AxZGJovC0
岡部「そしてこんな事もあろうかと、我々は音爆弾を用意してあるのですよ!」

岡部「こいつを使えばとんでもない破裂音が鳴り響き、一時的に奴の聴覚を封じることができます」

ブルーローズ「いくら何でも準備良すぎじゃない?」

岡部「フッ。なぜなら俺は未来すら支配する狂気のマッドサイエンティスト……」

岡部「鳳・凰・院――凶真だからだっ!」

ファイヤーエンブレム「何の説明にもなってないわね」

バーナビー「しかし、その話に乗らない手はないでしょう。その爆弾はどこに?」

岡部「既に我がラボメンが戦場の近くで待機しています」

ブルーローズ「え、一般人がそんなところに?」

岡部「ご心配にはおよびません、クイーン。彼女もまたNEXT……しかも、非常に高い戦闘能力を持っています」

ブルーローズ「クイーンって誰よ……」

197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:37:56.11 ID:AxZGJovC0
岡部「萌郁、聞こえるか?」

萌郁『うん……聞こえるわ、岡部君』

岡部「ワイルドタイガーがジェイクをそっちに誘導してるから、閃光弾を使えそうだと判断したら……頼むぞ」

萌郁『えぇ、私……がんばるから。見ててね、岡部君』

岡部「あぁ。ちゃんと見てるよ」

紅莉栖(いらいら)

まゆり「紅莉栖ちゃん、ヤキモチかな?」

紅莉栖「ち、違うわよ! 変なこと言わないでちょうだい、まゆり」

200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:45:49.80 ID:AxZGJovC0
岡部(さて、後は仕上げだ……世界線が変わる前に教えてもらった斎藤さんの電話番号)

岡部(この世界線でかけるのはこれで二回目。一回目は昨日……明日何が起きるかを話した)

岡部(そしてそれが実際に起きてるわけだが……果たして俺を信用してもらえるだろうか?)

岡部「どうも、岡部です」

斎藤『まさか本当にテロが起きるだなんてな……』

斎藤『君は未来から来たのか、あるいはテロリストなのか……まぁそれは分かっている、前者に違いない』

斎藤『テロリストがテロリストに身柄確保されかけるなんてありえない』

岡部「信じてもらえて助かります。例の件、お願いできますか?」

斎藤『分かってる。女性がジェイクに近づいたら、タイガーの視界を偏光モードにすればいいんだろう?』

岡部「はい、お願いします」

202: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 22:53:41.20 ID:AxZGJovC0
ワイルドタイガー「だーっ、何てやつだよ!」

ワイルドタイガー(ここまでおびき寄せれば、音爆弾が飛んでくるはずだ!)

ワイルドタイガー(誰かが飛び出してきたらすぐにスーツの聴覚をカットしねーとな)

ジェイク(バカが、俺の能力は超聴覚なんかじゃねぇよ……作戦失敗してアタフタしてる所を仕留めてやるさ)

萌郁(……今!)

萌郁が物陰から飛び出して、閃光手榴弾のピンを抜き……ジェイク目掛けて放り投げた。

斎藤「ワイルドタイガーの視界を偏光モードに。これで閃光手榴弾の被害はほとんど受けない」

ワイルドタイガー(スーツの聴覚をカット……!)

ジェイク(さァて……どんな反応を見せるんだよ、ワイルドタイガー?)

205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:00:35.70 ID:AxZGJovC0
閃光手榴弾が地面につき、まばゆい光を放つ。

ジェイク(な――!? クソッ、前が見えねえ……!)

ジェイク(相手の心を……って精神を集中できなきゃつかえねーっての!)

ワイルドタイガー「へ? どういうこと? 眼の前がほぼ真っ暗に!」

バーナビー『オジサン、ボサッとしてないでジェイクを倒して! 今しかチャンスはありません!』

ワイルドタイガー「お、視界が戻った。よく分かんねぇが任せろ! いくぜ、ジェイク!」

ワイルドタイガーは飛び上がり、ジェイク目掛けて右の拳を突き出す。

『Good-Luck Mode』

突き出した拳が巨大化し、ジェイクの身体を押しつぶした。

206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:03:26.76 ID:AxZGJovC0
クリーム「よくもジェイク様を! 許しま――」

能力を使ってマッドベアを操り、パワードスーツを起動させようとしたクリーム。
だがそれはあっさりと阻止された……青色に輝く右手によって。

萌郁「……あなた達の、負けよ」

岡部『ナイスだ萌郁、お疲れ様』

萌郁「久しぶりに能力使ったら……ちょっと、疲れた」

岡部『あぁ……ゆっくり休んでくれよ』

209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:08:39.83 ID:AxZGJovC0
岡部「勝った……」

ダル「徹夜でアレ作ったから、すっげー疲れたお。なんだか一気に眠気が……」

バーナビー「え、あれあなたが作ったんですか? 個人が勝手に兵器を作るのはですね……」

ブルーローズ「今回ぐらい見逃してあげたら? あれがなかったら勝てなかったんだし」

バーナビー「……今回だけですよ」

ドラゴンキッド「うーん、ボク何もやってないなぁ……」

ファイヤーエンブレム「アタシもよぉ」

まゆり「そんなことないとまゆしぃは思うのです。ヒーロー全員が一生懸命街を守ってた姿は、みんなテレビで見てるもん」

まゆり「だからきっと、みんなヒーロー全員に感謝してるよ」

ドラゴンキッド「ありがとう、まゆり」

ファイヤーエンブレム「本当にこの子いいわねぇ。ハグしたくなっちゃうわぁ」

ブルーローズ「自重しなさい」

211: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:17:17.00 ID:AxZGJovC0
岡部「タイガー!」

バーナビー「虎鉄さん!」

ワイルドタイガー「お、みんな来たか……いやー、なんかあっさり倒せちまった」

ワイルドタイガー「いったいどれだけ綿密な作戦立てたんだよお前ら。俺がやったことといえば、最後に殴ったぐらいのもんだぜ」

ファイヤーエンブレム「この岡部って子が9割仕組んだのよ。恐ろしいわぁ」

ワイルドタイガー「へぇ、岡部……岡部?」

岡部「虎鉄さん?」

ワイルドタイガー「ちょ、何で俺の名前を……ってああ、こいつ前バーナビーの代理やってくれたからその時に……」

ワイルドタイガー「そうそう。そんでその後紅莉栖に頼まれて折紙が……ん? 折紙って誰だ?」

岡部(折紙!?)

