【 ドラゴンボール・クロスSS】ベジータ「ハルヒ達と孤島に夏合宿することになった」

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:19:40.77 ID:QcoJ3gSV0

前回 「惑星ベジータ出身!サイヤ人の王子ベジータだ!」ハルヒ「」

ここまでのあらすじ

常識を学ぶためにと高校に通うことになったベジータ。
宇宙の帝王を倒したり、神様が助けを求めにきたり、人類が地球ごと消滅することもない日常系。
※ベジータ……娘のブラが可愛くて仕方がない。ついでに親の気持ちが痛い程解るようになった。

2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:21:11.73 ID:QcoJ3gSV0
夏休みとなった。ようやくブルマ達と過ごせる日々がやってきたのだ。

古泉から習ったオセロとやらでブラと遊んでいたオレにブルマが声をかけてきた。

「ねぇ、そういえばそろそろ合宿じゃないの?」

「が、合宿?いったいなんのことだ?」

実は学期末にハルヒが古泉の用意した島で三泊四日の合宿をすると言っていたのだ。

家族との団らんを重視しているオレは、もちろんそんなくだらん行事は無視することに決めていた。

「部活動の合宿よ!悟天くんから聞いたのよ。まさか忘れていたんじゃないでしょうね?」

くそっ!悟天のヤロウ余計な真似をしやがって!!

「それでいつなの?旅行鞄とか持ってないんだし、そろそろ買わないと………」

「……今日だ」

「え!?なにが?」

「だから今日がその合宿の日なんだ」

「ちょっと!今からじゃ間に合わないじゃない!!」

「ああ、そうだな。仕方がないから今回の合宿は諦めて家で過ごすことにするぞ」

「諦めるなんてねえだろベジータ!!」

「カ、カカロット!!」

いつの間にかカカロットのヤロウがいやがった。

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:22:38.27 ID:QcoJ3gSV0
「あら、孫くんじゃない何か用?」

「よう、ブルマ!悟天の奴がさ、『ベジータさんが着ていないから様子を見てきてください』って言うもんだからよ」

くそっ!!またしても悟天か!!

「ベジータなら飛べばすぐ着くだろ?」

カカロットが平然と言ってきた。

「ふん!残念だったな!ブルマにあいつらの近くで飛ぶのは禁止させられてるんでな」

「……事情が事情だけに今回は飛んでもいいわよ。ただし、あんまり見られないでよね」

「だってよ!よかったなベジータ!」

「だ、だが着替えも何も用意していないぞ!!」

「でぇじょうぶだ!!それはオラが後で届ける!」

「良かったわね、ベジータ!持つべきものは友達よね」

「うるせぇ!!カカロットのヤロウと友達になった憶えはねえ!!」

「パパ、喧嘩してるの?」

ブラが心配そうに声をかけてきた。

「い、いや!そんなことはないぞ!!パパたちは仲良しだからな!」

「じゃあ、仲良しのお友達を信頼して行ってらっしゃい」

「くっ!!」

ブルマに強引に送り出されてしまった。

ブラを抱きしめたのち、待ち合わせの港のフェリー乗り場に向かってオレは飛び去った。

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:23:18.93 ID:QcoJ3gSV0
フェリー乗り場は流石に人が多いので、適当な場所に降り立ち歩いて合流した。

他の連中は既にきていた。

「ベジータ遅い!!遅刻!!」

ハルヒはオレを見るなり声をかけてきた。

「ああ、サボる気だったからな」

「ちょっと!何を堂々と言ってるのよ!!」

ハルヒはそこまで言ってオレが手ぶらできていることに気が付いたのか、

「あんた着替えとかは?」

と、心配そうに聞いてきた。

「うるせぇ!説明するのも面倒だ。てめぇで考えやがれ」

「……ってあんたねぇ!!」

「あの船に乗るんだろう?愚図愚図してたら出てしまうぞ」

「ちょっと!!あんたが遅刻してきたから時間がギリギリなんでしょ!!なんで一番に乗り込もうとするのよ!!」

オレは喚くハルヒを無視して船に乗り込んだ。

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:24:05.32 ID:QcoJ3gSV0
船中、オレは気になったことがあったので悟天に聞いてみた。

「おい!その鞄の中の奴は誰だ?」

「へ!?嫌だなぁ、着替えとか歯ブラシとかそんなのですよ」

悟天は妙なことを言われたといった表情をしたのち、まさかといった表情となり鞄を開ける。

「ばぁ!」

悟飯の娘であるパンが出てきた。

「す、すいません!!!」

悟天が謝っている。

「来たがっていたのを断ったのですが……いつの間にか…」

そんな手があったとは!オレもブラを連れてくれば良かったと激しく後悔した。

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:24:35.01 ID:QcoJ3gSV0
ハルヒ達とパンが仲良く遊んでいるのを眺めているうちにフェリーは目的地に到着した。

フェリーを降りると新川という執事と森というメイドが出迎えた。

二人はオレ達に挨拶を済ますと「こちらです」と新たな船に案内する。

飛べばすぐに済むのにめんどくせぇ連中だぜ。

もっとも、朝比奈やハルヒ達は喜んではしゃいでいるようだからまだいい。

この様な移動にも意味があるのだろう。

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:25:11.64 ID:QcoJ3gSV0
船が進むと一軒の洋館が見えてきた。

「別荘でございます」

はしゃぐハルヒに新川とか名乗ったジジイが説明している。

船が波止場に着くとこの館の主人である多丸圭一とその弟の裕が出迎えた。

古泉と親しげに話し、古泉がオレ達の紹介をしていた。

めんどくせぇ野郎どもだ。

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:26:03.90 ID:QcoJ3gSV0
館の部屋割りは決まっていた。

オレは悟天と同室らしい。

「おい。この部屋割りは何なんだ」

「何か問題がありますか?」

古泉が不思議そうに聞いてくる。

王子であるオレが下級戦士であるカカロットの息子と同室とか、コイツは嘗めてやがる。

「オレは個室だ」

「そう言われましても……」

もう一つの事に気が付く。

「それとパンは悟天と同じ部屋にしやがれ」

パンが変な事を言ってしまっては台無しだからな。

「いえ、ですから……」

「それではオレは寝てくる。飯が出来たら呼びに来い」

愚図愚図言ってる古泉を無視してオレは部屋に向かった。

後ろでハルヒが「ちょっと!!海で遊ぶ予定なのにどうするのよ!」なんて叫んでいるが知ったことでは無い。

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:26:34.21 ID:QcoJ3gSV0
夜となり、メイドがオレを呼びに来た。

「あの……晩御飯ができましたが」

「………」

オレは無言で部屋を出た。

晩御飯は驚くほど少なかった。成長期のガキどもが多いのにここの主人は何を考えてやがるんだ?

まして、ガキどもに酒まで出してやがった。ぶっ殺しておくべきなのか悩んだ。

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:27:06.19 ID:QcoJ3gSV0
そして深夜、ドアの向こうに気配を感じた。

「悟天か?」

「あ、はい。ちょっといいですか?」

用事の予想はつくがドアを開ける。

「あの……パンが愚図っちゃって………」

悟天はパンの手を引きながら困り果てた様子だった。

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:27:32.87 ID:QcoJ3gSV0
「飯が少なかったからな。大方、空腹で眠れないんだろう」

「やっぱり、少なかったですよねー。僕もお腹が空いちゃって」

「……ついて来い」

オレは悟天たちを先導して厨房に向かった。

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:28:37.76 ID:QcoJ3gSV0
「好きなだけ喰え」

厨房に着いたオレは悟天達に飯を勧めた。

「えっ!?いいんですか?」

「腹が減ってるんだろう?」

「ええ……まぁ、そうですけど」

「こういうところの食い物は勝手に補充されるんだ」

「そうなんですか?」

「ああ。少なくともブルマの家はそうだ。オレが何時冷蔵庫を覗いても満載だからな」

この星は妙な部分の技術が異様に発達していると毎度のことながら感心するぜ。

「そういうことなら、遠慮なく食べちゃいますね」

冷蔵庫を漁る悟天とパンを見ながら、オレは台所に置いてあったパンを食べた。

もちろん、食物的な意味でだ。

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:30:05.66 ID:QcoJ3gSV0
「よう!ベジータ」

オレがハムの塊を齧っているとカカロットの野郎がやってきた。

「随分と遅かったな」

「いや、わりぃ、わりぃ。パンが居なくなったとかで大騒ぎになっててよー」

そのパンはというとカカロットに会えて嬉しいのか抱きついていた。オレも早くブラに抱きつかれたいぜ!

