【化物語・クロスSS】暦「八ッ九寺ーーー!!!」梓「キャーーーッ!?!?」【けいおん】

1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:08:39.39 ID:y6X7oWASo
僕が彼女に出会ったのは夏休みのその頃。

羽川と戦場ヶ原に家庭教師としてついてもらい

毎日、息つく暇も無くただ勉強に勤しんでいた

そんな夏休みのなんとも白昼夢な一日こと。
2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:13:19.60 ID:y6X7oWASo
【八月三日 午後一時】

その日は戦場ヶ原の家で本来ならば朝から夜まで

一日中勉強をする予定だったのだが

今日は、戦場ヶ原がお父さんと用事があるとの用事だったので

昼には切り上げる形となった。
もちろん早く切り上げて帰ったからといって

残りの半日は勉強をやらなくても良い、などということある訳もなく

僕はこのまま自宅に帰って直ぐ机に向かわなければならないのである。
例えば、小学生が学級閉鎖などで授業が三限目辺りで

やむなく終了し下校したとしても

遊びには行かず

家で大人しく宿題などをしていなければいけないのと同じ事だ。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:18:26.70 ID:y6X7oWASo
ん?…小学生?

そんな事を考えて歩いていると

目の前に見憶えのあるツインテールがひょこひょこと揺れていた。

でも何だか少し雰囲気がちがう。

あいつ確か小学生だよな?

今日は不思議と中学生位に見えるのはどうしてだ?

まあでもこの辺りで、あのバカみたいに長いツインテールは

間違いなく八九寺しかいないだろうし…

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4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:24:05.40 ID:y6X7oWASo
暦「八ッ九寺ーーー!!!」

梓「キャーーーッ!?!?」

暦「はははは、可愛いなあ、可愛いなあ!」モミモミ

梓「キャーッキャーー!?!? 」

暦「もっと触らせろもっと抱きつかせろ!パンツ見ちゃうぞ、このこのこのこの!」モミモミ

梓「イヤャーッ!?やめて下さい!!誰か助けて下さい!!」

暦「…?」モミモミ

梓「キャァー!!!不審者です!!誰か助けてぇ!!!」

暦「……ッ!?」

暦「は、八、八九寺…??」

梓「何を言ってるんですか、あなたは!いったい誰なんですか!?」

暦(ちょっと待て…八九寺じゃない……
そういえば胸の感触も殆ど無かった様な……
否、そんな事を言ってる場合じゃない)

暦「あ、あー困ったなー、人違いだったなー、ほんとゴメンなー」ハ、ハハハハ
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:32:50.14 ID:y6X7oWASo
梓「『人違いだったなー』じゃないですよ!!とりあえず警察を呼びます!」

暦「ちょ、ちょっと待って頂けないでしょうか?
そ、その、ご、誤解なんだよ!」

暦(…まずい……これは本当にまずい…
冗談では済まされない事態が起きてしまった)

暦「ほ、本当にこれは、その、違うんだ
ぇっと八九寺 真宵という知り合いがいて…」

梓「アッ!?」

暦「!?…」

梓「もしかしてまた…またこれも夢か」

暦(……な、なんだ、
なんだかわからないけど、勝手に一人で納得をし始めてしまった)

梓「ン、ンン゛ーー」

暦(な!なんなんだこの子!
納得したと思ったら、今度は急に自分の頬をつねりだした!?)
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:36:39.98 ID:y6X7oWASo
梓「あれ?痛い…」

暦「ぉ、おい、大丈夫か?」

梓「アッ!?」

暦(こ、今度はなんだ!?)

梓「夢じゃない!や、ゃ、やっぱり警察を呼びます!」

暦「ちょっと待って!とにかく落着いて!」

梓「これが落ち着いていられますか!」

暦(これはなんだか聞き覚えのあるセリフだな…)

梓「とにかくそこから動かないで下さい!今警察に通報します!」

羽川「あれ?阿良々木くん?何してるのこんな所で?」

暦「お、おう、羽川。ちょっと、な」ハハハハ

梓「……」ジー
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:39:23.39 ID:y6X7oWASo
暦(ヤバい…夏休みの真っ昼間に
こんな閑静な住宅街の真ん中で
女子中学生に猥褻な行為を行ったなんて知れたら
僕の人生は終わってしまう!
僕は羽川に嫌われてしまう!)

羽川「阿良々木…くん?」

暦(いや、ま、待てよ、羽川なら事情を話せば少なくとも、今よりは状況が落ち着くかもしれない!)

暦「羽川それがさ………」
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:42:17.08 ID:y6X7oWASo
【八月三日 午後二時】

「例えそれがスキンシップだとしても
例えそれが相手が真宵ちゃんだとしても、
女の子にする行為ではないよね」

その通りである。

あれから羽川が仲裁に入ってくれ

何とかあの少女を説得し

一時を凌いだのだが、その後の羽川の僕に対する接し方が

真夏日にも関わらず痛いほど冷たかったのは

言うまでもない。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:47:09.25 ID:y6X7oWASo
羽川「ところで阿良々木くん
今日は戦場ヶ原さんのお家で勉強するんじゃなかったの?」

暦「あぁ、さっきまで戦場ヶ原の家で勉強していたのだけど
戦場ヶ原がお父さんと用事があるらしくて、
今日は昼までの授業だったんだ」

羽川「そうなんだ、それで空いた時間にあんな
か弱い女子高生に、背後から抱きついたりしててたんだ」

暦「羽…川さん……?」

羽川「冗談だよ」フフ

暦「しかし羽川、あの子、高校生だったんだだな
小さいから全然そんな風には見えなかったよ」

羽川「小さいから中学生以下にしか見えないって所が
もう問題あるよね」

暦「う……」

羽川「でもまあ確かに小さくて可愛い子ではあったね」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:50:21.84 ID:y6X7oWASo
暦「あっそうだ羽川、そう言えばなんかあの子
急に頬をつねって『夢じゃない』とか言ってたんだけど
普通そんな事言ったりするのかな?漫画やアニメじゃあるまいし」

羽川「まあこんな白昼堂々と見知らぬ男子高校生に急に襲われたら
誰でも夢だと思い込みたくなるんじゃないかな」

暦「う…」

羽川「でもそれって、なんだか夢魔みたいだね」

暦「夢魔?あのRPGの敵キャラとかで出てくる、サキュバスとかそうゆうの?