バーナビー「というか僕の代理は、メガネかけた冴えない感じの人って言ってたじゃないですか」

ワイルドタイガー「あれ、そうだっけ? 何だか記憶が曖昧だな……まぁいいか」

岡部「そうですね」

岡部(そうだ。たとえ心の奥底にでも、あの記憶を持っていてくれるなら……)

岡部(だが折紙サイクロンは、どうなってしまったんだろう)

213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:23:57.65 ID:AxZGJovC0
10カ月後――

マリオ(リポーター)『さきほど市内で銀行強盗事件が発生! さぁ一番乗りのヒーローは誰だ?』

ファイヤーエンブレム『逃さないわよぉ! ファーイヤァアアアッ!』

マリオ『おっと一番乗りはブルジョワ直火焼ファイヤーエンブレム! 愛車に乗って華麗に参上! しかしお得意の炎は避けられてしまう!』

萌郁『チャンス』

マリオ『二番手は閃光の指圧師、シャイニングフィンガー! 輝く右手で犯人の一人を確保だ!』

ファイヤーエンブレム『最近の新人は油断できないわねぇ』

マリオ『なおこの番組は、みなさんご存知超能力を持つヒーローたちが、犯罪や災害など実際の現場で活躍する模様を、生放送でをお茶の間にお届け!』

アナウンサー「活躍の内容に見合ったポイントを加算し、キング・オブ・ヒーローを決めてしまおうというエンターテイメントレスキュー番組……ヒーローTV LIVE!」

215: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:29:54.76 ID:AxZGJovC0
まゆり「おぉ、萌郁さんすごいねぇ」

ダル「てかあのコスエロすぎだろやっぱ。ブルーローズといい勝負じゃね?」

紅莉栖「これだからHENTAIは……」

フェイリス「おまたせしましたニャン、カレーライスとコーヒーニャン♪」

ダル「ありがとうございますフェイリスたん」

フェイリス「ダルニャン、最近ドラゴンキッドに浮気してるって凶真に聞いたニャン……フェイリスは悲しいのニャン」

ダル「ちょ、そんなことないです。僕はフェイリスたんラブです!」

フェイリス「本当かニャン? フェイリスの目を見て……あーっ、ウソついてるニャン!」

岡部「フェイリスのNEXT能力……チェシャ猫の微笑(チェシャー・ブレイク)の前ではどんなウソも暴かれてしまうな。フゥーハハハ!」

ダル「ま、待ってフェイリスたーん! てかオカリン、勝手に何言ってるんだよフェイリスたんに!」

岡部「事実を言ったまでだ。三次嫁は一人に絞れよダル?」

まゆり「フェイリスちゃんはー、ネクストじゃないよ?」

岡部「その場のノリだ、気にするなまゆり」

216: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:35:42.13 ID:AxZGJovC0
とある日。

岡部(何度か折紙サイクロンについて虎鉄さんに聞いたけど、名前以外は思い出せないみたいだった)

岡部(なんとなくだが、α世界線で紅莉栖が取った作戦と何か関係があるのではないかと思っている)

岡部(今の紅莉栖が思い出しでもしない限り、一生分からないんだよな……何だか、はがゆい)

岡部「いてっ!」

イワン「あ、すみません」

岡部「いや、こっちこそすまない……考え事をしていた。怪我はないか?」

イワン「大丈夫ですよ。それじゃ」

岡部「あ、あぁ……」

岡部(どこかで聞いたような声だが、思い出せない)

岡部(…………)

岡部(あ……折紙サイクロンだ、間違いない!)

岡部(ヒーローとしての折紙サイクロンはいなくなったが、中の人は生きてたんだな……よかった)

おわり

220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:39:24.35 ID:AxZGJovC0
α世界線・紅莉栖編(>>85から)

数時間後――

岡部「どれもこれもダメか」

紅莉栖「少し息をついたほうがいいかもね」

岡部「そうだった、すまんな紅莉栖」

紅莉栖「べ、別にアンタのためじゃないんだからなっ!」

岡部「少し外の空気を吸ってくる」

紅莉栖「いってらー」

紅莉栖(戦闘力のあるヒーロー……というと)

紅莉栖(ワイルドタイガー、バーナビー、ブルーローズ、ドラゴンキッド……スカイハイにファイヤーエンブレム)

紅莉栖(あ、あと牛角さん(笑)よね)

紅莉栖(さっきからこの7人の能力とかを使って何とかならないか考えているんだけど……なかなか思いつかない)

まゆり「トゥットゥルー☆ ただいまー」

紅莉栖「おかえり、まゆり」

まゆり「テレビだれも見てないなら、まゆしぃが好きな番組を……あ、HERO TVやってるね」

221: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:40:32.43 ID:AxZGJovC0
バーナビー『ハァアアアアアッ!』

マリオ(リポーター)『おぉっとここでバーナビーのキックが炸裂だぁ!』

紅莉栖(バーナビーってすごいわよね、やっぱり)

マリオ『おぉっと、今日も折紙サイクロンが画面端で見切れています!』

まゆり「折紙サイクロンかわいいよねぇ。この見切れは職人芸だよぉ」

紅莉栖「いや、ヒーローなんだし戦いなさいよ……」

紅莉栖(戦闘力のなさそうな折紙サイクロンは、岡部との話し合いで除外してたわね)

紅莉栖(あれ、折紙サイクロンのNEXT能力が思い出せない)

紅莉栖「ねぇまゆり、折紙サイクロンの能力ってなんだったしら?」

まゆり「えー、紅莉栖ちゃん知らないの? 折紙サイクロンの能力は擬態だよぉ」

223: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:42:49.08 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「擬態?」

まゆり「いろんなものに変身できちゃうんだよ。すごいでしょー」

紅莉栖(いろんなものに変身……)

紅莉栖(…………)