「そうか。小さな子が急に居なくなったら騒ぎにもなるな」

勤めて平静にオレはそう言って悟天のケツを蹴り上げた。

「痛っ!!なにをするんですか!!」

「てめぇがパンを無断で連れ出したから騒ぎになったんだ」

「連れ出したんじゃなく、勝手に……」

「うるせぇ!ぶっ殺されてぇのか!」

「まぁまぁ。そんなに怒んなって。騒いでたのはほとんどがミスターサタンなんだしさ」

カカロットは冷蔵庫にあった鳥のモモ肉を咀嚼していた。

勝手に食うとは非常識なヤロウだぜ。やはり下級戦士は躾が出来ていない。

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:32:19.28 ID:QcoJ3gSV0
突然に窓が破られた音がした。

「お!ここに居たのか」

「なんだ。ブウじゃねぇか」

音の原因はブウのヤロウだった。

「サタンに言われてパンを探しに来た」

「サタンも心配性だなぁ」

カカロットのヤロウは娘を持ったことがないから、オレやサタンの気持ちはわからないのだろう。

「パンは悟天が連れてけぇるってサタンに伝えといてくれよ」

「わかった」

「ブウも食って行けよ」

カカロットのヤロウが勝手にブウを誘う。相変わらず勝手なヤロウだ。

「おう。そうするぞ」

ブウもそう返事をすると遠慮なくケーキを一気に飲み込んだ。

ふざけるな!!あれはオレが目を着けていたんだぞ!!クソッたれ!

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:33:02.89 ID:QcoJ3gSV0
「ふぃー食った、食った」

カカロットは満足気に腹を擦る。かく言うオレも満腹だ。

「お腹が一杯になったのかパンも眠そうです」

悟天はパンに膝枕をして頭を撫でていた。

「それじゃあ、オラとブウはもう帰るな」

悟空はブウと共に瞬間移動で立ち去った。

そこでオレはあることに気が付いた。

カカロットのヤロウ、荷物まで持ち帰りやがった!!

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:34:02.56 ID:QcoJ3gSV0
翌朝、ハルヒの怒鳴り声が館内に響いた。

「事件よ!事件よ!」

そう大声を出しながらドアを叩く。

「なんだ?フリーザでも復活したか?」

「そうよ!フリーザーが荒らされたのよ」

「フリーザが荒らされた?」

「ううん。フリーザーだけじゃないの厨房にあった食べ物が全部なくなってるの」

よくわからないままに、厨房に連れて行かれた。

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:34:39.16 ID:QcoJ3gSV0
「これは……どうなってやがる………」

オレが目にした厨房は窓は破られ、冷蔵庫は解き放たれているだけでなく、そこらに食い物の残骸が転がっている有様だった。

「アルコールの類を残してほとんどの食糧が失われてしまっています」

古泉にしては珍しく深刻な顔だ。

「あたし思うんだけど、窓が破られてるから、狐とか狸が食べていったんだと思うのよ」

ハルヒが腕を組み、自慢げな推理をしている。

だが、そんなことはどうでもいい。

「くだらねぇことを言ってねぇで、さっさと朝飯を用意しやがれ!」

オレは連中を一喝してやった。

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:35:10.76 ID:QcoJ3gSV0
「ですから食料がなくて朝食を用意できないのです」

古泉が心底困り果てた様に返答してきた。

「ふみゅ~……朝ご飯はなしですかぁ~」

朝比奈が寂しそうに呟く。

育ちざかりのガキに朝食抜きはキツイだろう。まして、昨日の夕飯も少なかったんだ。

「おい!ここの主はどこだ‼」

補充を怠った責任者を追及しようと古泉に問い質す。

「え!?田丸氏ですか?二階の奥の部屋ですが……」

「オレ様に任せろ」

オレは胸に親指を当てて宣言した。

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:36:10.21 ID:QcoJ3gSV0
「ちょっと!!あたしを差し置いて勝手に行くな!!」

「べ、ベジータさん!ちょっと落ち着きましょうよ」

ハルヒは文句を言うし、悟天は何故かオロオロとしているが、そんな事は知ったことか。

二階に上がると悟天が俺の前を行き、先にドアの所に行った。

「あ!ドアの鍵がかかってるみたいです。起きてくるまで待ちましょうよ。そうしたら少しは頭も冷えますし……」

悟天は何故かオレを宥めるかのように言ってくる。

そんな悟天に構わず、隣の部屋のドアを蹴破った。

「ちょっと!あんた何をしてんのよ!」

オレはハルヒの抗議に構わずに部屋に入ると、当のハルヒもついてきた。

そしてパンチ一撃、壁をブチ破った。

「凄い!!今のって壁ドンよね!あたし、ちょっとドキッっとしたわよ!!」

ハルヒが興奮気味に後ろで喚いているが、構わずに壊れた壁の向こうに呆然と立っていた屋敷の主の胸ぐらを掴んだ。

「おい!さっさと食い物を補充しねぇか!」

「く、食い物って…君は一体何を言ってるんだい?」

と、ドアが破られた。

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:37:15.35 ID:QcoJ3gSV0
「ベ、ベジータさん!!乱暴は止めましょうよ」

ドアを破壊して侵入してきた悟天がオレにそう言う。

朝倉が家に来ていた時もドアを破壊して部屋に入ってきていたし、カカロットのヤロウはこいつにドアの開け方を教えてないのか?

オレが呆れていると悟天と共に入ってきた古泉がオレが掴んでるヤロウに説明を始めた。

「実は厨房が荒らされまして、ほとんど食べ物が無いのです」

「そんな!君たちが来るし、嵐も近づいているとかで一か月分以上の食料は置いていたはずだよ!?」

「うるせぇ!!そんなことはどうでもいいんだ!!さっさと食料を補充しやがれ!」

言い訳を続ける田丸とかいうヤロウを一喝してやった。

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:38:13.07 ID:QcoJ3gSV0
「申し訳ございません。嵐が近づいている所為で船を出せないのです」

新川とかいう執事が謝ってきた。

「それがなんの関係があるんだ?」

「ですから、船が出せないので、食料の補充が出来ないのです」

「な……まさか………」

オレが恐怖していると悟天が失望の声をあげた。

「ええ~!?じゃあ朝食は抜きですか~?お腹がペコペコなのに……」

能天気な悟天に呆れる。

「本当の地獄はこれからだ……」

悟天に現実を教えてやる事にした。

「……いいか。嵐が止むまで飯が無いってことだぞ」

「ええーー!!まさか今日一日中とか!?」

「下手をすれば明日もだ……」

オレの考えを聞き、悟天の顔が恐怖に彩られる。

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:38:53.26 ID:QcoJ3gSV0
「あの~なにを深刻な顔をしてるんですか?」

朝比奈みくるが何かを食べながら、話しかけてきた。

「食い物が無い話だ……」

「それでしたら災害時用の保存食がありますのでご安心を」

朝比奈と一緒にやってきたメイドが冷静に答える。

「そ、そうか」

一安心したオレだったが、見せられた食い物の量はとてもじゃないが一食分にも満たなかった。

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:39:39.51 ID:QcoJ3gSV0
「これだけあれば、この人数でも二日か三日なら持つと思いますのでご安心ください」