羽川「うん、正確にはキリスト教に伝わる悪魔の一種だけどね」

暦「お前は何でも知ってるなあ」

羽川「何でもは知らないわよ、知ってる事だけ」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:52:53.74 ID:y6X7oWASo
暦「でもその夢魔ってゆうのがどう関係してるんだ?」

羽川「例えばさっきの一連の出来事が、あの女の子の夢だったとして
阿良々木くんはあの子の夢の中であの子を襲ったわけだから、
それは夢魔になるんじゃない?頬っぺたまでつねった訳だし」

暦「つまり僕が夢魔かよ!!」

羽川「男だからインキュバスだね」

暦「僕をそんな淫獣の様な設定にするな!」

羽川「でもそんな淫獣じゃなくて、現実でそれをやっちゃったから、もっと酷いよね」

暦「う……」

羽川「じゃあ私そろそろ行くね、阿良々木くんも帰ってちゃんと勉強の続きするんだよ」

暦「あぁ、ありがとう、助かったよ、本当に色々…」

羽川「うん!じゃあね!」
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:55:24.09 ID:y6X7oWASo
【八月三日 午後零時】

『阿良々木くん…?ねえ…阿良々木くん…?』

そんな声が頭の中で薄っすらと聞こえて目覚めると

そこは戦場ヶ原の家だった。

僕は、右手にシャープペンシルを握ったまま、ノートに顔を半分をへばりつけて

学校の授業中に居眠りするかの如くそこに眠っていたのだ。

しかし、僕は大変失礼な事を、戦場ヶ原さんにしてしまったのだろう。

わざわざ夏休みの時間を割いて

こんな僕の為に朝から勉強を教えてくれている彼女の目の前で

あろう事か居眠りをしてしまうだなんて。

そりゃあ彼女が怒ったってしかたがないさ。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/10(金) 23:56:24.45 ID:y6X7oWASo
スヤスヤと眠りについていた僕の半開きの口に

薄いカッターナイフの替え刃が、五枚程差し込まれていようと

スヤスヤと眠りについていた僕の頭の周りに

無数の画鋲が丁寧に敷かれてようと

それは決して僕には怒る権利なんてない。

これっぽっちもないさ…
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:01:37.73 ID:JmuDwYSLo
暦「って死ぬわぁー!!寝返りを打ってたら僕は確実に死んでたよ!!」

ひたぎ「あら、そう。それはとても残念ね。
けれど私は、その寝返りを打つ前に起こしてあげたのだから
感謝して欲しい位なのだけれど」

暦「それは違う!
きっとお前は僕が目覚める時に起こるアクションを狙ってたんだ!」

ひたぎ「フフ、元気そうで良かったわ、阿良々木くん。
阿良々木くんたら、私が私の大切な時間を割いて
勉強を教えてあげているのにも関わらず居眠りしちゃうんだから、
全く心配しちゃうわ」

暦「…それは素直に謝るよ。
昨日明け方まで勉強していたから、たぶんその所為だと思う。ごめん」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:04:20.18 ID:JmuDwYSLo
ひたぎ「あら、そう。まぁ阿良々木くんが目覚めない様に
阿良々木くんの口にカッターナイフの替え刃を差し込むのは、
とても楽しませてもらったから今回は特別に許してあげるわ」

暦「数分の居眠りの代償が大きすぎる!!」

ひたぎ「ともあれ阿良々木くん、
私はそろそろ出掛ける準備をしたいのだけれど」

暦「あぁ、そうだったな、じゃあ僕もそろそろ帰るとするよ」

ひたぎ「ええ、そうしてくれると助かるわ。
このまま勉強もしないで居眠りされては困るもの」

暦「もうしない!!」

ひたぎ「フフッ」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:06:11.25 ID:JmuDwYSLo
【八月三日 午後一時】

結局あれは夢だったのか。

あの子の夢でも無く僕の夢か。

そうなると僕の方が、頬をつねるべきだったな。

それに女子高生に後ろから抱き着くなんて、

流石の羽川が仲裁に入ろうと本来なら警察沙汰は間違いないだろうし。

あぁしかし、本当に夢で良かったなあ。

そんな事を考えて歩いていると、

目の前に見憶えのあるツインテールがひょこひょこと揺れていた。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:11:17.65 ID:JmuDwYSLo
暦(……あぁーもう嫌だ!あれは間違いなく八九寺 真宵だろうけど、
僕はもう声なんてかけない!抱き着いたりなんかしない!)

暦「……」スタスタスタ…

八九寺「……?」

暦「……」スタスタスタ…

八九寺「あっ阿良々木さん!?」

暦「……」スタスタスタ…

八九寺「……」

暦「……」スタスタスタ…

八九寺「えっ!無視ですか?!」

暦「……」 ピタッ

八九寺「無視のパターンは初めてだったので
あまりに普通のツッコミをしてしまいました…私とした事が…」

暦「……」

八九寺「…阿良々木さん?」

暦「ハチクジ…なんだな…?」

八九寺「そうですよ!当たり前じゃないですか!
こんな愛らしくグラマーな女子小学生は、日本中探しても
私くらいしか居ませんよ!!」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:15:16.20 ID:JmuDwYSLo
暦「……」

八九寺「どうしちゃったんですか阿良々木さん!?変ですよ?!
何処かに頭でもぶつけて、顔がおかしくなっちゃったんですか!?」

暦「本当に八九寺なのか…?」

八九寺「もう何言っちゃてるんですかぁ!
何ならいつもの感じで抱き着いて来て下さいよ!!」

暦「八九寺…ちゃーん…」ギュ

八九寺「テンションが低いと、余計に気持ち悪いです!吐きそうです!」

暦「……わかった、お前が八九寺だと信じよう。
むしろここまで罵られれて、
八九寺じゃない別の人間の場合、僕は立ち直れない」

八九寺「一体どうなさったんですか?阿良々木さん?
と言うかもう離れて貰っていいですか?
私はいつまで抱きしめられれば良いのですか?
心臓の音が伝わって気持ち悪いです」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:16:40.75 ID:JmuDwYSLo
暦「あーすまん、本当良かったよ!お前がお前で」

八九寺「全く意味がわからないのですが、どうなさったんですか?」

暦「いや、良いんだ、こっちの話しだ」

八九寺「そうですか、わかりました。ところで、阿痛いタタさん!」

暦「八九寺、人の名前を『あの人は見ていて痛々しい、恥ずかしい』
という様な呼び方をするな!僕の名前は阿良々木だ!」

八九寺「失礼かみました」

暦「違う、わざとだ」

八九寺「かみまみた!!!」

暦「わざとじゃない!?そしてやっぱり八九寺だー!!」

暦、八九寺「イエェーイ!!」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:17:55.11 ID:JmuDwYSLo
八九寺「ところで阿良々木さん?」