紅莉栖「それだわ!」

まゆり「うわぁ! まゆしぃはビックリしちゃったのです」

紅莉栖「ご、ごめんねまゆり。ちょっと出かけてくるわ」

まゆり「? いってらっしゃーい」

224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:45:45.28 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「岡部に電話しましょう……」

岡部『どうした紅莉栖?』

紅莉栖「ちょっと聞きたいんだけど、岡部ってヒーローの電話番号持ってるわよね?」

岡部『あぁ、ワイルドタイガーのならな』

紅莉栖「教えて」

岡部『……何に使うつもりだ?』

紅莉栖「まゆりを救うためよ」

岡部『俺が電話をかければいのではないのか? 今どこにいる?』

紅莉栖「わ、私じゃなきゃダメなのよ。岡部の脳みそじゃ多分ついていけない」

岡部『…………』

岡部『お前がそこまで言うのだ。何か理由があるんだろう……分かった、教えよう』

紅莉栖「サンクス岡部」

228: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:49:46.90 ID:AxZGJovC0
紅莉栖「さて、電話をしましょう……本名は鏑木・T・虎徹さんだったわね」

虎徹『えーっと、どちらさん?』

紅莉栖「あ、初めまして。岡部倫太郎の知り合いの牧瀬紅莉栖と申します」

虎徹『ちょ、岡部の奴……勝手に人の電話番号教えるとはなぁ』

紅莉栖「ごめんなさい、私がせがんだんです。どうしてもヒーローの力が必要で……」

虎徹『やれやれ、そう言われたら仕方ねぇな。俺で良ければ力を貸すぜ』

紅莉栖「今、お時間はありますか?」

虎徹『あぁ、大丈夫だ。ま、事件が起きたら話は別だがな』

紅莉栖「ありがとうございます。できたら人が少ない場所でお話を……」

虎徹『んじゃ俺の家にでも来るか?』

紅莉栖「分かりました。あと折紙サイクロンも呼んで頂けませんしょうか?」

虎徹『折紙? それは本人に聞かねーと分からねぇが。あ、折紙発見……ちょっと待ってろ』

紅莉栖「はい、お願いします」

229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:52:34.61 ID:AxZGJovC0
虎徹「折紙!」

イワン「タイガーさん、どうしました?」

虎徹「これから何か予定あるか?」

イワン「いえ、特には」

虎徹「そうか。じゃあ俺の家に来てくれねーかな?」

イワン「え?」

虎徹「岡部倫太郎、覚えてるか?」

イワン「バーナビーの代役をしてた人でしたっけ?」

虎徹「そうだ。そいつの知り合いがどーしてもお前と話がしたいっていうんだよ」

イワン「はぁ……分かりました」

232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/12(土) 23:57:22.96 ID:AxZGJovC0
虎徹『またせたな。オッケーだとよ』

紅莉栖「本当ですか、ありがとうございます!」

虎徹『家の住所教えてなかったな。住所は……』

紅莉栖「分かりました、すぐに向かいます」

虎徹『おう、んじゃ切るぜ』

紅莉栖(よし、第一関門はクリア……ここからが正念場ね)

235: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:01:18.89 ID:zC8m7uy60
虎徹の家――

紅莉栖「お邪魔します」

虎徹「おう、来たか……ってこりゃずいぶんときれいな嬢ちゃんだな。岡部も隅に置けねぇ」

紅莉栖「そ、そういう関係じゃありリません!」

虎徹「そうなのか? 悪い悪い」

イワン「あなたが牧瀬さんですか。初めまして、折紙サイクロンです」

紅莉栖「はじめまして、牧瀬紅莉栖です」

イワン「よろしくお願いします。それで、僕にお話ししたいことって何ですか?」

紅莉栖「これから私がする話は、とても非現実的で信じがたいことかもしれません」

紅莉栖「ですがこれは――」

虎徹「長い前置きはいいって。ウソかホントかは聞いてから決めるさ」

紅莉栖「分かりました」

239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:05:01.56 ID:zC8m7uy60
虎徹「何ぃ!? ウロボロスの連中が!?」

イワン「この街が、そんなことに……」

紅莉栖「…………」

虎徹「俺は信じる。なぜなら嬢ちゃんがウロボロスのことを知っているからだ」

虎徹「あの組織は一般人が知っているようなものじゃない」

虎徹「岡部に最初にあった時に言っていた”機関”ってのは、ウロボロスのことだったんだな」

紅莉栖(それは多分違うと思う……)

イワン「僕も、信じますよ」

紅莉栖「ありがとうございます。そして折紙サイクロンにお願いが……」

イワン「なんでしょうか?」

紅莉栖「まゆりのために、そしてこの世界の未来のために……命を捧げては頂けませんでしょうか」

242: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:10:49.58 ID:zC8m7uy60
イワン「え、えぇえええええええっ!?」

虎徹「一体どこをどうしたらそんな話になるんだよ!」

紅莉栖「折紙サイクロンの能力は遺伝子レベルで対象をコピーするんですよね」

紅莉栖「この世界線では明日まゆりが必ず死ぬ。ならば、まゆりに化けた……いいえ、もう一人のまゆりである折紙サイクロンが死ぬとなると……」

紅莉栖「次の日まで本物のまゆりが生きていれば、大きな矛盾が発生することになります。これは、世界線が大きな変動を起こす可能性が十分にある」

虎徹「よく分からねぇが、誰かを助ける為に別の誰かを犠牲にするってのは……気に食わねぇな」

イワン「僕が化けたまゆりさんが死んで、さらに本物のまゆりさんも死ぬ可能性もありますよね?」

紅莉栖「えぇ。やってみないと分かりません。失敗したら、タイムリープすることになります」

虎徹「けどよ、そのタイムリープってのは必ず成功するとは限らねーんだろ?」

紅莉栖「そう、その通りです。岡部を除いて誰もやったことがないもの、過去に戻るなんて……」

247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:14:51.46 ID:zC8m7uy60
イワン「でもこのままじゃ、世界はいずれ恐ろしいことになるんですよね」