メイドが微笑みとともに安心させようとする。

足りないのは誰の目にも明らかだろうに。

「そうね!これだけあれば問題なさそうね。遭難したみたいで面白そうじゃない」

ハルヒもメイドに続く。コイツは部長らしいから他の連中を安心させようとしているのだろう。

普段は好き勝手しているようだが健気だ。ブラにもこう育って欲しいものだ。

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:40:16.74 ID:QcoJ3gSV0
「でも、どうして食べ物が無くなったのかしら?動物かと思ったけど、毛とかも落ちてないし……泥棒?」

ハルヒが不安を抱かせない様に話題を逸らす。

「いえ、ここは孤島ですし、それは無いと思います。仮に侵入者がいたとしても一人、二人では持ち出すのは不可能です。それに食べ物だけを盗むというのも納得できません」

古泉がハルヒに説明する。確かに不可解だ。オレ達が食べた後に補充された食料を食ったヤロウは誰なんだ?ぶっ殺してやる。

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:40:57.42 ID:QcoJ3gSV0
「それじゃあ、やっぱり動物なのかしら?」

「でも、椅子を使った後がありますよ?」

「それじゃあ、人間ね。もしくは宇宙人」

堂々巡りを朝比奈に阻止されたハルヒは新たな考えを発表した。

「うん。そうよ!宇宙人に違いないわ!食べ物に困った宇宙人がここに来て食事して帰ったのよ。そして余った分はお土産に持ち帰った!それに決まってるわ」

奇遇にもオレの結論はハルヒと同じだった。

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:41:39.28 ID:QcoJ3gSV0
「悟天!ちょっと来い」

「えっ!?あ、はい!」

「あの、朝ご飯はいらないのですか?」

保存食の乾パンを咥えた朝比奈がオレ達に聞いてくる。

「ちょっと、食べ物を調達してくる。オレ達の分は……長門、お前が食っていいぞ」

長門が意外に大喰らいだったことを思い出した。

「……感謝」

長門の礼を受けながらパンにも声をかける。

「……パンも来い」

「は~~い」

「ちょっと!嵐の中に子供連れ出してどうするのよ」

ハルヒの抗議を背に受けて館の外に出た。

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:43:28.78 ID:QcoJ3gSV0
「あの、どうしたんです?」

外に出るなり、朝食にありつけずに不満げな悟天が聞いてきた。

「今から街に行って買い物をしてくるぞ」

「ええっ!?この人たちの近くじゃ飛んじゃダメって言われてませんでした?」

「今回は特別に飛んでいいらしい」

「そうなんですか?よかった~。あの量じゃ足りないし、どうしようかと思ってたんです」

「事情が事情だけにな」

そしてパンの頭を撫でて、

「カカロットから聞いてるぞ。鍛えてるらしいな、ついて来い。荷物持ちだ」

女でも鍛えなければならない下級戦士の境遇に同情しつつ、オレ達は飛んで行った。

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:43:59.10 ID:QcoJ3gSV0
「しかし、変な話ですね」

道中、悟天が聞いてきた。

「ベジータさんの話だと、食べ物は自動で補充されるんでしょ?」

「ふん。こんな簡単な話もわからないのか?」

「ベジータさんにはわかったんですか!?」

下級戦士の息子が驚いていやがる。

「あれだけの量の食糧をオレ達に気づかれずに食えたり、持ち出せると思うか?」

「それは無理ですよ~」

「ああ、無理だろうな。……普通の地球人なら」

「それってまさか………」

「オレ達にはあの量の食糧を食いきれる連中に心当たりがある」

「それって……」

「ああ。サイヤ人だ。サイヤ人の胃袋に常識は通用しないからな」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:44:45.50 ID:QcoJ3gSV0
「で、ですけど……サイヤ人って言っても僕もベジータさんもお父さんもパンもあの場にいたじゃないですか」

悟天が狼狽える。

「ふん。要するにアリバイって奴だな。勿論、オレ達にはあの後に補充された食い物を食べることなんかできないし、食う気もなかっただろう」

「え、ええ。結構お腹が一杯でしたし」

「だが、他にもサイヤ人は居るだろ?」

「まさか……」

「ああ。悟飯にトランクス、……それにブラだ」

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:45:50.28 ID:QcoJ3gSV0
「いったい、なんのために………」

驚き、戸惑っている悟天にネタばらしをしてやった。

「偶然にもサイヤ人が一堂に会することがあると思うか?」

「ちょっと、考えられません」

「ブルマだ。もしかしたらカカロットのヤロウも一枚噛んでいるかもしれんがな」

「ブルマさんとお父さんが!?」

「カカロットの瞬間移動でブルマ達を連れてくるだろ」

「はい」

「そして食事会だ。悔しいがカカロットのヤロウはナンバーワンだ。あと後も食べれたかもしれない。それでも残ればブルマがホイポイカプセルとやらで持ち帰ればいい」

「確かにそれなら消えた食料の説明ができますね」

「その後は補充出来ない無いようブルマが細工する。帰りはカカロットの瞬間移動」

「なるほど!それなら補充が無かったことも、僕たちが気が付かなかったことも説明できます。流石はベジータさんです」

「下級戦士の息子とはいえ、てめぇももう少し頭を使いやがれ!」

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 04:50:06.39 ID:QcoJ3gSV0
「そ、それよりもブルマさんは何の為にそんなことを……」

「そもそも、今回は飛んでいいと言った時点で仕込んでいたんだ。飛べば食料が調達できるからな。大方、食い物がなくなってもオレが怒らないか試したんだろう。今のオレ様はその程度の事で心は揺らがないがな。おい、街が見えたぞ」
そして食料以外にもオレの着替え等を買い終えた後に、仙豆も調達した。

荷物が多すぎると流石に不自然だから、俺達は仙豆を一粒食べて島での空腹に備えることにしたのだ。

食い物を持って帰ったオレ達にハルヒが「どうやって調達したのよ!」なんて喚くものだから、「説明するのも面倒くせぇ!てめぇで考えやがれ!」と自分の頭で考え、推理する楽しみを教えてやった。

もっとも、悟天のヤロウが「えっと……泳いで」等と嘘をいうものだから、「あんたたちオリンピックに出れるわよ!」などと台無しになっていたが。

ともあれ、合宿は無事に終わり、オレはブルマやブラ、トランクス達の待つ家へと変えることが出来た。

孤島にサイヤ人襲来症候群(了)

35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 20:30:46.59 ID:QcoJ3gSV0
夏休みとなり、オレは充実した毎日を過ごしている。

重力室でトレーニングをし、トランクスに稽古をつけてやり、ブラと遊び、ブルマと過ごす。

しかし、その完璧な日々も終わりが近づいてきていた。

八月が終わる。そう夏休みが終わってしまうのだ。

延々と八月を繰り返せれば、どれほど素晴らしい事だろうか。

オレがそんな風に悩んでいると、メイドロボットがオレを呼びに来た。

「ベジータサマ。オキャクサマデス」

「客?誰だ?」

「ドウキュウセイトオッシャッテイマス」

ハルヒ達だろうか?とりあえず、表に出てみる。
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/02(水) 20:31:16.89 ID:QcoJ3gSV0
「こんにちは。ご無沙汰しております」

笑顔で挨拶してきたのは古泉だ。朝比奈と長門もいる。

「何の用だ?」

「一日でいいので涼宮さんと遊んで頂けないでしょうか?」

「ふざけるな!何でオレが家族との時間を犠牲にしてハルヒと遊ばなければならないんだ」

外に出て正解だった。こんな会話をブルマに聞かれたら、「折角なんだから行きなさいよ。あんたが遊びに誘われることなんて滅多にないんだから」とでも言われただろう。

「一万五千四百九十七回」

オレが家の中に戻ろうと背を向けると、長門が抑揚のない声で呟いた。

「それだけのシークエンスが行われた」

長門は何を言っているんだ?