暦「なんだ?八九寺?」

八九寺「阿良々木さんは、食べるラー油ってご存知ですか?」

暦「あの最近テレビなんかで話題のやつだろ?」

八九寺「そうです!私どうもあれが許せないんですよねえ」

暦「どうしてだ?」

八九寺「だって【食べるラー油】ですよ?逆に食べないラー油ってあるんですか?」

暦「確かに言われてみれば」

八九寺「日本語的におかしいと思うんですよね!
【食べる】なんてキャッチフレーズを付ける位なら、
食べれない物に付けるべきです!」

暦「例えば?」

八九寺「食べる重油」
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:20:26.14 ID:JmuDwYSLo
【八月三日 午後三時】

八九寺と話し込んでしまい、

気が付けば自宅に着いた頃にはこんな時間になってしまっていた。

僕は自宅の門扉を開け

玄関の扉を開け

階段を登り

自分の部屋のドアを開き

一早く勉学に取り組みたかったのだが

しかし、僕はそのまま自宅に入ることは、許されてはいない様だった。

何故ならさっき別れた筈のツインテールの少女がそこに居たからである。

否、もちろん違う。

八九寺 真宵ではない。

僕の家の門扉の前に座り込んでいるツインテールの少女は

間違いなく僕の夢に現れたそれだったのである。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:23:01.68 ID:JmuDwYSLo
神原「やあ!阿良々木先輩!奇遇だな」

暦「神原、人の家の門扉の前に座り込み『奇遇だな』
というのは呼びかけはおかしいだろう」

神原「うむ、出会い頭でさっそく的確なツッコミを投じる所は
『さすが阿良々木先輩』と言うべきではあるが
阿良々木先輩は本当に乙女心という物を理解していないなあ」

暦「なんだよ、乙女心って」

神原「例え女子が自宅の前で待ち伏せしているのに気付いたとしても、
そこは自然を装ってあげるのが殿方の務めであろう」

暦「待ち伏せているならまだしも!
自宅の目の前で座り込んでいる奴に
僕はそんな務めは果たせない!!」
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:25:40.41 ID:JmuDwYSLo
神原「まあまあまあ、所で阿良々木先輩、彼女なんだが」

梓「……」

暦「あぁ…その…どうして神原、お前と一緒に居るんだ?」

神原「うむ、それがさっき私が本屋さんに行っていた帰りに
何やらメモを見ながら困っている様子の女の子が居たので
声をかけてあげたのだ」

暦(メモ?……ああ、そう言えば羽川が

『事が事だから、念の為、
住所と連絡先を書いたメモを渡しておいた方が良い』
ってことでメモを渡したっけな。でもあれは夢じゃ…)
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:27:38.63 ID:JmuDwYSLo
神原「そして、話を聞けばどうやら道に迷っているらしく
彼女の持っていたそのメモを見てみると、それが
阿良々木先輩の家の住所だったので、私がここまで案内してあげたのだ」

暦「そうだったのか…」

神原「しかし、阿良々木先輩ちょっといいか……」

暦「ん?どうした?神原」(なんだ?真剣な顔して?)
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 00:30:10.43 ID:JmuDwYSLo
神原『どうして、あんな可愛らしい少女と知り合いになれるのだ』ヒソヒソ

暦『……』

神原『話を聞けばなんとあの、桜ヶ丘高校の生徒じゃないか』ヒソヒソ

暦『桜ヶ丘高校?聞いたことねえよ、有名なのか?』ヒソヒソ

神原『阿良々木先輩が桜ヶ丘高校を知らないなんて意外だな。
桜ヶ丘高校は可愛い子が日本一多い、と言っても
過言ではない女子高だぞ』ヒソヒソ

暦『知らねえよ!!何の情報だ!!』

神原『全国の女子高の情報を把握していないだなんて、
阿良々木先輩には失望したな』ヒソヒソ

暦『お前と一緒にするな!!』
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 01:08:20.32 ID:JmuDwYSLo
神原『いやぁそれにしても、梓ちゃんは本当に可愛いなあ』 ヒソヒソ

暦『……』

神原『阿良々木先輩、
ここは一つ阿良々木先輩にお願いしたいのだが』 ヒソヒソ

暦『お願い?何だよ?』 ヒソヒソ

神原『阿良々木先輩の後でも構わない、梓ちゃんを
ペロペロしても良いか?』 ヒソヒソ

暦『阿良々木先輩の後、というのも意味がわからないし!
ペロペロという単語の意味も全くわからない!!』

神原『いや、阿良々木先輩の帰宅が思ったよりも
早かったのでタイミングを逃し…』

暦『神原、お前は一早く規制されろ!』
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 01:09:41.37 ID:JmuDwYSLo
神原「まあそう言う事だ阿良々木先輩とりあえず
梓ちゃんを阿良々木先輩の家まで案内したので、
私はそろそろ失礼しようと思う」

暦「ああ、ありがとう、神原」

神原「うむ、梓ちゃんも機会があればまた『チョコレート密度』
について語ろうではないか!」

暦「お前は一体この娘と何を話していた!?」

梓「あの、神原さん、案内して頂いて本当にありがとうございました!」

神原「うん!私も梓ちゃんと話せて楽しかったぞ!
しかし梓ちゃん、同い年なのだから、敬語は使わない約束だぞ」

梓「えっ!?はい!その…ありがとう…」

神原「全く、本当に梓ちゃんは可愛いな!ペ…(^ω^)」

暦「神原」

梓「…?」

神原「では阿良々木先輩、私はこれで失礼する」

暦「ああ、またな」
30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 01:11:33.24 ID:JmuDwYSLo
【八月三日 午後四時】

神原と別れた後、僕と彼女はそのまま自宅の門扉の前に座り込み

少し話すことになった。

話すと言っても今日起きた

僕の彼女に対するセクハラ事件について

蒸し返して話す訳ではない。

それ以前の。

それ以前のこと。

何故、君がここにいるのか?

そんなあまりに簡単で複雑な現実を、

僕らは話さなければならない。

長い沈黙の中、話を切り出したのは僕ではなく

彼女の方だった。
31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 02:22:25.67 ID:JmuDwYSLo
梓「あ、あの突然押しかけて申し訳ありません!」

暦「いや、僕の方こそさっきは本当に悪かったな
変な事になってしまって」

梓「はい、ビックリしましたがもう大丈夫です」

暦「その…」

梓「覚えてますか?」

暦「え?」

梓「今日私と出会って起きた事全部覚えてますか?!」

暦「…う、うん、君は?」

梓「はい、覚えています!」

暦「あのさ……でも…変な話しだけど、あれは僕の夢の筈なんだ…
君と出会った後、少しして目が覚めて…
だから正直、君がまた僕の前に現れて驚いた」
32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 02:24:46.33 ID:JmuDwYSLo
梓「夢…阿良々木さんも、夢だったんですか?」

