【俺ガイル・クロスSS】やはり俺の青春ラブコメが神のみぞ知るセカイなのは間違っている。

2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/30(月) 15:33:14.87 ID:9TGHLrZ10
FLAG.1  世界はアイで動いているなんて間違っている。

「だりい。」
いつも通りの月曜日。月曜日というのは相変わらず憂鬱である。
土曜日と日曜日に怠けた分、月曜日というのは特に気だるく感じてしまう。
学校なんて戸塚に会えること以外特に面白いことはない。
むしろ、戸塚のいない学校生活になんの意味があるのだろうか。
とりあえず下駄箱から靴を出し、上靴に履き替える。

「おはよ、八幡!」
すると、横から天使の声が聞こえた。

「おう、戸塚。今日も朝練か?」
そう、戸塚彩加だった。
まあ、俺のことを八幡なんて呼んでくる人間は戸塚くらいだ。
材木座?そんなやつは知らん。

「うん!今度練習試合があるからね。勝てるように練習してるんだ!」
相変わらずの天使スマイル。この笑顔は全力で守りたくなる。

「そうか、頑張れよ。」
何とかクールを装うと頑張るが、少し口元がニヤついている気がする。

「うん!あ、僕職員室に部室の鍵返しに行かないといけないからまた教室でね!」
「おう。」
天使が行ってしまった。まぁ、また教室で会えるし良いだろう。
その後教室に戻りやってきた戸塚と少し談笑し、朝のHR、そして授業が始まった。
授業が始まってしまえばあとは早い。昼休みさえ乗り切ればすぐに放課後の部活だ。

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/30(月) 15:33:56.75 ID:9TGHLrZ10
「さて、そろそろ帰るか。」
「そうね。じゃあ私は鍵を返しておくから。」
「ゆきのん!この後暇!?」
「え、ええ。特に用事は無いけれど。」
「じゃあさ、クレープ食べに行こうよクレープ!」
「あなた・・・先週も食べていなかったかしら。太るわよ?」
「だ、大丈夫だよ!サブレの散歩で運動してるし!」
「お疲れー。」
放課後、相変わらず依頼者が0の奉仕部の部活動も終わり、由比ヶ浜と雪ノ下が何やら談笑している中、そそくさと帰宅する。
特に理由はないが、早く帰りたい。ただそれだけだ。

いつもの道を帰宅途中、携帯が鳴った。
とりあえず携帯の画面を見てみる。
そこには知らないアドレス。
書かれている内容はこうだ。
「やり方はともかくどんな人間でも救えると噂を聞く。まさかとは思うが救って欲しい人間がいるのだ。自信があるなら返信ボタンを押してくれ。P.S.無理なら絶対に押さないように!!」

とりあえず自信はないので携帯のホームボタンを押すが画面は切り替わらない。電源ボタンを押しても消えないし長押ししても電源オフになる気配もない。
「どうなってんだよ・・・押せってことかよ・・・。」

まぁ、こんなもの押したところでどうってことないだろう。
そう思って返信のボタンを押す。

すると―

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/30(月) 15:34:46.71 ID:9TGHLrZ10
ドン!という音と共に思わず吹き飛ばされるほどの爆風。
そして見上げるとそこには1人の女の子。

「お前が私の新しい協力者?はぁ・・・何かすごく目が腐ってるわね。まぁ良いわ。私は新しくこの地区の地区長を任されたハクア・ド・ロット・ヘルミニウム!ハクアで良いわ。握手してあげてもいいわよ!」

「な、なんだこれは・・・」
なんだか・・・すごくめんどくさいことに巻き込まれたような気がする。
とりあえずこんな時は・・・
「じゃ、俺は帰るんで・・・」
「ちょっと待ちなさい!」
「ぐわっ!」
いきなり襟元を掴まれた。

「何いきなり帰ろうとしてるの。お前が契約したんじゃない。」
「け、契約ってなんだよ!」
「もしかして・・・何も知らないの?」
相手は驚いたのか、俺も襟元を掴んでいた手が離れる。