「あの、一万五千四百九十八回目の今回でようやくベジータさんに行きついたんです。お願いします。涼宮さんと遊んであげてください」

朝比奈が涙目になりながら訴え出る。

「ベジータさんと夏休み中に一回くらい遊びたいと涼宮さんが思っているのです」

古泉はそう言うが、合宿に行ったし、それが一万五千回とやらとどう関係があるんだ?

「涼宮さんを満足させないと、このループから抜けられないのです。そして、次回もベジータさんにまで到達できるかもわかりません」

三人の表情は真剣そのものだった。

なんで、こんなくだらない妄想を垂れ流すんだ?

そして気が付いた。こいつらはハルヒをダシにしているだけだ。当のハルヒがここに居ないのが何よりの証拠だ。

長門も朝比奈も孤児だ。オレを父親と見做して、夏休みの家族の思い出って奴が欲しいのだろう。

クソッ!オレは自分の家族の事ばかり考えていた。

「そこまで言うのならいいだろう。付き合ってやる」

「ホントですか!」

朝比奈みくるが目を輝かす。やはりオレの予想は当たっていたのだろう。

「ただ、一個条件がある」

「条件ですか?」

古泉が表情を崩さずに聞いてくる。

「ああ、朝倉も呼んでやれ」

あいつも親がいないしな。

「了解した。朝倉涼子へは私の方から連絡をしておく」

長門が事務的に返事した。
古泉のジェットでハルヒの元へ向かった俺達は、夏祭りという奴に行った。

ハルヒ達は金魚掬いとかいう下らねぇ遊びを嬉々としてやっていた。
そして九月となり夏休みが終わった。さらば我が家族との日々。

エンドレスじゃないエイト(了)

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/06(日) 01:45:25.58 ID:t8FLeGco0
ある日のことだった。

家で悟天を鍛えてやってると、奴の携帯電話が鳴った。

「てめぇ!!携帯の電源ぐらい切っておきやがれ!」

「す、すいません!!謝ってから直ぐに切ります」

悟天は慌てて携帯電話に応じる。

「ご、ごめんなさ……」

チッ!黙って切りやがれ!オレが悟天のヤロウを苦々しく思っていると悟天の顔色が一気に変わった。

「た、大変です!朝比奈さんが誘拐されたそうです!」

「なっ……」

オレは悟天から携帯電話を奪い取る電話口に向かって怒鳴った。

「おい!どうなってやがる!」

『ちょっと!急に代わって怒鳴らないでよ!』

電話をかけてきたのはハルヒだったようだ。

「うるせぇ!さっさと説明しやがれ!」

『こっちが聞きたいくらいよ。ワンボックスカーが停まったと思ったら、みくるちゃんが車にいきなり連れ込まれちゃったんだから』

「チッ、役に立たないヤロウだ!」

オレはそう言って悟天の携帯電話を握りつぶした。

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/06(日) 01:49:14.29 ID:t8FLeGco0
「ああ~僕の携帯……ようやく買い直したのに………」

「おい!何をメソメソしてやがる!さっさと行くぞ」

携帯電話の残骸を前に膝をついている悟天に発破をかける。

「へっ!?行くって?」

「朝比奈の所に決まってるだろ」

「あ!朝比奈さんの気を見つけなきゃ!気が小さくて探しにくいんですよね~」

こんなに狭い範囲ですら探さないといけないとは所詮は下級戦士の息子だな。

「……すでに見つけてある。ついて来い」

「もう見つけたんですか?流石はベジータさんだなぁ」

「飛んでいる所を見られても良い様にスーパーサイヤ人になっておけ」

オレは悟天のおべっかを無視して指示を出すと一路朝比奈の気配がする場所に飛んで行った。

41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/06(日) 01:49:58.36 ID:t8FLeGco0
朝比奈の気配は走行中の車からした。

「あのワンボックスカーですね」

横を飛ぶ悟天が確認してきた。

「ああ。オレがドアを引きはがすから、お前は朝比奈を助け出せ」

「わかりました」

「後はオレが連中を倒すから、朝比奈達への言い訳はお前が考えろ」

「言い訳ですか?」

「俺達が飛べることもサイヤ人であることも知られてはダメなのだからな」

「ええ~~!!それってベジータさんの方が絶対楽じゃないですか!」

「うるせぇ!金色の戦士が助け出したとか適当に説明しやがれ!とっとと助けるぞ!」

喚く悟天を無視して、車の後部ドアを引きはがした。

と、同時に悟天が侵入する。

間を置かずに悟天が朝比奈を抱きかかえて車から脱出するのを確認すると、オレは車のスライドドアを蹴り上げて、近くの山中に誘拐犯諸共追いやった。

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/06(日) 01:50:31.65 ID:t8FLeGco0
「これで一件落着ですね」

スーパーサイヤ人を解いていた悟天が着地すると共に気楽な事を言っている。

「まだだ」

そんな悟天の相手もほどほどにオレは落下地点に向かった。

連中はなぜ、朝比奈を誘拐したのだろう。

あいつは孤児でそんなに金があるとも思えない。

もしかしたら、多額の遺産を受け取っているかも知れないが、こんな田舎の地味な学校にいることから考えるとそれは少し考えにくい。

なにせ靴下の布代を節約して丈が短いのを履くくらい貧乏なのだからな。

そして、無差別に誘拐をするならもっと小さな子供の方が手間もかからない。

要するに金銭目的ではなく、朝比奈みくるそのものが目的だったのだろう。

朝比奈みくるに用事とは?

そう、乱暴目的に違いない!

オレは軽く歯ぎしりをすると誘拐犯の元に急いだ。

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/06(日) 01:50:59.80 ID:t8FLeGco0
山中では、朝比奈とそう年齢が変わらない男女二人が這う這うの体で車から脱出している所だった。

女まで乱暴に加わるとはふざけた世の中だぜ!

「おい!ヘンタイども!!」

オレは上空から連中に声をかけた。

オレに気が付いた二人は驚愕の表情を浮かべる。

二人とも見た目は悪くない。別に乱暴などしなくても相手には困らないはずだ。

おそらく、こいつらは乱暴でないと興奮できない性癖を持つヘンタイカップルなのだろう。

こいつらは以前から繰り返してきただろうし、ここで見逃しても同じことを繰り返すに違いない。

その被害者は未来のブラのなのかも知れない。

「……少し話を聞いてくれ」

男の方が何か言っている。

「ビッグバンアターーーック!!」

無視してビッグバンアタックを叩きこんでおいた。

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/06(日) 01:51:28.32 ID:t8FLeGco0
エピローグ

家に帰ると悟天がテレビを見ていた。

「おかえりなさ~い」

そんな悟天がオレに気が付き挨拶をしてくる。

「朝比奈さんですけど、あの後涼宮さんに電話をして、『わたしを友達と見間違えて誘拐ドッキリを仕掛けちゃったそうです。すぐに解放されました安心してください』なんて説明してましたよ。なんで嘘を言ったんですかねぇ?まぁ、僕としては助かりましたけど」

悟天は間抜けな笑顔を浮かべながら後頭部を掻いている。

乱暴されそうだったなんて言いたがる奴なんていないだろう。

「それよりも……これってベジータさんですか?」

悟天がテレビ画面に目をやる。

そこでは山が消滅したとか言っていた。あの程度でもニュースになるのか!?

「おい!ブルマには言うなよ!」

「これだけ騒ぎになっていると、もうブルマさんの耳に入っているんじゃ……」

そして電話が鳴った。くそったれーーーー!!

電話の主は案の定ブルマで、なんだかとても怒られた。

世の中は難しいぜ!!

誰かの陰謀(了)

48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/08(火) 03:27:14.04 ID:y6y5Hjce0
最近ハルヒ達がパソコンに向かって、カチャカチャと何かやっている。

「おい。何をやってるんだ?」

「なに言ってるのよ!来るべきコンピ研との決戦に向けての練習に決まってるじゃない!」

ハルヒが怒鳴る。それはそれとして、戦いと聞いては黙ってはいられない。腕が鳴るぜ!