暦「え…?」

梓「夢です!私も、阿良々木さんに出会った事が全部夢だったんです!」

暦「……?えっと…つまり僕の夢の中に君が現れて、
君の夢の中にも僕が現れたって事?」

梓「はい、恐らく…」

暦「で、でもそれじゃあどうして、君が今、僕の前に居るんだ?
僕がメモを渡したのは、
夢の中だからそのメモは存在しないんじゃないのか?」

梓「はい、私もわからないのですが、目覚めたらこのメモだけが
ポケットの中に入ったままでした」
33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 02:28:08.24 ID:JmuDwYSLo
暦「……」

梓「だからもしかすると
阿良々木さんが、私のことを覚えているかと思い訪ねてみたのです……
だけど阿良々木さんも、私に会ったのが夢だったなんて驚きました」

暦「えっと……」

梓「私ずっとなんです……」

暦「え?」

梓「私ずっと目覚められ無いんです…
いえ、
何回も目覚めているんですけど、
結局全てが夢なんです…
きっとまたコレも目覚めることにる……」シクシク

暦「お、おい…」

梓「もう怖いんです!
このままずっと目覚められないんじゃないかって!
このままずっと夢の中なんかじゃないかって!
今が夢なのか、現実なのかもわからなくて!」シクシク
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 02:33:08.71 ID:JmuDwYSLo
暦「ちょっと、落ち着けよ!」

梓「たまにもう死んでしまいたいと考えます…
どうせ、これも夢だと……
死んだら、目覚められるかもしれないと……」シクシク

暦「………」

梓「……す、すいません、つい…」シクシク

暦「いや、良いんだ……
最後に眠った事は覚えてるのか?一番最後の現実と言うのか…」

梓「えっ、はい、一応……。
私は…学校の部活で軽音部に入っているんですけど…
確かその部活の先輩方と合宿に行って、帰って来た翌日の夜です。
それから何度も目覚めています…」

暦(つまり、一度の夢なかで、
何度も夢を見ているってことになるのか)

梓「今となれば、最後に眠った夜も、もしかしたら
夢だったのかなって感じてますけどね」エヘヘ…グスン…。
36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:02:30.82 ID:JmuDwYSLo
暦「……まあでも夢であろうと、僕みたいな君の見た夢の、君を覚えていた奴に出会ったのは、初めてなんだろ?」

梓「は、はい…」

暦「なら、コレばっかりは考えたって仕方がないと思うぜ」

梓「…?」

暦「夢なのだから、家に帰ってもう一度眠ってみれば良い。
今度は僕も居るし、目覚めれば夢か現実か確認が取れるだろうし」

梓「…は、はい!」

暦「まあでも、全てが夢ならば結局意味は無いけれど、今この現在をとりあえず現実と信じないといけないだろ」

梓「はい!そうですね、ありがとうございます!」
37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:03:14.94 ID:JmuDwYSLo
暦「とにかくお互い家に帰り、今日は眠ろう」

梓「わかりました、では明日朝目覚めたら、阿良々木さんに連絡をいれて確認をします」

暦「ああ、そうしよう、夢なら夢でその時また考えよう」

梓「はい、今日は色々すいません、本当にありがとうございました」

暦「ああ、大丈夫、気にしないでくれ」
(あんなセクハラ行為をしたにも、関わらず最終的には何故か感謝されている現実がもうすでに、夢の様な気がする)

梓「それでは失礼します!」
38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:05:11.18 ID:JmuDwYSLo
【八月三日 午後五時】

彼女と話し終えて僕は、やっと自宅に帰った。

本来なら戦場ケ原の家から、四十分もあれば到着する筈なのだが、四時間もかけて辿り着いたのだ。

ある意味驚きだ。

しかし一体あの子は何なんだ?

正直、全てが僕のただの夢の様な気がしてきた。

夢の中で見る夢
夢から覚めない夢
繰り返し目覚める夢

まさに、あの少女の言う様な。

僕もあんな訳のわからない体験をしたので、早く眠って

『今』が夢かどうか確認したいくらいだけれど、僕には受験生という現実があるのでそうはいかない。
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:06:14.00 ID:JmuDwYSLo
もし現在が夢で無く現実の場合の為、僕は勉強をしなければならないのだ。

けれど、あまりに彼女の言葉が気になったので、僕は少し確認をとった。
40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:09:23.01 ID:JmuDwYSLo
羽川『お待たせしました、羽川 翼です』

暦「もしもし、羽川?」

羽川『うん、どうしたの急に?阿良々木くんから電話くれるなんて珍しいね』

暦「いや、その、変な事を聞くかもしれないが…羽川、今日僕に会ったこと覚えてる?」

羽川『?…いや、今日はずっと図書館に居たから、阿良々木くんには会ってないと思うけれど』

暦「そうか…ありがとう、安心したよ」
羽川「……?どうかしたの?阿良々木くん」

暦「いや、なんでもないんだ、気にするな」

羽川「そう、なら良いんだけど」

暦「うん、じゃあ、急に悪るかったな、また連絡するよ」

羽川「うん、わかった、またね」

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ーー

羽川は覚えていない。
つまり、彼女に初めに出会ったのはやっぱり夢か…
と、なると……
41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:11:07.12 ID:JmuDwYSLo
神原『神原駿河だ、神原駿河、好きな学校行事は球技大会だ!』

暦「おっ、珍しくマトモだな」

神原『深夜の部!』

暦「どの球を使う気ですか!!」

神原『その声とツッコミは阿良々木先輩だな!どうかしたのか?』

暦「いや、たいした事ではないのだけれど…神原、今日僕に会ったこと覚えてるか?」

神原『何を言ってるんだ、阿良々木先輩。さっき別れたばかりじゃないか』

暦「あぁそうだよな、良かった」

神原『どうかしたのか?阿良々木先輩?』
暦「いや、問題ない、大丈夫だ」

神原『そう言えば、梓ちゃんが阿良々木先輩を訪ねてきた理由を深く聞いてなかったのだが、もしかして阿良々木先輩、またあの類なのか?』

暦「…なんとも言えないが大丈夫だ、たぶん、そういうのではないよ」

神原『そうか…なら良かった!また阿良々木先輩のあの性癖が現れ出したのかと思ったのでな』

暦「お前はどの類の話をしている!!そしてどの性癖の話をしている!!」

神原『性癖には心当たりがあるのだな』

暦「無い!!」

神原『何はともあれ、阿良々木先輩、また何か困った事があればいつでも私に頼ってくれ、できる限り力になる』

暦「ああ、ありがとう!また何かあれば頼むよ」

神原「うむ、それでは失礼する」

暦「ああ、じゃあな」
42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:12:59.35 ID:JmuDwYSLo
……やっぱりさっき彼女が僕の家の前に居た事は夢じゃない……。