「知ってるわけねぇだろ・・・。だいたいアクアのなんちゃらアルミニウムだっけ?お前は何者なんだよ。何かの新製品なの?美味しい水をお届けしてくれるの?」
「何言ってるの?さっきも言ったじゃない。ハクア・ド・ロット・ヘルミニウムよ!一回で覚えなさいよ。まぁ簡単に言うと・・・地獄から来た悪魔ね。」
いったいこいつは何を言っているんだろうか。もしかして材木座みたいな感じのやつ?自分が作った作品とごっちゃになってるの?
とりあえず帰ろう。うん。

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/30(月) 15:35:34.30 ID:9TGHLrZ10
「だから帰ろうとしないでちょっと待ちなさい。」
また襟元を掴まれて動きを止められる。そして俺の動きが止まると掴んでいる手はすぐに離れた。
「なんだよ・・・。」
「首、取れるわよ?」
「・・・は?首?」
そう言われて首元を触ってみる。するとそこにはいつの間にか首輪が付いている。

「なんだよこの首輪・・・。俺は首輪なんて付ける趣味ないぞ。」
「いや、悪魔と契約したからよ。さっき契約書送ったじゃない。」

そんなもの送った記憶がない。サインもしてないし印鑑も押していない。
他に考えられることは一つ・・・。
「もしかしてさっきのメールか・・・?」
「地獄の契約は厳しいから注意しなさい。もし契約を達成できなかったり地獄の許可無しに契約を破棄すると・・・」
「破棄すると・・・?」
「その首輪が作動してお前の首をもぎ取るわ。」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/30(月) 15:36:25.24 ID:9TGHLrZ10
「は?」
いきなりの死の宣告。
首をもぎ取られるなんて時代錯誤も良いところである。

「まぁ、とにかく、駆け魂を封印していけばそのうち外れるから。」
「あ、駆け魂ってなんだ?」
「そうね。簡単に言えば悪人の霊魂ね。やつらは最近人間界にやってきてるの。その駆け魂は捕まえるのが大変なのよ。人の心のスキマなんていう見えない場所に隠れるもんだから・・・。」

意味がわからない。そもそもこれは現実の話なのか?それすらも怪しい。
とりあえず首が飛ぶのは嫌なので続けて話を聞く。

「で、その心のスキマが何だか知らないが、見えないものをどうやって捕まえるんだよ。そもそも居場所はわかるのかよ。」
「良い所に気がついたわね。そこで人間の協力者が必要なのよ。心のスキマが埋まれば駆け魂は居場所がなくなって外に出てくるの。あと、駆け魂が人間の中に入ればこの駆け魂センサーが反応するからわかるわ。」
「そ、そうか・・・」
「他に質問は?」
「あぁ・・・その心のスキマを埋めるにはどうしたら良いんだ?なんか具体的な方法とかあるのか?」
「そうね。まあ人それぞれやり方は違うけど今一番成績を残しているやつのやり方だと・・・」
「やり方だと?」
「恋愛ね。」

俺が一番不得意なジャンルの言葉が聞こえた。

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/12/30(月) 15:38:43.95 ID:9TGHLrZ10
「は?」
「駆け魂が中にいる女の子と恋愛して心のスキマを埋めるのよ。最後にキスすればだいたい駆け魂が出てくるわ。あ、駆け魂が入ってる時に恋愛したことは記憶が書き換えれるから駆け魂が出て行ったあとも付き合ったりしないといけないとかは心配しなくて良いわよ。」
「や、そこはどうでも良いんだけどな・・・。」
「そう。なら良いわ。じゃあ早速駆け魂狩りに行くわよ!」