「この前、このゲームで決着をつけるってミーティングで言ったじゃない!まさか聞いてなかったの!?」

そのまさかだ。しかしゲームとはくだらん。がっかりだぜ。

「勝手にやってろ。オレは先に帰るぞ」

「ちょっとベジータ待ちなさい!あんたサボる気じゃないでしょうね!」

ガキども遊びに付き合っていられないオレはさっさと家に帰ってトレーニングをした。

49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/08(火) 03:29:49.72 ID:y6y5Hjce0
それから数日経ってもハルヒ達はゲームで遊んでやがった。

「おい!いつまでくだらねぇゲームなんてしてやがるんだ!!」

オレの注意にガキどもが一斉に顔を上げる。

「ご心配なさらずとも今日までです。今がその決戦の最中ですから」

古泉が笑顔で答える。

「チッ」

最終日くらいは付き合ってやろうと、壁に寄りかかりながら悟天のパソコン画面を覗いた。

「ちょっと!暇してるんなら役に立ってないみくるちゃんと交代してあんたが操作しなさいよ!!」

「ふぇぇ~~ごめんなさい~」

ハルヒが意味の解らないことを喚いているが無視しておいた。

悟天の画面を覗いておおよそ理解した。中心部の光点が自分達で……戦争をイメージしているのだろう。

だが不可解な点がある。相手の動きがおかしい。

どうにもカカロットの様な瞬間移動をしているとしか思えないし、スカウターか気配を探る術を得ていて場所が解っているとしか思えない動きをしているのだ。

だが、ゲームでそんな事が出来るとは思えないが……

いや、瞬間移動や気配を探る術を知っていてゲームに加えたのかもしれない。

あるいは、優れた戦術眼で相手の動きの予測ができるか……どっちにしても期待できそうな連中だ。

50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/08(火) 03:32:03.03 ID:y6y5Hjce0
「おい!対戦相手はどこに居るんだ」

「藪から棒になによ!」

散々に無視された所為かハルヒがむくれている。

「二件隣のコンピューター研究部」

代わりに長門が抑揚のない返答を寄越してきた。

51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/08(火) 03:32:36.58 ID:y6y5Hjce0
そして今、オレはその教室の前に居る。

「なんだこれは?」

ドアの前に椅子や机が積まれ、出入りしにくくなっていたのだ。

オレは気にせず、それらをまとめてドアごと蹴破った。

青っ白い連中が一斉にオレの方を見てる。

「おい!今ゲームで対決連中はどいつだ!」

オレは優しく呼びかけた。

「えっと……とりあえず、僕が部長で………」

一人のガキが震えながらオレの前にやってきた。

オレはガキの首を掴み持ち上げた。

「チートの件は謝ります!僕らの負けなんで乱暴は止めてください!!」

周りのガキどもが口々に騒ぐ。チート?なんだそれは?そんなのには興味はない。

「おい!てめぇ!なかなか見込みがあるぞ!だが、ゲームなんてしてても強くはなれん!いいか鍛えるんだぞ!」

部長とやらが首を小さく縦に振る。

「わかったか!!」

オレがもう一度確認すると、慌てた様に何度も首を縦に振っていた。

前途ある若者を正しい方向に導けたオレは気分よく家に帰った。

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/08(火) 03:33:12.24 ID:y6y5Hjce0
家でトレーニングを終えたオレを出迎えた悟天が感心したように言ってきた。

「あの後、対戦相手の人達がインチキしてごめんなさいってきたんですよ。ベジータさんが怒鳴り込んだんですって?」

そんな憶えはないのだが、感心されるのは気分が良いので放っておこう。

「でも、良くわかりましたねー。僕なんて説明されるまで気づきませんでしたよ」

感心している悟天を尻目に、連中への認識が変わっていた。

連中はインチキ—-合体するだけ強くなれるナメック星人の様な連中—-だったらしい。

感心と共に期待して損したぜ。
ナメック星の日(了)

56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 01:12:24.03 ID:sBsgwwhB0
「文化祭よ文化祭。違う言葉で言えば学園祭。公立の学校はあんまり学園と言わないような気がするげど、それはいいわ。文化祭と言えば、一年間で最も重要なスーパーイベントじゃないの!」

後ろの席のハルヒがいつになく、ハイテンションではしゃいでいた。

文化祭という以上は、地球の文化を見せ合う祭りなのだろう。

この惑星の文明は高いのか低いのか未だに解らない。

良い機会だ。今回は傍観者立場で観察してやるぜ!

57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 01:24:00.48 ID:sBsgwwhB0
この文化祭。どうやらクラスや部活で出し物をやるようだ。

クラスの方は朝倉がなにやら取りまとめていた。

こっちはあいつに任せておけばいいだろう。

問題は部活の方だ。

ハルヒのヤロウが何をするのか他の連中に相談してる様子もない。

ハルヒは幼稚だから見てるこっちがヒヤヒヤしてくる。

傍観者のつもりが親になった気持ちで見ていた。

ついでだから、温かく自主性を尊重して見守ってやろうじゃねぇか!

58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 01:27:18.97 ID:sBsgwwhB0
そして放課後、ハルヒは部活で宣言した。

「あたしたちSOS団は、映画の上映会をおこないます!」

一瞬、この惑星の文化である映画を放映するのかと思ったが、どうやら自分達で撮影するつもりらしい。
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 01:30:48.39 ID:sBsgwwhB0
翌日、ハルヒはキャスティングを発表した。

・製作著作……SOS団
・総指揮/総監督/演出/脚本……涼宮ハルヒ
・主演女優……朝比奈みくる
・主演男優……古泉一樹
・脇役……長門有希
・助監督/撮影/編集/荷物運び/小間使い/パシリ/ご用聞き/その他雑用……ベジータ、孫悟天

このキャストをみてオレが思うことは一つだ。

「おい」

「なによ。文句でもあるの?」

「オレが主役だ」

「はぁ?あんたなに言ってるの?」

ハルヒにアドバイスしてやったオレは部室を後にした。
ようやくオレが主役……ナンバー1の時代が来たようだ。
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 01:46:18.86 ID:sBsgwwhB0
その夜のことだが悟天によれば、

「あの後、涼宮さんが暴れて大変だったんですよ。
古泉くんが『彼がやる気になるのは珍しいですし、ここは主役にしてみましょう』
って説得してくれて収まりましたけど」

という出来事があったらしい。

何が原因で揉めたのか言わない悟天は所詮は下級戦士の息子だ。

61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 01:49:51.23 ID:sBsgwwhB0
それからというもの、ハルヒ達は商店街の協力取り付けなどに奮闘したらしい。

ハルヒがオレに「あんたも手伝いなさいよ!」などと文句を言ってきたことがあったが、

「うるせぇ!」

と一言で物の道理をわからせてやった。

あんなのは主役の仕事じゃない。お前は根回しなんかしたことはないよな?カカロット。

それに今回のオレは主に傍観するつもりだしな。

62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/12(土) 02:01:04.79 ID:sBsgwwhB0
やがて下準備が終わったのか、ハルヒが作品に関する具体的なキャストを発表した。

『戦うウェイトレス朝比奈ミクルの冒険(仮)』
☆登場人物
・朝比奈ミクル……未来から来た戦うウェイトレス。
・べじーた……超能力少年改め、超能力中年。
・長門ユキ……悪い宇宙人。
・エキストラの人たち……通りすがり。

オレは一瞬で理解した。
・朝比奈ミクル……未来から来たトランクス
・長門ユキ……フリーザ

……オレはグルド役なのか?いや、このキャストはフリーザが地球にやってきた時のだろう。

・エキストラの人たち……フリーザの迎撃に集まったオレ以外の雑魚ども—-ナメック野郎やヤムチャといった有象無象—-とトランクスに一蹴されたコルドや手下達

そうすると主役のオレはカカロットか?