そりゃ眠った訳ではないし、目が覚めた訳でもないもんな…

「あー!もうわけがわからない!」

僕は部屋のベッドの上に大の字で寝転び、白い天井を見上げて独り言を唱えた。

正直、彼女と自宅の前で話をしている時、
彼女が何を言ってるのかさっぱりわからなくて、僕は早く話を切り上げたかった。

だからあんな安易に、その場しのぎに、話をまとめたのが本心の所である。

『夢なら目覚めればいい』

そんな、お座なりで軽薄な事を彼女に言ってしまったのだ。
43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:14:19.16 ID:JmuDwYSLo
【八月四日 午前七時】

しばらくして…

否、しばらくどころの話しではない。

僕はあのまま、ベッドの上に寝転んだまま眠ってしまっていた。

昨日の服のまま、夕食も食べずに。

約十二時間強、もう朝だ。

まずい、あれ程言っていたにも関わらず勉強に一切手をつけていない…ダメな受験生にも程がある。

ダメな受験生あるあるかよ。

しかし、夕食時間に妹達が起こしに来ないのは、変だな…

そう言えばいつもなら、この時間には、起こしに来るはずなのに…

そんな事を考え、とりあえず一階のリビングへと向かった。
44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:17:14.22 ID:JmuDwYSLo
火憐「許せねえ…」

月火「………」

暦「おはよう、どうしたんだ?朝からテレビにしがみ付いて」

火憐「あっ!兄ちゃん、ちょっとこれ見ろよ!」

月火「おはよう、お兄ちゃん、あのね、隣町の高校で自殺があったんだって」

暦「えっ…………」

テレビ『本日未明、私立桜ヶ丘高校の音楽準備室にてこの高校に通う女子生徒【中野 梓さん(17)】が首を吊って死んでいるのが、この高校の警備員により発見されました。
警察はイジメを原因とした自殺とみて捜査を進めております。
しかし、学校側の意見は……』

(たまにもう死んでしまいたいと考えます…どうせ、これも夢だと……死んだら、目覚められるかもしれないと……)
45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:18:37.58 ID:JmuDwYSLo
僕は言葉を失くした。

彼女がどれ程、現状を大きく、抱えていたのか、彼女がどれ程、現状に苦しまされていたのか……

僕は安易にも、現実をまるで夢の様に軽々しく見ていたのだ。

僕は直ぐさま携帯を開き、今日彼女から連絡があったのかを確認したが、着信履歴、メールの受信ボックス、そこにはなにも彼女からの連絡は無かった。

(夢じゃない)

彼女は初めて僕にあった時そう言った。

人は現実に起き得ない何かを経験した夢だと疑いだすのだろう。
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 03:20:08.52 ID:JmuDwYSLo
暦「夢じゃない…」

火憐「おい!兄ちゃんなに言ってんだよ!」

暦「…!?」

火憐「とにかく、さっきから自殺した子の友達って子達から連絡が入ってるから、ちょっと行って来る!!」

暦「…待て!火憐ちゃん!」

火憐「何だよ!止めんなよ!イジメとか私が絶対に許さねえ!」

暦「落ち着け、まだイジメと確定したわけではないし、それに僕はあの子と知り合いなんだ!」

火憐「兄ちゃんが!?」

暦「まあ知り合いって程でもないが…とにかくだ、火憐ちゃん!じっとしてろなんて言わない、どうせ言ったってできないだろうからな」

火憐「ああ!友達が関わってんだ!」

暦「ああ、そうだな!とにかくあの高校の場所わかるよな?僕を案内してくれるか?」

火憐「構わないぜ!兄ちゃんがその気なら案内する!」

暦「ありがとう!直ぐに行こう!」
50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 12:07:16.73 ID:JmuDwYSLo
【八月四日 午前九時】

火憐に連れられて、自転車で隣町の彼女の通う高校、私立桜ヶ丘高校まで辿り着いた。

片道50分程度

こんな近くの高校にも関わらず、僕は名前すら知らなかったとは神原が驚く理由も一割位は理解できる。

残りの九割は割愛しておこう。

正門の前には恐らく、この県内では前代未聞の数であろうテレビの取材陣と、事件を知った地元の人達が、砂糖に群がる蟻の様に、ウヨウヨとそこに集まっていた。

その中には彼女の友達だろうか、彼女と同い年位の女の子達が、泣き崩れながら、真意を確かめようと、その場に居る警察や学校の関係者であろう大人達に、ちぎれそうな声で叫んでいた。

僕が火憐に連れられ、ここまで来た理由は、目の前にいる泣きながら叫ぶそんな彼女達と同じだろう。

ただ、現実か、事実か、それを確かめたかっただけなのだろう。

現実であり事実であるそれを

最後まで受け入れられなくて、自分の眼で、自分の耳で確認したかっただけなのだ。
51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 12:10:41.72 ID:JmuDwYSLo
様々な人達がそこには居て、様々な声が聞こえる。

小さく細々とした無数の声
拡声器を使った大きな警察の声
途切れず泣き叫ぶ女の子達の声
途切れては繰り返される笑い声

そんな光景を見て、僕は彼女死んだ事実が現実だと受け入れた。

どうしてあの時僕は、彼女に対してあんな安易な言葉をかけてしまったのか。

どうしてあの時僕は、気付かなかったんだろうか。

夢の中と言う現実を。
目覚めないと言う現実を。

これだけ彼女を想い、泣いている人達が居るのに、彼女は1人だったんだ。
52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 12:12:50.03 ID:JmuDwYSLo
ずっと繰り返される夢の中で。

ずっと繰り返し目覚める中で。

友達や、家族と
どれだけ笑おうと
どれだけ泣こうと
どれだけ遊ぼうと
どれだけケンカしようと

全てが結局、夢で済まされてしまう。
全てが結局、目覚めれば終わってしまう。

どうして…

どうして……

どうして………
どうして…………

どうして……どうして……!!