ハクアはそう言うと、俺の襟元を強く掴み、俺ごと空高く飛んだ。

「なんだああああああああああ!?」
もちろん空を飛んだことなんて初めてだ。しかし、のび太くんのように空を飛んでいることを楽しむ余裕なんてない。

「少し黙りなさい。今探してるから・・・いた!あの子よ!」

そう言って下に降りる俺とハクア。
そしてハクアが指差す方向にいたのは・・・。

「雪ノ下・・・?」
雪ノ下雪乃だった。

FLAG.2 最初のヒロイン に続く。

20: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/06(月) 01:19:35.74 ID:BAbRGOtW0
「雪ノ下・・・?」
ハクアが指差す方向にいた人物を見て俺は驚きが隠せない。
「おいハクア・・・。本当にあいつと恋愛しないといけないのか?」

ハクアが言うには駆け魂は心のスキマに入るとか言っていた。
そして何より氷の女王である雪ノ下に心のスキマなんてあることにびっくりである。
どちらかと言うと人の心にスキマを作ってる方がしっくりくる。

「センサーの反応が間違ってない限りあの子よ。なに、もしかして知り合い?」
「一応同じ部活なんだよ。」
「へぇ・・・。そういえばあんた名前は?聞くの忘れてた。」

あぁ、そういえば俺は名前聞いたけど名乗ってなかったな。
あれ、でもこいつの名前なんだっけ?ハクアは覚えてるんだけどそこからが思い出せない。
アルミニウム?ヘリウム?ベリリウム?

「比企谷八幡だ。」
「へぇ・・・。ちなみに部活って何やってるの?」
「奉仕部だ。」
「奉仕部?」
「あぁ。」
「それ・・・いったい何するの?」

奉仕部って単語を聞くとだいたいの人間はこの質問をしてくる。
だから答えるのは簡単。もはやテンプレートでPCに内蔵されているレベル。

「まぁ簡単に言えば生徒の悩みを聞いてそれを解決する手伝いをするって感じだな。」
「ふーん・・・。あ、動き出したわ!」
「いや、今日はもう帰るぞ。」
「どうして?目の前に対象がいるのに。」
「いや、どうせ明日も部活で会うし。」
あとは何より早く帰りたかった。何かもう疲れた。

21: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/06(月) 01:21:02.08 ID:BAbRGOtW0
「でも・・・まぁ良いわ。いろいろ準備もあるしね。じゃあ攻略は明日からにしましょう。」
「じゃーな。また明日。」
「じゃーなって・・・今日から私はあんたの家で暮らすんだけど?」
「・・・は?」

この悪魔は何を言っているんだ。
俺の家で暮らす?またまたご冗談を。
確かに空いている部屋はあるけれども。

「なに、どうしたの?なんか心配そうな顔してるけど。」
「いや、俺ん家に住むとかどうすんだよ。俺の家族の許可とかいろいろあんだろ。」

ハクアは悪魔とはいえ見た目は俺と同年代に見える。
そんなやつが一緒に住むってなるとすごく大騒ぎするであろうやつがいるのだ。

「私はあんたの従兄妹ってことになってるから大丈夫よ。」
「え?そうなの?」
「あなたの家族の記憶を少し改ざんしてるから大丈夫よ。」
「おいおいマジかよ・・・さすが悪魔だな・・・。」
「まぁ、改ざんって言っても私が従兄妹っていうのを加えただけだからそんなに大したことはしてないわ。」
「そ、そうか・・・。」
記憶改ざんってだけでも大したことだと思うのだが・・・。
これ以上はめんどくさいので触れないことにした。

22: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/06(月) 01:36:42.56 ID:BAbRGOtW0
「あと、駆け魂のことは私とあんただけの秘密だからね。」
「そ、そうか・・・。わかった。」
ふたりだけの秘密とか言われると何かドキッとするよね。
これが悪魔相手じゃなくて中学生時代の俺なら激しく勘違いしてしまいそう。

「ただいまー。」
「お、お兄ちゃんお帰りー。」
家に帰るといつも通り迎えてくれる我が妹。
ただいまを言うのがカバじゃなくて小町で本当に幸せです。はい。

「あ、ハクアちゃーん!久しぶり!」
「ひ、久しぶりね。」
「あ、お兄ちゃんと一緒だったんだね!」
「あぁ。偶然会ってな。」
一応従兄妹ってことになっているみたいだしとりあえずここは適当に合わせておこう。
特に困ることもないだろうし。