確かに瞬間移動を使えたり、頭に手を当てると考えてることが解ったり、夢の中で現在起きてることを把握してたりしてたからな。

オレがカカロット役というのは気に食わんが、カカロットのヤロウがナンバー1だったのは事実だし仕方がないだろう。

しかし、まさか……事実を元にしたノンフィクション映画を撮るとは思ってなかったぜ!

「なに?また文句でもあるんじゃないでしょうね」

考え込むオレにハルヒが居丈高に聞いてくるがオレは軽く、微笑み「フン」とエールを送っておいた。

64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/11(日) 23:26:13.67 ID:aISDK3ct0
いざ撮影が始まると、ハルヒのヤロウはトランクス役の朝比奈にヒラヒラの妙なミニスカートの服なんかを着せようとしやがる。

トランクスはそんな服は着ん。怒鳴ろうと思ったがギリギリのところで我慢した。俺も丸くなったものだ。

さらには長門を魔法使い役にするなどと言い始めた。

すなわち、ノンフィクションからトランクス対バビディの仮想戦にしようというのだ。無計画にも程がある。

だが、学生のやることだ。目くじらを立てずに見守ってやろうではないか。

65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/11(日) 23:50:28.85 ID:aISDK3ct0
そして撮影は続き、今は近くの山の中に来ている。

コンタクトレンズとやらで左目だけが青くなった朝比奈みくると黒い衣装に身を包んだ長門の戦闘シーンを撮るらしい。

トランクス対バビディってことだ。くだらん。ダーブラがいない以上トランクスの圧勝だろう。

「ちょっとベジータ!いい加減に手伝いなさいよ!」

「うるせぇ!」

俺に手伝えと怒鳴るハルヒを一喝しておいた。今回のオレ様は見守るのがメインだからな。

66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/11(日) 23:55:47.09 ID:aISDK3ct0
朝比奈が銃の様な物を長門に放つ。トランクスが剣を振り回していたパロディだろう。なかなか考えてやがるぜ!

長門はそれを棒で叩き落とす。バビディでもその程度なら出来るはずだ。

続いてハルヒの指示で、長門の魔法で朝比奈が苦しみ座り込む。

トランクスに悪の心などあるはずがないのに納得のいかない展開だ。

ここは経験者として監修するべきだろうか?

67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/12(月) 00:00:16.18 ID:6G6LSsum0
俺が注意しようとしたら、ハルヒが休憩と言い始めた。

そして昼食も終わり、再び撮影に戻ると、

「やっぱ銃はやめにするわ。もっと凄い弾が出ると思ってたのに、ハデな炎も音もないし臨場感がないもの。あんまり効いてる気がしないのよ。レプリカだとダメね」

と、先ほどの分は使わないことにしたようだ。

なるほど、ハルヒもトランクスがバビディの魔法で苦しむ展開は無理があると思ったのだろう。

68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/12(月) 00:11:59.15 ID:6G6LSsum0
「だからね、みくるちゃん。目からビームくらい出しなさい!」

ハルヒが朝比奈に指示を出す。

ふざけるな!トランクスはそんなフリーザの様な真似などせん!

怒鳴ろうかと思ったが我慢した。もしかしたら、朝比奈が使える数少ない技なのかも知れんしな。

「無理ですっ!」

朝比奈が否定する。使えないらしい。

「その色違いの左目はこのためのものなのよ。無意味に青くしてるんじゃないのよ。凄い力を秘めているっていう設定なの。つまりそれがビームなの。ミクルビームよ。それを出すの」

目からビームはそれほど凄い力とも思えんが、子供達の言う事だ。いちいち突っ込む必要はないだろう。

「で、出ませんっ!」

「気合いで出せ!」

ああ、エネルギー波で重要なのは気合いだ。ハルヒのヤロウもわかってるではないか。

もっとも、まともな奴は目からビームなど出さん。俺が知っている限りでも、フリーザ、ナメック野郎、人造人間。
やはりまともな奴はいない。

72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 03:59:31.92 ID:uaHSsLiG0
「みっ……ミクルビーム」
ハルヒと散々練習していた朝比奈本番になり実行している。いい気合だ。

そして目からエネルギー波が出る。まぁ、当然だな。

問題はエネルギー波の向かった先だ。古泉がカメラを片手に立っていた。

「馬鹿が!」

俺はカメラの前に立ち、エネルギー波を片手で握りつぶした。

あのままではカメラが壊れたではないか。この古泉はヤムチャの様なボンクラなのか?

73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 04:14:20.00 ID:uaHSsLiG0
「ちょっと!なに撮影のじゃまをしてるのよ!」

ハルヒの罵声が飛ぶ。あのままだとカメラが壊れて撮影どころじゃなかったんだぞ、くそったれ!

そして朝比奈が視線を横にずらす、光線はそのまま悟天に向かう。

あわやレフ版を両断されかかるが、悟天はなんなくそれをかわす。ああ、普通はそうだ。

古泉のボンクラ具合に反吐が出そうになる。

74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 04:24:55.11 ID:uaHSsLiG0
しかし無差別に目からのエネルギー波をばらまくとは迷惑な奴だ。

トランクスはそんな人造人間の様な真似はせん。

いくら演出とはいえやり過ぎではないか?

オレの想いを代弁するかのように長門が朝比奈に躍りかかった。

長門が朝比奈の顔を掴むとそのまま足をかけて倒す。

75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 04:28:36.69 ID:uaHSsLiG0
バビディがトランクス相手に優勢に戦う?

そんな事があってたまるか!

もしかしたら、長門は朝比奈がカメラを壊しかけた事に怒っているのかもしれない。

だが、あれは反応が出来なかった古泉が悪いだけだろう。

なんにせよやりすぎだ。

「おい!テメェ!トランクスにこれ以上やるなら、このオレが相手だ!」

長門を引きはがすと宣言してやった。

ついに主役の登場である。

82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/25(月) 15:19:15.50 ID:KSOObQ7I0
「ちょっと、ベジータ!なにやってんのよ!」

やる気になったオレに罵声が一つ。ハルヒのヤロウが妨害してきやがった。

「ここはみくるちゃんと有希っていう美少女二人の戦いだから盛り上がるのよ!おっさんは画面から消えなさい!」

ハルヒの口撃は止まらない。

「だいたいトランクスって何よ!あんたの下着なんて聞いても誰も喜ばないわよ!」

さらにハルヒが喚いているが、女がこうなると手が付けられないのは、ブルマで嫌というほど体験している。仕方がなしにオレは引き下がった。

83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/25(月) 15:20:02.14 ID:KSOObQ7I0
「それじゃあ、気を取り直して行くわよ!」

俺にひとしきり喚いて満足したのか、ハルヒは朝比奈と暫し相談した後、再び撮影を開始した。

「さあみくるちゃん、そのミラクルミクルアイRから何でもいいわ、不思議なものを出して攻撃しなさいっ!」

ハルヒが朝比奈に指示を飛ばす。他にも技を持っているのか?なかなかに楽しい奴だ。

朝比奈が構えた瞬間—-

「悟天よけろーーーっ‼」

悟天の馬鹿は間抜けな事に朝比奈の技を手で弾こうとしていたのだ。

オレの声に驚き、悟天が一テンポ遅れて動く、同時に持っていたレフ版が両断された。

「あの馬鹿め……どんな技かも見切れなんのか」

この程度で悟天の体が傷つくとも思えんが、万が一怪我でもされてチチに怒鳴り込まれたら面倒だからな。それに一応は悟天を預かっている身だ、注意はしないといけない。

長門というと、朝比奈に飛びかかっていた。長門—-バビディ—-が優勢で気に入らんが、朝比奈はやりすぎた。少し痛い目に遭った方がいいだろう。

ハルヒも同意見だったようで、二人の戦いを見守っていた。

84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/25(月) 15:20:42.85 ID:KSOObQ7I0
翌日の撮影は朝比奈の友人の家を使ったものだった。

「はーい、到着っ。これ、あたしん家」

その少女は古臭い一軒家に俺達を案内する。

「いい部屋ね。ここでロケができそうなくらいよ。そうだ、ベジータの部屋だってことにしましょう。みくるちゃんとのツーショットシーンをここで撮るのよ」

ハルヒが嬉しそうに構想を語る。そして朝比奈の友人と何やら話し合い始めた。

「くふっ! あ、それ面白いねっ! ちょっと待ってて!」

少女は朗らかかつ高らかに笑い声を上げると、そっから部屋を出て行った。

待つこと数分、少女は朝比奈と一緒に戻って来た。

85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/25(月) 15:21:23.29 ID:KSOObQ7I0
そして始まるツーショットシーン。そして俺は気が付いた、朝比奈が酒臭い! ガキの癖に酒を飲むなんて、何を考えてやがる!