僕はどうして…彼女を……
どうして…僕は……
何もできなかったんだ!
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー

53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 12:14:30.35 ID:JmuDwYSLo
【八月三日 午後六時】

『やあ阿良々木くん、やっと目覚めたのか、待ちくたびれたよ』

コンクリートの硬い床で寝ていた所為なのか、酷い身体の痛みと、酷い頭痛で目が覚めた。

「…ここは」

あまりにも、ありきたりのそんなベタなセリフを真面目に言ってしまった。

八九寺が居たら容赦なくツッコミが入るだろう。

しかしそんなセリフさえ、迷い無く呟いてしまう程、僕の目に飛びんで来た物は、驚きと言うよりは恐怖のそれに近かった。
54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 12:15:37.98 ID:JmuDwYSLo
積み重ねられた勉強机

あちらこちら割れている窓ガラス

埃塗れの壁や床

もちろん此処は僕の家ではない。

僕が春休みの全てを過ごした、皮肉にもどこか落ち着きさえする、あの廃墟。

学習塾跡だった。

そして何よりも、寝ぼけた僕の目が疑って止まなかったのは、積み重ねられた机の上にひょうひょうと座り込み、火のついていないタバコを口にしながらニヤリと笑う、金髪のアロハシャツを着たその男。
55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/11(土) 12:17:59.80 ID:JmuDwYSLo
暦「……ど…どうして、お前が此処に居るだ、忍野!」

忍野「ハッハー!!どうしてなんて酷いじゃないか。
全く阿良々木くんは、相変わらず元気がいいなあ、何か良い事でもあったのかい?」

暦「…お前は確かに、この間、この街から姿を消したじゃないか!」

忍野「へへッ、何を言ってるんだ阿良々木くん、僕はずっと此処に居たよ、ずっとね」

暦「けれど…!」

忍野「それはそうと、阿良々木くん、忍ちゃんは元気かい?」

暦「忍野、それらしい事を言って話を逸らすな!」

忍野「……へッ、まあ仲良くやっている様だね、安心したよ」

暦「……忍野、どうして僕が此処で眠っていたんだ?」

忍野「それは阿良々木くんの方が良く知っているだろう?」

暦「……?」
“ガラガラ”
59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 05:19:19.16 ID:u3lr8NoXo
梓「あっ!阿良々木さん!目覚められたんですね!」

暦「…君は!」

忍野「阿良々木くんが魘されながら寝ていたから、そのお嬢ちゃんがずっと看病してくれてたんだ、お嬢ちゃんに感謝しなよ、阿良々木くん」

暦「そうだったのか…ありがとう…」

梓「いえ…看病だなんてそんな」
60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 05:21:16.76 ID:u3lr8NoXo
暦「で…どうして君が此処にいるんだ?」

梓「…それが…その……」

忍野「全く阿良々木くんはさっきから、誰に対してもそんな質問ばかりだね、記憶喪失にでもなったのかい?僕はてっきり、現代版ドクラマグラを演じているのかと思ったよ」

暦「少ナクトモ僕は自分ガ、阿良々木 暦トイウコトハ、認識シテイル!!」
61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 05:22:58.03 ID:u3lr8NoXo
忍野「阿良々木くん、残念だけれど、ただ無理矢理にカタカナ表示にしただけじゃ誰にも伝わらないよ」

暦(咄嗟にノッてしまった自分が、狂気じみている)

忍野「まぁとにかく阿良々木くん、話はお嬢ちゃんから全部聞いたよ」

暦「えっ…?」

梓「……」

忍野「…フフッ、つまり君達は繰り返す夢の中から脱け出せないんだろ?」
62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 05:23:47.36 ID:u3lr8NoXo
暦「……あぁ…そうなんだ…でも忍野、僕じゃないんだ!ずっと夢から脱け出せないのは彼女なんだ!」

忍野「それはどうだろうねえ、阿良々木くん」

暦「…!?」

忍野「じゃあ話しは戻るけど、どうして僕は今此処に居て、阿良々木くんと話しているんだい?」

暦「…どうゆう意味なんだ……忍野」
63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 05:24:53.98 ID:u3lr8NoXo
忍野「……否、まあ極論から言うと、阿良々木くんの言っている事は間違ってはないのだけれど」

暦「……?」

忍野「阿良々木くんは、夢魔って知っているかい?」

暦「夢魔……(羽川も確かそんな事を言っていたな)」

暦「キリスト教の悪魔かなんかだろ?それがどうかしたのか?」

忍野「へへッ、まあ正確に言えば悪魔ではないのだけれど、分かりやすく言えばそうゆう類かな」
64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 05:26:14.12 ID:u3lr8NoXo
暦「……!?」

忍野「どうしたんだい、阿良々木くん、何かに気が付いた様な顔をして」

暦「まさか忍野、もしかして彼女が夢から目覚められないとゆうのも、怪異が絡んでるのか!?」

梓(カイイ?)

忍野「フンッ、まあ阿良々木くんが、もっと早くにそこに気付いていてくれれば、僕がこうして君の前に現れる必要もなかったのだけれど」
67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:35:02.86 ID:u3lr8NoXo
暦「……忍野、一体どうゆう怪異なんだ?」

忍野「まあ順を追って説明するから、そう焦らないで」

暦「……」

忍野「まず、阿良々木くん、お嬢ちゃんが見ず知らずの初対面の君に、出会った理由がわかるかい?」

暦「それはまあ…僕がただ人違いで声をかけてしまったから…」

梓「……」ジー

暦(何かとても冷たい視線を感じる)
68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:36:33.21 ID:u3lr8NoXo
忍野「それはどうだろうね阿良々木君、君は会うべくして、お嬢ちゃんに会ったんだ、お嬢ちゃんが望んだからね」

梓「そんな事ないです!阿良々木さんは初対面だし、知らない人だし、会うべくしてだなんて…」

暦「そうだよ、忍野!僕らが出会ったのは事故の様なもので、ただの偶然なんだ!」

忍野「偶然と言えば偶然だけれど、この場合は少し違うんだよ、阿良々木くん、それにお嬢ちゃん」
69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:39:04.29 ID:u3lr8NoXo
暦「…どうゆう事なんだ?」

忍野「阿良々木くんは『夢』とゆう言葉を、不思議に感じた事はないかい?」

暦「不思議に…?」

忍野「そう、僕は子供の頃からずっと不思議に感じていたんだ、この言葉をね」

暦「……」

忍野「『夢』と言う言葉は二つの意味があるでしょ?
睡眠中に見る『ユメ』と
覚醒中に見る『ユメ』
ほら、小学生とかの『将来の夢』とかそうゆうの。
僕はずっと不思議に思ってたんだ、この二つがどうして同じ言葉なのか」
70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:41:27.09 ID:u3lr8NoXo
暦「あ、ああ…それなら僕も、何度が疑問に感じた事はあるけれど…」

忍野「なら阿良々木くん、この二つの共通点はわかるかい?」

暦「共通点…?なんだよ一体」

忍野「全く、ダメだなあ、阿良々木くんは。
自分で深く考える前に直ぐに答えを聞くなんて。
だからこの時期になって受験勉強を焦らないといけないんだ」
71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:42:53.12 ID:u3lr8NoXo
暦「うっ…」