虎徹「SERNによるディストピア……だっけか。ウロボロスなんて組織を抱えているんだ。相当ヤバいだろうな」

虎徹「でも他に方法があるんじゃねぇのか?」

紅莉栖「確かにあるかもしれない。でも今の私が思いついたのはこれだけ……他に思いついたことは岡部が既に試していました」

イワン「僕、やります」

虎鉄「折紙!?」

248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:18:14.77 ID:zC8m7uy60
イワン「僕は……誰かを守るためにヒーローになったんです」

イワン「もちろん死にたくなんてないけど……」

イワン「僕の命で誰かを救えるのなら、救ってあげたい」

イワン「それに……ここで逃げたりしたら、エドワードに笑われちゃいますしね」

虎鉄「折紙……」

紅莉栖「折紙さん……」

虎鉄「お前がそう言うなら、俺は全力でお前をサポートするさ」

250: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:22:10.04 ID:zC8m7uy60
紅莉栖「まず、擬態能力でまゆりに化けていただけますか?」

イワン「あ、それはできないですね。僕の能力を使うには、擬態したい相手の身体に触れないといけないんです」

紅莉栖「うーん、まゆりをここに呼ぶしかないわね。そもそも、明日一日どこか安全な場所に匿わないといけないから丁度いいか」

イワン「話し方とかもコピーできるわけじゃないので、ご本人を間近で見て覚えないと」

紅莉栖「分かった。まゆりに連絡してくるわ……」

紅莉栖「まゆり、今ちょっといいかしら?」

まゆり『なぁに紅莉栖ちゃん? まゆしぃはコミマのコス作りで手が離せないのです』

紅莉栖「そう、でもどうしても話したいことがあるの。コス作る道具とか持ってきていいから、今からいう所に来れないかな?」

まゆり『うーん、紅莉栖ちゃんがそこまで言うなら。でもちょっと遠いね……』

253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:26:29.21 ID:zC8m7uy60
紅莉栖「確かに……結構遠いのよね、ここ」

虎鉄「俺が車を出すぞ」

紅莉栖「そう? 助かるわ」

紅莉栖「こっちで車をだすから、まゆりはラボの近くの……そうね、柳林神社あたりでいいかしら?」

まゆり『それならラボでもいいんじゃないかなぁって思うのです』

紅莉栖(この作戦は絶対に岡部に知られるわけにはいかないのよね)

紅莉栖「ジューシー唐揚げ10袋とバナナ10房で手を打ってくれないかしら」

まゆり『おっけーなのです☆』

255: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:31:24.16 ID:zC8m7uy60
虎鉄「んじゃ行くぞ、しっかり捕まってろよ」

イワン「うわぁ!」

紅莉栖「ちょ……スピードだしすぎ!」

虎鉄「時間が惜しいんだろ、慢しろ!」

紅莉栖「タイーホされたら元も子もないでしょーが!」

イワン「タイーホ? まさか、@ちゃ……」

紅莉栖「な、何を言ってるのかしら折紙サイクロンは!」

虎鉄「?」

イワン(天才少女がまさかの@ちゃんねらー……何か親近感湧いたぞ!)

258: ×慢しろ ◯我慢しろ 2011/11/13(日) 00:36:00.80 ID:zC8m7uy60

柳林神社――

紅莉栖「おまたせ、まゆり」

まゆり「あ、紅莉栖。トゥットゥルー♪」

虎鉄「嬢ちゃんがまゆりか。俺は鏑木・T・虎鉄……よろしく」

イワン「僕はイワン・カレリンです。よろしくお願いします」

まゆり「紅莉栖ちゃんのお友達かなぁ。椎名まゆりです、トゥットゥルー♪」

虎鉄「クックルドゥドゥドゥ?」

紅莉栖「あのAA可愛いわよね」

イワン「!」

虎鉄「えーえーってなんだ?」

紅莉栖「な、なんでもないっ!」

虎鉄「んじゃ、まゆりは後部座席に座ってもらえるか?」

まゆり「わかったのです」

261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:40:32.01 ID:zC8m7uy60
虎鉄の家――

まゆり「お邪魔しまーす♪」

虎鉄「あんまり綺麗じゃないけど、勘弁な」

紅莉栖「ま、一人暮らししてるとどうしてもこうなるわよね」

まゆり「紅莉栖ちゃんもこっちでは一人暮らしだよね?」

紅莉栖「私はホテルだから掃除の必要はないわ」

虎鉄「ホテルとかセレブだな……」

紅莉栖「別に、安いホテルよ。まぁそれはどうでもいいわ……今からまゆりに大切な話があるの。落ち着いて聞いてね?」

まゆり「? うん、わかったよ」

私は全てをまゆりに話した。

262: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:44:55.64 ID:zC8m7uy60
まゆり「そう、だったんだ。オカリンや紅莉栖ちゃんの様子が何かヘンだと思ってたんだけど……そんなことが」

紅莉栖「隠していてごめんなさい」

まゆり「隠し事はきらいだけど……まゆしぃのことを思ってそうしたんだよね。だったら……怒ったりなんて、できないかな」

まゆり「イワンくん、まゆしぃに出来ることがあったら何でも言ってね」

イワン「椎名さん、ありがとう」

まゆり「あー、ダメだよ。年近いんだし……名前で呼んで欲しいなぁ」

イワン「え、えーっと……ま、まゆりさん?」

まゆり「なぁに、イワンくん」

虎鉄(折紙って19か20だよな。年下相手にたじたじじゃねーか)

紅莉栖(ていうか私とあった時は本名教えてくれなかったわよね。なんでかしら……)

263: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:47:58.05 ID:zC8m7uy60
虎鉄「なぁ紅莉栖、倫太郎に電話しておいた方がいいんじゃないのか?」

紅莉栖「そうね……作戦が思いついたってことぐらい言っておいたほうがいいかも」

紅莉栖「あ、まゆりの声が聞こえるとまずいわね……まゆり、悪いんだけどイワンと別の部屋に行っててもらえない?」

まゆり「了解なのです♪」

イワン「え、ふたりきりですか?」

虎鉄「恥ずかしがるなよ。大丈夫、お前ならできる!」

イワン「何に対して言ってるんですか……」
264: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:50:35.62 ID:zC8m7uy60
虎鉄「んじゃ、今度は俺が電話かけてやりますか……よう岡部。話は全部紅莉栖から聞いたぜ」