「おい、テメェ! 酒を飲んでやがるな!」

「うー……。べじーたさん、あたしなんだかあたまがおもいのねす……ふ」

ガキが酒を飲むからだ。自業自得だな。

「ごっめーんっ。みくるのジュースにテキーラ混ぜといたの。アルコールが入ったほうが演技に幅が出るかもっていわれてさっ」

朝比奈の友人の少女が謝り始めた。

「おい、テメェ!ぶっ殺すぞ!」

もしブラが友人に騙されてアルコールを飲まされたら……と、かなりの苛立ちを憶える。

「いいじゃん。今のみくるちゃん、すごく色っぽいわよ。画面映えするわ」とハルヒ。

やって良い事と悪い事が解らないのか?

「ベジータ、いいからキスしなさい。もちろんマウストゥマウスで!」

「てめぇ……」

続けるハルヒに言葉を失った。

「ベジータさん!駄目ですって!」

悟天の言葉に正気を取り戻す。気が付けばビッグバンアタックの構えをハルヒにとっていたのだ。

「何よっ……!」

ハルヒがオレを睨みつけながら続ける。

「変な構えをして、怖い顔をしたって全然怖くないんだからね!あんたは監督であるあたしの指示に従ってればいいのよ!」

駄目だ話にならんな。

「悟天、帰るぞ」

喚くハルヒを無視して、俺は悟天と家路についた。

年頃の娘の相手は大変だ。男ならぶん殴れば済むのだが……。

もしブラがあんな風に育ったらオレはどうすればいいのだろうか。

自然と溜息が漏れていた。

86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/25(月) 15:21:58.39 ID:KSOObQ7I0
その後の撮影にはオレは参加しなかったが、悟天は参加してなんとか終わらせたらしい。

「文化祭で上映するんですって」

などと悟天が言っていたが、俺には関係ない。なにせ、その期間はブルマ達と家で過ごすのだからな。
ベジータの溜息(了)

88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 01:01:15.33 ID:Pxl2oZKv0
悟天を鍛えてやってるある日のことだった。

「涼宮さん達が幽霊探しをやってるそうですよ」

組手をしながら、悟天がくだらないことを言って来た。

「死んだら閻魔のヤロウの所に行くだけだ」

二度死んだオレが言ってるんだ。間違いないはずだ。もっともナメック野郎みたいな不思議な連中に殺されたら閻魔の所に行かないとかがあるかも知れんがな。

「死んだ状態でこの世に戻れるのは一日だけだ。お前も知ってるだろ?」

「お父さんの場合はスーパーサイヤ人3になったんでそれよりも短かったですけど……」

「不毛な事をしてないで鍛えろと教えてやれ」

「あ、でも今はクラスメイトが飼ってる犬の調子が悪いとかでそっちの方が気になってるみたいですよ」

「気にしたところでどうしようもあるまい」

「あのー……。仙豆とかじゃダメですかね?」

悟天が間抜けな事を言って来た。

「仙豆では病気を治せん。カカロットが心臓病で死んだ歴史もあるしな」

「はぁ……そうですか……」

悟天が落ち込むが……確かにハルヒは兎に角、朝比奈達も落ち込むと思うと寝覚めが悪いな。

「用事が出来た。トレーニングはここまでだ」

オレはそれだけ言って重力室を後にした。

89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 01:02:00.12 ID:Pxl2oZKv0
そして今、オレは空を飛んでいる。

ナメック星人のガキなら病気を治せそうだと思ったのが発端だった。

もっとも、あのガキに頼むのは気に入らないのでオレが向かっているのは別の場所だ。

「あ、これはベジータさん! お久ぶり—-」

「おい、ブウはどこだ?」

目的地に着いたオレは開口一番サタンに質問を出した。

「ヘッ?ブウさんですか?中庭でベエと遊んでますが……」

「フン」

「あ!ベジータさん、どこに行くんですか?」

オレはサタンに礼を言うと中庭に進んだ。

90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 01:02:26.92 ID:Pxl2oZKv0
「おい、ブウ!」

サタンの家で犬とじゃれてた醜い風船ヤロウに優しく声をかけてやった。

「おう、なんだ。オレは今忙しいぞ」

「病気の犬がいるらしい。治してやれ」

「ヤダ」

一々癪に障るヤロウだ。

「お前が今遊んでいる奴の仲間だ。それとも流石の魔人ブウも病気は治せないかな?」

「ベエの仲間か。いいぞ、治してやる。死んでなかったら治せるからな」

「そうか、ついて来い」

「おう」

91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 16:02:07.79 ID:Pxl2oZKv0
「ベジータさん、お帰りなさい」

帰宅したオレを悟天が出迎えた。

「ブウさん、ご無沙汰しています」

そしてブウにも挨拶。

「おい、犬のところに案内しやがれ」

「ああ、ブウさんに治してもらうんですね」

そして悟天が続ける。

「涼宮さん達にも連絡しますね。きっと喜ぶだろうなぁ」

そう言って携帯電話取り出す悟天。あの携帯も何時か握りつぶしてやるぜ!

92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 16:03:07.42 ID:Pxl2oZKv0
犬の飼い主である何とかとかと言うメスガキの家で集合したのだが……。

「なんなのよ、急に呼び出して!」

開口一番喚き散らすハルヒ。めんどくせぇ奴をわざわざ呼びやがって。

「あのベジータさんが犬…ルソーを治してくれる人を連れてきてくれたんですよ」

そしてブウを紹介する悟天。一瞬動きが止まったハルヒがオレに近づいて来た。

「ちょっと、随分と顔色がおかしい人だけど大丈夫なの?それに服装も変だし……」

そして確信したかの様に続ける。

「うん。あんな恰好の獣医なんているわけないわ!あれね、呪術師の類ね。あんたも幽霊の仕業だと思ったのね!だけど、あからさまに妖しいし、二、三職務質問をしなきゃ!『ヘンタイですか?』とか!」

張り切るハルヒの袖を引く影が一つ。

「なによ有希。文句でもある訳?」

「刺激してはいけない」

長門が平坦な声で続ける。

「下手をすると宇宙の危機。信じて」

「随分と大袈裟ね。でも、有希が変な事を言うとは考えられないし……」

暫し考え込むハルヒ。

「そうね。初対面の人にあんまり失礼な事をいう訳にもいかないし、ここは有希に免じて穏便に済ましてあげるわ」

偉そうに頷くハルヒ。一々めんどくせぇガキだ。

「おい、終わったぞ」

ハルヒが納得している間にブウは治していたようだ。

「え、もう⁉」

「変なのが居たからやっつけておいたぞ」

「変なの?変なのって幽霊なの?」

ブウにかぶりつくハルヒ。

「うるせぇ!幽霊なんて居るか!てめぇはそのワンコロと遊んでやがれ!」

現実と向き合わせるように優しく諭してやった。オレも人の親になったものだ。

「なによ!」

反論しようとするハルヒの足元に犬が縋りつく。

「こ、今回はルソーに免じて許してあげるけど、今度あたしに舐めた口を聞いたら許さないわよ!」

「勝手にしやがれ」

こうして俺達は家路につくのであった。

ワンダリングブウ(了)