「あ、ハクアちゃんのお部屋案内するね!こっちこっち!」
「あ、うん」

あっという間に小町がハクアを連れて行った。
することもないのでとりあえず自分の部屋に向かった。
それにしても雪ノ下とハクアは何となく似ている気がする。
声とか声とか声とか。
そんなどうでも良いことを考えつつ、自分の部屋に入るとすぐにベッドへダイブした。

28: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/11(土) 21:54:03.78 ID:H+tFfaXH0
晩飯に起きてから小町とハクアはすっかり仲良さげに話していた。
まぁ、意気投合というよりは小町にハクアが合わせてるといった感じだろうか。
なんかラジオでこまち・ハクアの新番組とかやってそう。
ガールからレディへ成長中の年齢だししょうがないね。
自分は入る余地がなさそうだし変に入りに行ってパネルで遮られて糸電話で会話することになりかねないのでやめておいた。

次の日の朝、起きてリビングに行くと小町とハクアの姿。
「やっと起きたのね。」
「お兄ちゃーん、朝ごはんできてるよー」
「おう。顔洗ったら食べるわ」
「はいはーい」

29: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/11(土) 21:54:42.75 ID:H+tFfaXH0
眠気で顔を洗うのもめんどくさいが顔を洗わないとすっきりしないので顔を洗う。
顔を洗い終わるとリビングに向かい朝食。
いつも通りの日常にハクアを加えただけ・・・なんて単純なものじゃない。
これから雪ノ下と恋愛しないといけないと考えると胃が痛くなる。

「お兄ちゃーん」
「あ?」
「見て見てー!ハクアちゃんの制服姿!」
そこには総武高校の制服を着たハクア。
「あ、あんまりジロジロ見ないでよ・・・」

正直、かわいい。

「どう?どう?」
「いや、まぁ・・・普通に似合ってんじゃねえか?」
「そ、そう・・・」
「ふむふむ、親戚同士の結婚もありか・・・。新たな嫁候補キター!」
「あんたも早く着替えてきなさい。学校行くわよ。」
「へーい・・・」
いつもの時間よりは少し早いがハクアが急かすので朝食をたいらげて制服を取りに部屋に戻った。

30: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/11(土) 21:57:40.19 ID:H+tFfaXH0
「じゃ小町、行ってくる。」
「行ってきます。」
「行ってらっしゃーい!」

今日は小町とは別登校。
新たな嫁候補とか言ってたし何か変な気でも回してるんだろうか。
小町はハクアが悪魔だって知らないからしょうがないといえばしょうがない。

「さて、学校着いたぞ。」
「私は職員室にいかないといけないからここでね。」
「あぁ。」
「ちなみに、同じクラスになるようにしてあるから、あんまり驚かないでね。」
「へーい・・・」

そう言ってハクアと分かれ教室に行く。
教室に着くとイヤホンして寝たふりをして時間を潰す。
いつも通りといえばいつも通り。
何曲か聴き終わるとチャイムが鳴ったのでイヤホンを外し起きる。

ことなくすると朝のSHRが始まる。
「今日からこのクラスに転校生が来る。仲良くするように。じゃあ、入って。」

声と共にハクアが教室に入ってくる。そして黒板に名前を書く。
「比企谷ハクアです。そこにいる比企谷君の従兄妹になります。よろしくお願いします。」
無難に挨拶し、そして一礼。
同じ苗字なのに何も言わないと後からいろいろ詮索される。
ただでさえ転校生なんてものは注目の的であるのに比企谷なんて珍しい名前のやつと転校生の苗字が一緒だと聞けと言っているようなものだ。
それを回避する方法として最初に説明するのはなかなかである。