忍野「へッ…まあそうだね、答えとすれば、全てが共通点なんだ」

暦「全て?」

忍野「夢は見るもので、そして叶えてくれるものだ。
つまり夢を見れば望みは叶う、見ている間はね」

暦「……!?」

忍野「つまりお嬢ちゃんが夢の中で阿良々木君に出会ったのは、お嬢ちゃんが望んだから。
脱け出せない夢から脱け出す為に、阿良々木くんを望んだ」
72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:44:37.06 ID:u3lr8NoXo
暦「で、でもそれがどうして……僕なんだ?」

梓「……」

忍野「言ったろ?夢から脱け出せないのは原因は怪異だって」

暦「…けれど……それじゃあ尚更、どうして僕なんだよ?!
僕なんかより、忍野!お前を望んだ方が手っ取り早いだろ!」

忍野「…そうだね、だけれど阿良々木くん、君は今、忍ちゃんとリンクしているだろう」

暦「ッ!?」
73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:46:12.30 ID:u3lr8NoXo
忍野「だから、阿良々木くんが、もっと早くそこに気付いていてくれれば、僕がこうして君の前に現れる必要もなかったって言っているんだ。
まあでも、忍ちゃんは忍ちゃんで、気まぐれだからね」

暦「……つまり忍野、彼女が夢から脱け出せない怪異に囚われ、解決を望んだから、忍とリンクしている僕が彼女の夢に現れたって事か?」
74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:48:04.02 ID:u3lr8NoXo
忍野「まあそうゆうことだね」

暦「でも、それじあ………!?」

忍野「やっと気付いたかい?阿良々木くん」

暦「……ちょっと待てよ…忍野…って事は……まさか今も…夢の中……なのか…?」

忍野「へへッ…」

梓「……」

暦「……彼女を救うハズだった僕が、彼女を救えずに絶望して、解決策としと無意識に忍野を望んだってことか…」
75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:52:21.73 ID:u3lr8NoXo
忍野「まあ多分そんな感じかな、お嬢ちゃんの前に阿良々木くんが現れたのも、阿良々木くんの前に僕が現れたのも、全て夢だから成立するんだ。
言ったろ?夢は望めば叶えてくれる、夢を見いる間だけはね」

暦(そうか…彼女に警察に通報されそうになった時、直ぐに羽川が現れたのも、僕が彼女を救えず、ここで目が覚めたのも全て僕が無意識に望んだから、それが叶ったのか)

忍野「理解できたかい?阿良々木くん」

暦「ああ…」
76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:53:01.96 ID:u3lr8NoXo
忍野「けれど本題はそこじゃない、本題の問題はその夢から脱け出せないと言う所だからね」
77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 14:55:40.69 ID:u3lr8NoXo
【八月三日 午後七時】

僕が中野 梓ちゃんに警察に通報されそうな時、羽川がタイミング良く現れたことも。

その羽川と話し終えて、突然目が覚めたのも。

或いは、中野 梓ちゃんのポケットに僕の連絡先のメモが残っていたことも。

そのメモを頼りに中野 梓ちゃんが僕の自宅を探している時、都合良くそこに神原が声をかけたのも。

そして僕の目の前に、突然姿を消したハズの、忍野 メメが居ることも。
その全てが夢だから成立する。
78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/12(日) 15:05:44.15 ID:u3lr8NoXo
夢は望めば叶う。
夢を見ている間は。
夢は飽くまでも夢。

夢から目が覚めれば、現実に戻る。

そして

現実を見れば、夢から目が覚める。
だから、見ている間だけは何でも望みが叶う。

しかしそれはただの夢であり、誰しもが体現できるものである。

問題はその夢から脱け出せないとゆうこと。

『眠り猫』

忍野はニヤけながらそう言った。
84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 02:59:02.94 ID:LJ5krIiVo
暦「眠り猫?」

梓「……?」

忍野「そう、一般的には猫又なんて言われたりするけれど」

暦「猫又ってあの妖怪の?」

忍野「んー妖怪って言っちゃ可哀想だね。
猫又は世間的には、老いた猫が化けて出た物と言われているけれど。
しかし阿良々木くん、老いた猫がどうして化けたのだろうか?」

暦「どうしてって…どうゆう意味だよ」
85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:00:18.04 ID:LJ5krIiVo
忍野「例えば阿良々木くんが年老いて、化けて出たとしよう。
それはどうしてだい?」

暦「それは…化けて出る位だから、多分何かの未練だとかが合ったんじゃないのか」

忍野「そう、怪異とは想いであり願いだ。
老いた猫は、まだ生きたいと願い、猫又となった」

暦「…それが、今回の眠り猫と同じって言うのか?」
86:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:01:39.38 ID:LJ5krIiVo
忍野「フッ、老いた猫がどれだけまだ生きたい、と願おうと、それは無理だ。
寿命には勝るものは無いし、時間は止めれないしね。
そこで、老いた猫は思った、眠りの夢の中で生きればいいとね」

暦「……!?」

忍野「つまりそれが、猫又であり、眠りの猫だ。
恐らくお嬢ちゃんは、現実でなにか『このまま時間が止まればいい』だとか『明日を迎えたくない』だとか、そんな風に願ったんだろね」
87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:02:24.06 ID:LJ5krIiVo
暦「それで…眠り猫に行き遭った…」

梓「…!?」

忍野「…へへッ、まあ本当の所は僕なんかより、お嬢ちゃんの方が良く知っているだろう」

梓「……」

暦「……」
88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:04:30.09 ID:LJ5krIiVo
梓「…私は……私は学校で軽音部に所属していて、部員の先輩達と合宿に行ったんです。

それがとても楽しくて、合宿から帰って来てから、色々思い返しました。

私は二年生で、他の部員はみんな三年生の先輩だけ。

だからその先輩達が卒業したら、私は一人になるって!

先輩達とこんな楽しい合宿も行けないし、練習も、お喋りも何も出来なくなるって!

私は…眠る前に思ったんです。
このままで居たいと。
時間が止まればいいなって。

…すると、私の前に一匹の猫が現れました。

そして私は、直ぐに眠たくなって……夢の中から…脱け出せなくなったんです……」
89:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:06:31.28 ID:LJ5krIiVo
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー

暦「………………」

忍野「ハハハッ!!、それにしても阿良々木くんは、猫が絡む話にはいつも君が絡んで来るね。
そう言えば、阿良々木くんは猫耳萌えだったっけ?」

暦「忍野、僕は好きで猫類いの物に絡んでいる訳ではないし!僕はお前に猫耳萌えなんて自称した憶えはない!」

忍野「猫耳萌えなのは、否定しないんだね」
90:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:07:43.11 ID:LJ5krIiVo
暦「…そ、そんな事より、忍野!彼女は助かるのか!夢から脱け出せるのか?」

忍野「そうだね、まあお嬢ちゃん次第かな。
別にこのまま夢の中で生きたいなら、そのままでも構わないしね。
なんたって望んだモノは全て叶う世界だ、先輩ともお別れしなくても済むしね」
91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:09:26.88 ID:LJ5krIiVo
暦「お、おい!忍野!」