93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 18:24:35.37 ID:Pxl2oZKv0
ある冬の日だった。

いつの間にか疫病が蔓延していたようで、そこかしこで咳の音が聞こえていた。

鍛え方が足りねぇんだ、クソッたれ!カカロットも病気には勝てなかったんだ、オレも気を付けなければな。

そんな昼下がりに教室のドアが開いた。

「大丈夫なの?」

「熱も下がったし、家に居ても暇だから着ちゃった」

重役登校の朝倉とそれを取り囲む女生徒たち。

朝倉は一人ぼっちなんだ。家にも居ても暇という言葉の重みが違うのにいい気なもんだぜ、クソッたれ。

94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 18:26:10.94 ID:Pxl2oZKv0
朝倉は何を思ったのか、俺の後ろ、ハルヒの席に座る。

そういえば、ハルヒも休みの様だし、空いている席なんだ、勝ってに座らせておいてやった。

毎日同じ席だと飽きるからな。

95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 23:40:47.56 ID:Pxl2oZKv0
そして放課後、何時もの様に部室に向かう。

途中、朝比奈を見かけたが、別に声をかけるほどの事はないだろう。

そして部室に到着した。

室内には長門だけ。長門が本から顔を上げてオレを見る。

そして再び読書開始。部室はというと、ハルヒが拾って来たゴミが無くなっており、随分とスッキリしていた。

やることがないから、壁に寄りかかり、暫し目を瞑る。

「……」

「……」

「……」

「……」

長門が本のページを捲る音だけが室内に響く。

「スイマセン!遅れましたー!」

悟天がやかましく入って来た。

「あれ? 他の皆は?」

「ハルヒは休みだ」

「朝比奈は見かけたが、まだ来ないという事はサボりだろう」

「え~……。朝比奈さんはそういうタイプに見えないんですけど……」

「フン。女には色んな日があるんだ。そんな気分だったんだろう」

ブラにもお赤飯を炊く日が来るのかと思うと少々憂鬱になるぜ。

「ハルヒ達も来ないようだから帰るぞ」

「待って」

オレが悟天と帰ろうとしたら長門が声をかけてきた。

「これ」

二枚の紙をオレ達の方へ寄越す。

「いらん」

どうせ大したものではないのだろう。口があるんだ。用事があるなら自分で言いやがれ。

こうして俺達は家路に着いた。古泉?知らん。

96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 23:42:50.88 ID:Pxl2oZKv0
そして翌日。当然の様にオレの後ろに座る朝倉。

オレが気にすることでもないので放置しておいた。

97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/01/31(日) 23:55:10.41 ID:Pxl2oZKv0
放課後となり、部室に向かう。

ハルヒは休みだが、一応は顔だけでも出しておこう。オレも優しくなったもんだ。

当の部室では長門が何時もの様に本を読んでいた。

トランクスと同世代の少女が何を熱心に読んでいるのか気になり、本棚を見て回った。

ふと、一冊の本が目に着いた。長門が熱心に読ませようとしていた奴だ。

手に取って、パラパラと捲る。一枚のしおりが落ちた。そう言えばしおりも読ませようとしていたな。年頃の子供がやることは意味がわからん。

「こんにちはー」

その時、悟天が能天気な声をあげながら部室にやって来た。

「あれ?ベジータさん、しおりが落ちてますよ」

「知るか、テメェで拾いやがれ」

「ええっ⁉ボクがですかぁ~?」

しぶしぶとしおりを拾い上げる悟天。下級戦士という立場が理解できてないようだ。

「あれっ?これ、何か書いてありますよ?」

悟天がしおりをマジマジと見て読み上げる。

「『プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・二日後』なんですかね、これ?」

なるほど、オレは直ぐに理解した。下級戦士とは頭の出来が違うのだ。

「ハルヒの悪戯だろう。鍵をそろえよだから、複数の何かを集めて……プログラムだから、そこのパソコンを動かせってことなんだろうよ」

「へぇ~!流石はベジータさんですね」

「構って欲しいからって面倒な奴だ。ちょっと、鍵を集めて来るぞ」

「鍵が何かわかったんですか!?」

「フン」

馬鹿な下級戦士を鼻で笑った俺は部室を後にした。

98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/01(月) 00:01:26.99 ID:SKZ6X//T0
「おい、ブルマ!とっとと出てきやがれ!」

そして今、オレは懐かしの我が家に居る。

「あれ、ベジータ?学校はどうしたのよ」

「うるせぇ!とっととドラゴンレーダーを寄越しやがれ!」

「藪から棒に怒鳴り散らさないでよ!」

「チッ」

仕方がないので愚鈍なブルマに事のあらましを教えてやった。

「するとなに?そのハルヒって子が不登校だからドラゴンボールを使うってこと?」

なんだか違う気もするが面倒だからそれでいいだろう。

「クラスメートを心配するなんてベジータも良い所あるじゃない」

「フン」

「ただ、ちゃんと原因も解決してあげるのよ」

ブルマはそう言って俺にドラゴンレーダーを掴ませた。

99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/01(月) 00:16:38.23 ID:SKZ6X//T0
ドラゴンボール集めは一日で終わった。

そして翌日の放課後、部室において、ドラゴンボールを脇に置いてパソコンを起動した。

変化なし。

「やっぱりドラゴンボールじゃないんじゃ……」

悟天が慰める様に言ってきやがった。腹が立つぜ。

「ふざける!鍵と言えば、ドラゴンボール以外にある訳がないだろ!」

「は、はぁ……」

力なく答える悟天に苛立ちが募る。

「いいか、見てやがれ」

オレはドラゴンボールを窓から校庭にまき散らすと、こう言った。

「出でよ神龍!オレの願いを叶えやがれ!」

「ちょ、ちょっと、ベジータさん⁉」

空が暗くなり、神龍が現れた。

「どんな願いも可能な限り三つ叶えよう」

お決まりの台詞を吐くドラゴンにオレは願いを言う。

「ハルヒ達が学校に来れる様に元の健全な状態に戻しやがれ」

「たやすい願いだ。男子生徒はサービスだ」

男子生徒?こいつは何を言ってるんだ?

「次の願いはなんだ?」

ふと不安気な表情を浮かべる長門が目についた。

「長門や朝倉、朝比奈達に優しくて頼りになる親をつけやがれ!」

「いいだろう。願いは叶えたぞ。最後の願いはなんだ?」

「もう用事は……」

そこまで言ってオレはあることを思いついた。

「オレを卒業させやがれ!」

「いいだろう。願いは叶えた。さらばだ」

ドラゴンボールは飛び散り、空が明るくなる。

……そして、その空から一枚の紙切れが落ちて来た。

『卒業証書』

その紙には確かにそう書かれている。

「もうここには用事はないな。さらばだ」

「ベジータさん⁉ボクは⁉」

「てめぇはのんびりと三年間通うんだな!ハハハハ!」

オレは学び舎やから飛び去った。

100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/01(月) 00:45:57.74 ID:SKZ6X//T0
「すると何?あんたはドラゴンボールを使って卒業してきたの?」

「ああ」

何が面白くないのか、ブルマは仏頂面で溜息をついた。

「常識外の連中に常識を学ばせようとしてたあたしがバカだったわ」

ブルマは脱力したように肘をつく。

「それよりもブラはどこだ?」

無言で隣室を指さすブルマ。

背後でブルマの溜息を聞きながら、俺はブラに声をかけた。

「ありがたく思え!明日からは毎日に一緒に居てやるぞ!」

ああ、毎日が日曜日って素晴らしい。
ベジータの消失(了)
チラ裏SS オチマイ

付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。

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