岡部『なっ、ななななななっ!?』

虎鉄「落ち着けよ。とりあえず深呼吸してみろ」

岡部『すーっ、はーっ……全部、とはいったい?』

虎鉄「明日の襲撃とか、まゆりって嬢ちゃんが死ぬこととかだな」

岡部『そう、ですか』

虎鉄(あまり驚かねーのな)

虎鉄「そんでもって紅莉栖に聞いたぜ、嬢ちゃんを救う方法」

岡部『はいいいいい? 俺は知りませんよその話』

虎鉄「いやぁ、この作戦はお前に知られたら失敗するんだとよ」

岡部『……それを教えていいんですか?』

267: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:54:18.03 ID:zC8m7uy60
虎鉄「あぁ。作戦があるってことは知ってもらっておいた方がいいらしい。あ、紅莉栖に代わるぜ」

紅莉栖「分かった岡部? 私がまゆりを救う作戦を考えてあげたから」

岡部『おい紅莉栖!』

紅莉栖「何?」

岡部『えっと、その、だな……あり、がとう』

紅莉栖「ッ!?」

紅莉栖「べ、別に岡部のためじゃ……」

岡部『ありがとう』

紅莉栖「もう……バカッ!」

虎鉄「顔真っ赤だぞ紅莉栖」

紅莉栖(うるさいわね……分かってるわよそんなこと!)

268: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 00:57:59.81 ID:zC8m7uy60
岡部『それで、その作戦……自信はあるか?』

紅莉栖「あるって言いたいけれど、正直何が起こるか分からないわね」

紅莉栖「タイムリープマシンが完成したら、いつでもタイムリープできるようにしておいて」

岡部『分かった。おっと聞き忘れていた……俺は何かやることがあるのか?』

紅莉栖「何もな……あ、違うな。一日中ラボに居るようにして」

紅莉栖「あとタイムリープマシン実験は中止、打ち上げ会は実施で」

岡部『それだけか?』

紅莉栖「それだけよ」

岡部『了解した』

270: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:00:26.52 ID:zC8m7uy60
紅莉栖「はぁ……もう、岡部ってばいきなりあんなこと言うんだから……」

虎鉄「面白いぐらいに真っ赤になってるぞ、紅莉栖」

紅莉栖「虎鉄さんってデリカシーないですね……若い女性の扱いが下手」

虎鉄「ガーン! や、やっぱりそうなのか?」

紅莉栖「そうなのかって……何かあったんですか」

虎鉄「娘に嫌われてるんだよ。楓ぇ……」

紅莉栖「そうだったんだ、うかつな発言だったわ。ごめんなさい」

虎鉄「気にすんな……あ、まゆりに折紙。もうこっちの部屋来ていいぞ」

まゆり「はーい」

273: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:05:57.71 ID:zC8m7uy60
虎鉄「なんかものすごいぐったりしてるんだが……大丈夫か、折紙?」

折紙「そ、その……まゆりさんが僕の身体をぺたぺた触ってきて……」

紅莉栖「ちょ、なにやってるのよまゆり」

まゆり「だってね、まゆしぃがまゆしぃの目の前にいるって……とっても不思議なんだよ?」

紅莉栖「あぁ、まゆりに擬態した状態ね……それなら許す」

虎鉄「お前そっちのケでもあんのか?」

紅莉栖「あるあ……ねーよ」

虎鉄「んじゃ、実際に擬態してみてくれ折紙」

イワン「は、はい……えいっ!」

ぼわん!

まゆり(イワン)「こ、こんな感じです」

虎鉄「おぉっ!」

紅莉栖「分かってはいたけど、本当にまゆりそっくり……いいえ、まゆりそのものだわ」

紅莉栖「服装までコピーしてるし……」

まゆり(イワン)「あ、あの……あんまり見ないでいただけると、助かります」

275: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:11:56.11 ID:zC8m7uy60
虎鉄「少しは自重しようぜ紅莉栖……」

紅莉栖「べ、別に私はそんなつもりじゃ」

紅莉栖(やばいわね。これは漆原さんに通ずるものがある!)

紅莉栖「コホン……気を撮り直して、まずやるべきこと。それはまゆりの口調をマネすることね」

まゆり「挨拶はトゥットゥルー、だよ。トゥットゥルー♪ まゆしぃです☆」

まゆり(イワン)「とぅ……トゥットゥルー。まゆ、まゆしぃです!」

虎鉄「ガチガチに固まってるな……もう一回だ」

まゆり(イワン)「トゥットゥルー……。ま、まゆしぃです……」

紅莉栖「今度はテンションが低すぎ。もう少し元気にお願い」

まゆり(イワン)「トゥットゥルー! まゆしぃです!」

まゆり「それじゃ怒ってるみたいだよぉ……」

まゆり(イワン)「む、難しいですね」

まゆり「今の台詞なら、うぅ……まゆしぃには難しいのです……っていう感じかな」

277: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:17:13.70 ID:zC8m7uy60
数時間後――

まゆり(イワン)「トゥットゥルー♪ まゆしぃです☆」

虎鉄「だいぶ良い感じになってきたな!」

まゆり(イワン)「そう、かなぁ? だったらまゆしぃは嬉しいのです☆」

まゆり「イワンく……じゃなくて、まゆしぃは演技が上手だねぇ」

まゆり(イワン)「えへへぇ、そんなに褒めても何も出ないよ?」

紅莉栖「ま、まゆりが二人……ダブルまゆり!」

虎鉄「おいしっかりしろ紅莉栖」

紅莉栖「ってもうこんな時間……私はタイムリープマシンの開発に戻るわ」

虎鉄「おっと、明日完成しなかったりしたら色々とヤバイな。送ってくぜ」

紅莉栖「助かるわ。それじゃ、ふたりとも……やるべきこと書いた紙を見ながら、ちゃんと練習しててね?」

まゆり(イワン)「オッケーだよ、紅莉栖ちゃん」

まゆり「紅莉栖ちゃん、わかったよぉ」

279: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:21:44.04 ID:zC8m7uy60
まゆり「それじゃ、次は仲の良い人の写真を見ながら練習だね」