忍野「どうする?お嬢ちゃん?」

梓「……助けて…助けてくれるんですか?」

忍野「助けない。
君が勝手に助かるだけだよ、お嬢ちゃん」

梓「……なんだってします!
だから…夢から脱け出せる方法があるなら教えて下さい!お願いします」

暦「……」
92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:10:41.69 ID:LJ5krIiVo
忍野「…フンッ、わかった、手を貸してあげよう」

梓「ありがとうございます!」

忍野「と言っても、今回僕は何も出来ないんだけどね」

梓「えっ…」

暦「どうゆう意味だ?忍野」

忍野「夢から脱け出す方法は一つ。とっても簡単だ。夢なんだから目覚めれば良いんだよ」

暦「それができないから、困ってるんだろ!」
93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:11:32.84 ID:LJ5krIiVo
忍野「それはどうかな阿良々木くん、お嬢ちゃんが本当に全てを受け入れて夢から脱け出したいと願えば、目覚めるさ」

暦「えっ」

梓「……」

忍野「怪異は求められたから、与えただけだ」

梓「……」

忍野「さあ、言ってごらん。お嬢ちゃん、本当の気持ちを」
94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:18:51.38 ID:LJ5krIiVo
梓「…ゴメンなさい」

暦「…!」

梓「ゴメンなさい、怖かったんです…一人になるのが、先輩たちと離れるのが…」シクシク

梓「だけど…もう……大丈夫です」シクシク

梓「ずっと先輩たちと一緒に居られないのも、私がいつか一人になるのも、全部現実だから……受け入れないといけない」グスン…グスン…。

梓「先輩達が卒業するのも…私がいつか一人になるのも、全て受け入れます」シクシク

「明日から、過ぎて行く…毎日を受け入れます」シクシク

梓「だから…だから!お願いします!」グスン

梓「もう目覚めさせてください!」
95:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:19:48.82 ID:LJ5krIiVo
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96:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:21:35.46 ID:LJ5krIiVo
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー

しばらく彼女は泣きながらき、祈り続けた。

ずっと…

気が付けば彼女の体は、徐々に光と共に消えていった。

忍野曰く、今回の件は、戦場ヶ原のそれと同じらしい。

怪異と向き合い
自分と向き合い

本当の気持ちを祈り
本当の気持ちを伝える。

それができれば
怪異は去って逝く

それができれば
目覚める事が出来る。
97:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:22:56.74 ID:LJ5krIiVo
全く、僕は夢の中まで忍野に頼ってしまった。

そして、忍野は夢の中まで僕を見透していた。

最後に忍野が僕を見て、ニヤリと笑う。

『じゃあね、阿良々木くん』
98:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:24:38.86 ID:LJ5krIiVo
【八月三日 午後一時】

後日談
とゆうか前日談

前日談
とゆうか今回のオチ

オチ
とゆうか夢オチ…

そう夢オチ…

漫画やアニメなどのフィクション作品で、もっともタブーとされている物語の終焉の形。
99:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:25:36.02 ID:LJ5krIiVo
忍野には
『阿良々木くんらしくて、良いじゃない』
と、言われてしまった。

夢オチが僕らしいとは、どうゆう意味だよ。

まあ、あれも夢だけれど。

ちなみに僕は今この現在が、夢ではない、という絶対的な判断ができている。

本来なら夢かどうか確認を取る方法は、頬をつねったりして

その痛みで、夢か現実か判断するといった方法論がある。
100:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:26:39.19 ID:LJ5krIiVo
しかし、僕の場合は違った。

目覚めた瞬間に
『間違いなく、これは現実だ』
と感じた程のものだった。

何故なら、僕が目覚めた瞬間に頬の内側に激痛が走ったからだ。

もちろん、頬の内側なので、つねることなんて出来ないし、
ましてや、そこから大量に血が流れ出ていた。
101:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:30:14.91 ID:LJ5krIiVo
そう、僕の目覚めたのは戦場ヶ原の家。

僕が居眠りをしている間に、口の中に仕込まれたカッターナイフの替え刃が、僕が目覚めると同時に、僕の口の中を無作為に抉り裂いた。

アイツは夢の中でも、現実でも、やること変わらねえのかよ!

いやむしろ、現実の方が酷い目にあったよ!

全くどんな正夢だ!
102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:31:33.13 ID:LJ5krIiVo
ともあれ、それのおかげで、今が現実だと確認が取れたのだ。

そして今、正に正夢の如く、戦場ヶ原の家から歩いて帰宅している最中だ。

そうそう
この辺りで…あの子に会ったんだよなあ。

そんな事を考えて歩いていると、目の前に見憶えのあるツインテールがひょこひょこと揺れていた。

まさか…な?

ははっ、そんな訳ないか…

僕がそのツインテールの少女の横を、黙って通り過ぎると、その少女が僕に静かに声をかけた。
103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:32:35.09 ID:LJ5krIiVo
梓「あ、あの!」

そう聞こえた気がする。

僕はさっき見たその夢を、色々と思い返しながら振り向くと、そこには夢に出てきた少女が居た。

梓「あの、間違っていたらゴメンなさい!何処かでお会いした事ありますか?」

彼女は不思議そうに、けれど、どこか嬉しそうに僕にそう言った。
104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:35:12.45 ID:LJ5krIiVo
暦「…いいや、たぶん、人違いだと思うよ」

僕はそう答えた。

飽くまで夢だから。
飽くまで夢の話に過ぎないから。

睡眠中に見る夢も
覚醒中に見る夢も

どちらも

現実に目を向ければ
目が覚める。

目が覚めるれば
現実にもどる。
105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:36:18.71 ID:LJ5krIiVo
彼女はもう目が覚めている。
彼女はもう現実を見ている。

だからもう、わさわざ夢を掘り返す必要などないのだ。

少なくとも彼女は特に
『ただの夢だった』
そう済ませば良いのだから。

梓「そうでしたか…失礼しました!」

彼女は僕に一礼し、僕を追い越し走り過ぎて行った。
106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:38:39.76 ID:LJ5krIiVo
暦「ぁ、あっ!ちょっと待って!」

梓「……?」

僕の突然の呼び止めに彼女は、走り出しの脚を止めて、僕の方に振り向く。

暦「あ、あのさ、その、軽音部…、頑張れよ」

梓「えっ?あ…、あ、はい!ありがとうございます!」
彼女は不思議そうに
けれど
どこか嬉しそうに僕にそう答えてくれた。
107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank):2011/06/13(月) 03:40:23.72 ID:LJ5krIiVo
おしまい

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