「じゃあ・・・あそこの空いてる席に座ってくれ。ちょうど隣が比企谷だから丁度良いだろう。」
「はい。」
「じゃあ連絡事項を伝えるぞー」
ハクアの自己紹介の後、担任がSHRを再開するがクラスの人間の興味はハクアにあるようで担任を見ている人物よりハクアを見る人物の方が多い。
そしてSHRが終わるとハクアの周りにあっという間に人だかりになる。
ふと後ろを見ると遠くから由比ヶ浜が頬を膨らませながらこっちを凝視している。
何かめんどくさいことに巻き込まれそうなのでとりあえず机に突っ伏して寝たふりを始めた。
34: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/12(日) 23:48:59.82 ID:xaVfA3qR0
その後は授業があり、あっという間に昼休み。
ちなみに休み時間の度にハクアの周りに人が集まっていたので隣の席である俺は気まずさが半端じゃなかった。

「なぁ、お前昼飯は?」
「あ、お弁当作ってきたから」
「そうか、じゃ」
「ちょっと待って、これ、あんたの分」

ハクアが差し出したのは弁当。それも手作り。

「え、マジで?」
「嘘ついてもしょうがないでしょ。小町ちゃんがあんたは昼飯パンかおにぎりって聞いたから栄養偏ると思って。あんたにはこれから頑張ってもらわないといけないし。」
「そうか・・・さんきゅ。なんか悪いな。」
「別に・・・1人分も2人分も変わらないからね。」
「お、おう。じゃあ俺は行くわ。」
「ちょっと、どこ行くの?」
「いや、雨の日でもない限り俺は教室で食わないんだよ。」
「そう、じゃあ私も行くわ。」
「いや、お前は教室で食えよ」
「どうして?」
「いや、お前と飯食いたいやついそうだろ。さっきから何か視線感じるし。」
「で、でも」
「俺が言うのもなんだがまずは学校に慣れろ。俺のことは気にすんな。じゃあな。」

そう言って俺は教室から出る。
向かった先はいつものベストプレイスではなく奉仕部の部室。
それは雪ノ下が奉仕部の部室で昼食を摂っていると聞いたことがあるからだ。
本意ではないが、これから俺は雪ノ下雪乃と恋愛しなければならない。
ギャルゲーでも何でもまずは攻略対象と出会わなければ意味がない。
まず会わなければ何のイベントを起こすこともできないからだ。

35: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/12(日) 23:50:20.34 ID:xaVfA3qR0
部室のドアを開けるとそこには噂通り雪ノ下の姿。
すると、雪ノ下もこちらに気付く。

「よう。」
「どうしたのかしら、まだ放課後では無いのだけれど。とうとう昼休みと放課後の区別もつかなくなったのかしら」

開口一番にいつも通りの暴言を吐かれた。

「なに、飯食いに来ただけだよ。ダメか?」
「そう、構わないわ。勝手にしなさい。」
「へいへい。」

部室で昼食を摂る許可を得ることができたのでハクアからもらった弁当を開けて食べ始める。
ハクアの弁当は見た目も然ることながら味もなかなかだ。
「比企谷君」
「ん?」
弁当を食べていると雪ノ下から声をかけられる。
「そのお弁当・・・どうしたの?」
「どうしたのって・・・」
「あなた、いつもお昼はパンかおにぎりで済ますって言っていたじゃない。」
「今日もそのつもりだったんだけどな。貰ったし食わないわけにはいかないだろ。」
「もしかして・・・由比ヶ浜さんにでも作ってもらったのかしら?」
「由比ヶ浜がこんな見た目も味も良い弁当作れるわけないだろ。」

そう言って俺は弁当を雪ノ下に見せる。
「そうね。味はわからないけれど由比ヶ浜さんが作ったにしては綺麗すぎるわ。由比ヶ浜さんならきっと卵焼きは茶色だものね。」

こいつちゃっかり俺よりひどいこと言ってるんじゃないの?
昨日俺が帰ってから喧嘩でもしたのか?