まゆり「紅莉栖ちゃんが貸してくれた超高性能なボイスチェンジャーを使って、オカリンのマネをするね」

まゆり(イワン)「うん、分かったよ」

まゆり「おはよう、まゆり」

まゆり(イワン)「トゥットゥルー。おはよう、オカリン♪」

まゆり「今日もジューシー唐揚げか……あんまり食べ過ぎると太るぞ?」

まゆり(イワン)「オカリン、女の子はデリケートなんだから……そういうこと言っちゃダメなんだよ」

まゆり「ふぅーはははっ! まゆりもそういうお年ごろだったな。すまんすまん」

まゆり(イワン)「うーん、なんだかバカにされてる気がするよぉ」

まゆり「うん、良い感じだねぇ。この調子でがんばろー!」

まゆり(イワン)「おー!」

282: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:28:55.88 ID:zC8m7uy60
数時間後――

虎鉄「んじゃー、そろそろ飯にするか。今日は俺が作ってやったぜ」

まゆり「わーい、ごはんごはん♪」

まゆり(イワン)「虎さんは何を作ったの?」

虎鉄「決まってる、チャーハンだ! 特別にジューシー唐揚げ入りな」

まゆり「やった、ジューシー唐揚げだよぉ」

まゆり(イワン)「しかもこんなにたっくさん!」

虎鉄「紅莉栖に買っておいてくれって頼まれてな。それじゃ、食うか」

「いただきまーす」

まゆり(イワン)「おいしーい!」

まゆり「これなら何杯でもいけるねぇ」

虎鉄「たっぷり作ってあるから、遠慮すんなよ」

283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:32:11.85 ID:zC8m7uy60
数時間後――

虎鉄「それじゃ、電気消すぞ。明日は早いからな、しっかり寝ておけ」

まゆり(イワン)「はーい」

まゆり「おやすみなさい、虎さん」

虎鉄「おやすみ」

まゆり「…………」

まゆり「ねぇ、イワンくん」

まゆり(イワン)「まゆしぃはまゆしぃだよ?」

まゆり「うん、分かってる。でもちょっとだけ、イワンくんとお話がしたいの」

まゆり(イワン)「擬態は長い間同じ姿になってたほうが、安定してくるんだぁ。だから擬態は解けないの……ごめんね」

まゆり「その姿のままでいいよ。お話が、したいだけだから」

まゆり(イワン)「……分かりました。何でしょう?」

286: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:37:19.35 ID:zC8m7uy60
まゆり「ごめんね……イワンくん」

まゆり「イワンくんとってもいい人なのに。まゆしぃのせいで、明日……」

まゆり「本当に、ごめんね……」

まゆり(イワン)「謝らないでください、まゆりさん。これは誰かに強制されてやってることじゃないんです」

まゆり(イワン)「僕が、僕の意志で決めたことなんです。まゆりさんと、未来の人たちを助けたい……助けるって決めたんです」

まゆり「そうだよね。でも……辛い時は、泣いたほうがいいと思う」

まゆり(イワン)「べ、別に辛くなんて……」

まゆり「嘘だよ。だってイワンくんの体……とっても震えてるよ」

まゆり(イワン)「!」

まゆり(イワン)「うぅ、うぅっ……うわぁああああんっ!」

泣きじゃくるまゆりを、もう一人のまゆりはそっと抱きしめてあやし続けた。

289: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:43:34.97 ID:zC8m7uy60
まゆり(イワン)「ありがとう。もう……大丈夫です」

まゆり「そう、みたいだね。よかった」

まゆり(イワン)「今日はとても楽しかったです、本当に。紅莉栖さんがいきなり命を捧げてくれって言ってきたのには驚きましたが」

まゆり「あはは、紅莉栖ちゃんらしいかも」

まゆり(イワン)「それに、まゆりさんと会えてよかった。僕、今まで女の子とあまり仲良くしたことないんです」

まゆり(イワン)「だからまゆりさんとお話ししたり、話し方の練習したりするの……とても新鮮だったし、嬉しかった」

まゆり(イワン)「ありがとう、まゆりさん」

まゆり「そこまで言われると照れちゃうのです……。まゆしぃも、イワンくんと一緒に居て楽しかったよ」

まゆり(イワン)「まゆりさん……」

まゆりの顔がもう一人のまゆりにそっと近づく。

まゆり「ん……いいよ」

近づかれているまゆりは、そっと目を閉じる。
そして、まゆりの唇同士が重なりあった。

295: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:49:07.90 ID:zC8m7uy60
まゆり「んっ……」

まゆり(イワン)「んっ……んんっ!」

優しく表面を撫でるだけのキスから、徐々に深いものへ。

まゆり「あんっ……んちゅっ……」

まゆり(イワン)「んっ、あぁっ……」

何分重ねただろうか、次第に離れていく唇。

まゆり(イワン)「……ありがとう。もう、まゆしぃは大丈夫なのです☆」

まゆり「うん、きっと大丈夫」

まゆり(イワン)「明日は早いし……そろそろ、寝よ?」

まゆり「そうだね」

まゆり(イワン)「おやすみ、もう一人のまゆしぃ」

まゆり「おやすみ、もう一人のまゆしぃ」

298: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 01:55:03.37 ID:zC8m7uy60
虎鉄「おい、そろそろ起きろ! って何抱き合って寝てんだよ!」

まゆり「あ、おはよー虎さん」

まゆり(イワン)「ダメだよ、虎さん。女の子の部屋に入ってきちゃー」

虎鉄「わ、悪ィ。でもそろそろ支度しないとやばいぞ! 特にイワ……って今はまゆりか」

虎鉄「だーっ、区別がつかん!」

まゆり(イワン)「ラボにいくのはまゆしぃなのです☆」

虎鉄「そ、そうか。とりあえず二人とも、とっとと顔洗ってこい。その後にメシだ」

まゆり「はーい」

299: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:00:14.67 ID:zC8m7uy60
「いただきまーす」

まゆり「またチャーハンなのです」

虎鉄「あぁ、俺は毎日チャーハン食ってるからな」

まゆり(イワン)「同じものばかり食べてると栄養かたよる思うなぁ」

虎鉄「それはお前らが言えたことじゃねぇぞ。唐揚げとバナナ大好きっ子じゃねーか」

まゆり「えへへ、そうでした」

まゆり(イワン)「バナナは栄養たくさん入ってるからオッケーなのです」

虎鉄「んじゃ、チャーハンはうまいからオッケーだな」

まゆり「オッケーかは分からないけど、虎さんのチャーハンはおいしいよね」

まゆり(イワン)「うん。ジューシー唐揚げも入ってるし」

虎鉄「ま、普段はいれてねーけどな」

301: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:05:49.25 ID:zC8m7uy60
虎鉄「えーっと、ラボに行くのはどっちだっけ?」

まゆり(イワン)「まゆしぃです☆」

虎鉄「よし、お前は俺が柳林神社まで車で送る」

虎鉄「んでもう一人のまゆりだが……そろそろ迎えがくるはず」

ぴんぽーん。

虎鉄「噂をすればなんとやら……はーい」

カリーナ「おはよ、タイガー」

虎鉄「おっす。今日は頼むぜブルーローズ」

カリーナ「任せて、私がばっちり会社まで護衛するから」

虎鉄「ブルーローズの企業、タイタンインダストリーは重工業を手がけている。軍事産業も担ってるから、かなり安全なはずだ」

まゆり「椎名まゆりです。今日はよろしくお願いしまーす」

カリーナ「よろしくね、まゆり」

303: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:11:21.39 ID:zC8m7uy60
虎鉄「んじゃ、神社にいくとするか」

まゆり(イワン)「そうだね」

虎鉄「なぁ、折紙」

まゆり(イワン)「まゆしぃはまゆしぃだよ?」

虎鉄「少しだけでいい」

まゆり(イワン)「……何ですか、タイガーさん?」

虎鉄「俺はお前がヒーローになった最初のころ不安だった。戦闘向けの能力じゃないしな……そして事実見切り職人になった」

虎鉄「それが悪いとは言わねぇが、やっぱりヒーローなら誰かを守るもんだろうって思ってた」

まゆり(イワン)「…………」

虎鉄「だが、お前はいつの間にか成長してたな。正義感なら俺にも負けてない、いや……それ以上かもしれない」

虎鉄「俺は折紙サイクロンというヒーローと一緒にヒーローが出来たことを、誇りに思う」

まゆり(イワン)「…………」

虎鉄「世界線が変わればこの記憶さえも消えちまうだろう。だが……この世界線の、この俺は、お前と過ごした日々を忘れない……絶対にだ」

まゆり(イワン)「ありがとう、ございます……。絶対に、絶対に成功させて見せますから!」

306: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:15:56.96 ID:zC8m7uy60
柳林神社――

まゆり(イワン)「ありがとう、虎さん」

虎鉄「おう」

まゆり(イワン)「また、後でね」

虎鉄「あぁ。また後で、な」

309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:22:43.79 ID:zC8m7uy60
虎鉄「あ、紅莉栖? 俺だ、虎鉄」

紅莉栖『まゆりは?』

虎鉄「今ラボに向かってる」

紅莉栖『そう。ごめんなさい、大変な所をあなたに押し付けて……』

虎鉄「全然大変じゃなかったぞ。まゆりがしっかりしてたからな」

紅莉栖『それはどっちの?』

虎鉄「二人とも、さ。俺みたいなオジサンより、よっぽどしっかりしてるよ」

紅莉栖『そう……。でも、私って本当に……最低の人間だわ。血も涙もない』

虎鉄「悩みに悩んだすえに出した結論だろ。最低だ何だ言われようが、こうすると決めたんだろう?」

虎鉄「弱音を吐くな、弱さを見せるな。そういうもんは一生自分で抱えていかなきゃいけないんだよ……お前が選んだ道は、そういう道だろ」

紅莉栖『分かってる……ごめんなさい、あなたに甘えてたわ』

虎鉄「けどまぁ、どうしても辛い時には……俺に話せばいい。俺だって折紙を止めなかったんだから、あるいみ共犯だしな」

紅莉栖『虎鉄さん、ありがとう……』

虎鉄「それより、後のことは任せたぜ? まゆりが何かミスりそうになったらフォローしてくれよ」

紅莉栖『うん。任せて』

312: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:29:03.63 ID:zC8m7uy60
ラボ――

まゆり(イワン)「トゥットゥルー☆ おはようなのです」

岡部「まゆりか、実に素晴らしい朝だな。まるで女神に祝福されたかのような……」

ダル「朝っぱらから飛ばしてますねオカリン」

紅莉栖「まったくよ、こちとら徹夜で作業してんだからさ……もう少し静かにしてほしいわね」

岡部「ぐはぁっ! この鳳凰院凶真になんという仕打ちだ」

岡部「だが、タイムリープマシンに問題が起きても困る……少しは自重してやろう! フゥーハハハッ!」

まゆり(イワン)「全然自重してないのです……」

313: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:32:27.86 ID:zC8m7uy60
数時間後――

紅莉栖「これでオッケー、かな」

ダル「ふぅ。さすがに徹夜はキツイっす」

岡部「完成、したのか?」

紅莉栖「えぇ……私達、とんでもないものを作っちゃったんじゃない」

ダル「実験するのかい、オカリン」

岡部「実験したい。なぜならこれは俺たちが作ったものだからだ」

岡部「だが、実際にタイムリープをするのは多くの問題がある」

紅莉栖「そうね。過去に例がないし、何が起きるか分からないわ」

岡部「…………」

岡部「実験は中止。マシンはしかるべき研究機関に託して、世間に公表しよう」

314: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:35:55.42 ID:zC8m7uy60
ダル「そんじゃ約束通り、今日はオカリンのおごりな」

岡部「任せておけ、いくらでも出してやろう。フゥーハハハッ!」

紅莉栖(長い時間、まゆりを岡部や橋田と一緒にしておくのは危険ね。ボロがでるかも)

紅莉栖「んじゃ私とまゆりで買い出しに行ってくるから。行きましょ、まゆり」

まゆり(イワン)「うん。分かったよ、紅莉栖ちゃん」

ダル「動くのめんどいし、ラボでgdgdしてるとしますか……」

ダル「昨日オカリンが大量にコーラ買ってきたから、まだ残りまくりんぐwwwうめぇwww」

315: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:37:40.63 ID:zC8m7uy60
まゆり(イワン)「いっぱい買ったねぇ」

紅莉栖「えぇ、これだけあれば十分でしょ」

紅莉栖「ていうか絶対に買いすぎよ、これ……5人で食べられる量じゃない」

まゆり(イワン)「あはは、そうかもね」

まゆり(イワン)「橋田君ならたくさん食べてくれるよぉ」

紅莉栖「まゆり……それはタブーよ」

紅莉栖(橋田君じゃなくて、ダルでしょ?)