36: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/12(日) 23:51:09.14 ID:xaVfA3qR0
「それで、誰からもらったのかしら。」
「ああ、ハクアだよ。」
「比企谷君、二次元のキャラは現実に飛び出してこないわよ?」
「ちげーよ、従兄妹なんだよ。」
昨日から突然悪魔と同居してるなんて言ったらそれこそ二次元扱いされそう。
「そう。」
「てか、今日から学校来てるから由比ヶ浜に確認してみろ。」
「別に特別興味あるわけではないわ。」
「そうか、まぁ勝手にしてくれ。てか、由比ヶ浜は昼休みここに来てないのか?」
「・・・今日は来ないそうよ。」
「そうか。」

それが教室を出るまでに雪ノ下とした最後の会話だった。
さっきまでの会話で由比ヶ浜の名前が出た時、具体的にはわからないが違和感を感じた。
だが、その違和感の正体が明確なのものではないので今は何もできない。
行動を起こすのは雪ノ下の心にスキマができた原因がわかってからだ。

42: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 20:03:23.67 ID:LxIatxOM0
「ヒッキー!」
放課後になり、部室に行こうとする俺に由比ヶ浜から声をかけてくる。
「あのさ、今日部活休むから、ゆきのんに言っといて!」
「え、なんで?直接言うかメールすればいいじゃん。」
「いや、なんでっていうか・・・えーっと・・・」

いつもの休む時の反応とは違う。明らかにおかしい。
何なら今から休む理由を考えてるようだ。
「由比ヶ浜。」
「な、なに!?」

明らかに慌てる由比ヶ浜。予想が確信に変わりつつある。
「今日雪ノ下と一緒に昼飯食ったんだが・・・」
「え!?」
「雪ノ下と何かあったか?」
「い、いや・・・その・・・」
「やっぱりか。」
確信に変わった瞬間であった。

43: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 20:05:20.35 ID:LxIatxOM0
「なぁ、お前らもしかして・・・」
「べ、別に何もないし!あったとしてもヒッキーには関係ないでしょ!じゃあ今日私休むから!また明日ね!」
そう言って由比ヶ浜は俺の言葉を遮り、教室から姿を消した。
もしかして、という言葉に対して何もないし!という返事は何かあったと言っているようなものだ。

「ねぇ八幡。」
「ん?」
後ろから声をかけられたので振り向くとそこにはハクア。
「放課後はどうするの?」
「あぁ・・・」

初めて名前で呼ばれた気がする。従兄妹って設定だし一般的にはこれが普通だろう。
しかし不覚にも一瞬ときめきそうになった。
悪魔とはいえ見た目は美少女だし。胸はないけど。
手錠かけられて階段から落とされるのもご褒美かもしれない。

44: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 20:05:54.00 ID:LxIatxOM0
「何考えてんの?」
「い、いやなんでもない。」
考えてた内容を言ったら取り返しのつかないドM認定を受けそうなのでもちろん黙秘。
「一回部室に行って帰るぞ。そして・・・今日の夜にでも雪ノ下の駆け魂を出してやる。」
「え?あんたいつの間に攻略進めてたの?」
「まぁ俺はステルス使いだからな。協力者にすらバレないように行動するのは簡単だ。」
「なに言ってんの・・・?」

冷たい目で見られてしまった。
「とりあえず部室に行ってくる。すぐ戻ってくるから教室で待っててくれ。」
「あ、うん・・・行ってらっしゃい・・・。」

ハクアは昨日、やり方は人それぞれで一番成績を残しているのが恋愛だと言った。
これはつまり、恋愛しなくても駆け魂は出せるということだ。

正直、雪ノ下が俺に惚れるとは思えない。
言ってしまえばあいつが誰かを好きになるとも思えない。
でも、駆け魂を出すのに一番有効な方法が恋愛なら・・・やるしかない。

45: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 20:08:50.68 ID:LxIatxOM0
「うぃーっす。」
「こんにちは。」
部室では雪ノ下が既に読書をしていた。

「雪ノ下。今日は由比ヶ浜休みだってさ。」
「そう。」
「あと、俺も今から帰る。」
「そう。」
「雪ノ下。」
「何かしら。」
「今日の夜20時に駅前に来てくれ。」
「なぜ?」
「理由は言えないがとにかく大事な話がある。絶対来てくれ。」
「・・・そう、わかったわ。」