まゆり(イワン)「あ、ごめんね」

318: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:41:33.72 ID:zC8m7uy60
まゆり(イワン)「ただいまー、買い出し行ってきたよー。うわぁ、お寿司にピザ……豪華だねぇ」

まゆり(イワン)(あ、ジューシー唐揚げ買うの忘れちゃった!)

岡部「Lサイズのピザを5枚とか気が狂っとる……」

ダル「ま、いざとなったら僕が全部食べるからおk」

まゆり(イワン)「あ、フェリスちゃんは来れないみたい」

まゆり(イワン)(フェイリスちゃんって言いそうになっちゃった。あぶないあぶない……)

岡部「そうか……ルカ子も来れないようだし、食べ物が少々余りそうだな。指圧師も連絡がこない」

鈴羽「おーっす。今日店長が早めに店閉めたから遊びにきたよー。うわっ、すごい豪華じゃん」

岡部「それでは、タイムリープマシンの完成を祝って――乾杯!」

「乾杯!」

322: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:44:14.16 ID:zC8m7uy60
ダル「うえっぷ、さすがに食い過ぎたお」

まゆり(イワン)(また呼び方間違えるの怖いし、あえて口にしないでおこうかな)

まゆり(イワン)「ピザ3枚も食べるなんてすごいねぇ」

岡部「これ以上ブクるなよダル?」

ダル「そういうオカリンだってドクペ8本目ですよねそれ?」

岡部「フッ……狂気のマッドサイエンティストだからいいのだ!」

ダル「イミフにもほどがあるんですけど」

鈴羽「岡部倫太郎」

岡部「何だ、鈴羽?」

鈴羽「ちょっと風にあたってくるね」

岡部「あぁ……分かった」

323: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:46:24.58 ID:zC8m7uy60
まゆり(イワン)(そろそろテレビをつければいいんだっけ。チャンネルは1ch……っと)

まゆり(イワン)「何か面白い番組やってないかなぁ……って何これ!?」

クリーム『我々はウロボロス。我々は、この街に囚われている同志ジェイク・マルチネスの解放を求めます』

クリーム『ご賛同頂けないようでしたら、この街の主要な柱を破壊します。そうしたら、この街は瓦解しますわ』

クリーム『脅しでないということを証明するために、この街につながらう交通網を爆破して差し上げましょう』

少し離れた場所で大爆発が起き、床が大きく揺れる。

ダル「ちょ、爆破テロ!?」

クリーム『これで脅しでないと御理解いただけましたでしょうか』

クリーム『良い返事を期待しておりますわ』

まゆり(イワン)(こいつがウロボロス……僕たちの、敵!)

324: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:48:45.63 ID:zC8m7uy60
岡部「一体どうなっているんだ……」

そのつぶやきの直後、ラボの扉が蹴破られた。
侵入してくるのは銃を構えた五人の男。

「動くな。両手を上げろ」

ダル「ひっ……!」

「声を出すな」

岡部「……」

蹴破られた扉の向こうから足音が聞こえる。拳銃を持った桐生萌郁だ。

まゆり(イワン) (僕は今からこいつらに、殺されるんだ)

325: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:52:57.77 ID:zC8m7uy60
ダル「え、桐生氏……!?」

萌郁「タイムマシンは回収させてもらう」

萌郁「岡部倫太郎、橋田至、牧瀬紅莉栖は我々に着いてきてもらう」

紅莉栖「あなた達……何者なの?」

萌郁「SERNの実行部隊、ウロボロス」

ダル「ウロボロス……ってテレビでやってたテロ組織!? ちょ、SERNはそんな奴らとも組んでたのかよ!」

隊員「M4、余計なことはしゃべるな」

まゆり(イワン)「じょ、冗談だよね。萌郁さんは仲間、だよね?」

萌郁「…………」

萌郁「椎名まゆりは、必要ない」

326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 02:55:22.32 ID:zC8m7uy60
萌郁の拳銃の狙いが僕に定められる。そしてゆっくりと、ゆっくりと指がトリガーにかけられる。

まゆり(イワン) (バーナビーさん、バイソンさん、スカイハイさん、ブルーローズさん)

まゆり(イワン) (ファイヤーエンブレムさん、ドラゴンキッド、エドワード、街のみんな)

まゆり(イワン) (それにタイガーさんに紅莉栖さん……そして、まゆりさん)

まゆり(イワン) (多くの素敵な人に会えて、最高の人生でした)

萌郁が拳銃のトリガーを引いた。僕の額に小さな弾丸が向かってくる。

まゆり(イワン) (岡部さん……まゆりさんのこと、お願いしますね)

330: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/13(日) 03:02:16.47 ID:zC8m7uy60
岡部「まゆり、まゆりぃいいいいいい!」

ダル「う、うわあああああ!」

岡部「まゆり、しっかりしろ! おい紅莉栖、どういうことだ!」

紅莉栖(イワンさん……)

紅莉栖「……ごめんなさい」

岡部「失敗、なのか? なら急いでタイムリープを……」

紅莉栖「待って。岡部、何か感じない?」

岡部「何を言って……くっ、これは!?」

紅莉栖「来たのね、リーディング・シュタイナー」

岡部「だがまゆりは俺の目の前で死んで……」

紅莉栖「私は騙したのよ。世界を、そして岡部を」

紅莉栖「今から向かう世界線が、悲しみのない世界でありますように――」
紅莉栖編 おわり

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