素っ気無い返事だったが、最後の約束に対する反応は少し違った。
超重要!マジ真剣!みたいな感じで言ったのが功を奏したのだろうか?
正直断られると思っていたので万々歳。

「じゃあ、また後でな。」
「ええ。」
そう言って俺は部室を後にし、教室にいるハクアの元に向かった。

46: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 20:14:58.43 ID:LxIatxOM0
「ハクア。」
教室で待っていたハクアに声をかける。
「もういいの?」
「ああ。本番は今日の夜だ。」
「そう、じゃあ帰りましょ。」
「ああ。」

帰り道、ハクアに駆け魂について聞くことにした。
家だと小町に邪魔されて聞けない可能性があるからだ。
「なぁハクア。」
「なに?」
「駆け魂ってどんな感じで出るんだ?」
「そうね・・・基本的には空に向かって飛び出る感じね。」
「へー・・・。」
「あんたは駆け魂を出してくれれば良いわ。捕まえるのは私の役割だし。」
「へいへい。じゃあ夜に俺と一緒に来い。駆け魂出すからな。」
「あんまり期待しないでおくわ。なにせ初めてだし。そんなにすんなり行く方が珍しいもの。」
「はっ、ぼっちをなめるなよ・・・?」

自宅に帰り、軽く夕食を済ませた後ハクアと家を出る。
「準備はできた?」
「おう、じゃあ行くか。」

FLAG3.0 知り合い以上、友達未満 に続く。

52: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/24(金) 01:41:54.57 ID:OmlI9Lp50
FLAG3.0 知り合い以上、友達未満

指定した時間の15分前。俺は待ち合わせ場所で待つ。
ちなみにハクアは透明になって俺の横にいる。
透明になれるとか羽衣便利すぎる。

「ハクア。」
「なに?」
「失敗したら罰ゲームとかあるのか?」
「別に直接何かあるわけじゃないわよ。まぁ、駆け魂が成長しちゃうかもしれないけど。」
「駆け魂が成長したら何かあるのか?入ってる人間に影響があるとか。」
「駆け魂の力で超能力みたいなことができるようになったり・・・とにかく常識では考えられないことが起きたりするわ。」
「そうか・・・。」

そもそも悪魔とか駆け魂が常識では考えられない気がする。
それにしても、1人で見えない相手と会話している姿は他人から見ると独り言をブツブツ言っているようにしか見えないだろう。
そう考えると少し恥ずかしい。俺にはエア友達とかいないし。

53: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/24(金) 01:43:54.78 ID:OmlI9Lp50
「比企谷君。」
「おお、悪いな。こんな夜に。」

雪ノ下がやってきた。とりあえずなんてことない普段通りの雪ノ下に見える。
とても駆け魂がいるようには思えない。

「それで、大事な話とは何かしら。」
「いきなりだな・・・。」
「私としては一刻も早く帰りたいもの。」
「へいへい、来てくれてありがとうございます。ここじゃなんだ。場所移動するぞ。」
「わかったわ。」

54: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/24(金) 01:44:48.45 ID:OmlI9Lp50
相変わらず素っ気ない雪ノ下と俺は神社に向かった。
神社を選んだのは人があまり来ない所を考えた結果である。
公園は夜でも案外人が来るのだ。特にカップルがイチャイチャしに。リア充爆発しろ。

「それで、こんな人気の無いところに連れてきて何をする気かしら。通報するわよ?」
「通報されるようなことはしねーから安心しろ。」
駆け魂は出すけどね。でもハクアが最後にキスすれば出てくるとか言ってたから通報されるかもしれない。

「今日呼び出したのはあれだ。お前、由比ヶ浜と何かあったろ?」
「なぜあなたがそんなことを聞くのかしら・・・」
「最近お前らの態度が明らかにおかしいんでな。」
「あなたには関係ないわ。」
「それが・・・関係あるんだよ。」
「なぜ?」
「そりゃあお前・・・奉仕部だし。」
「別に依頼はしていないのだけれど。」

ここまで、雪ノ下は由比ヶ浜と何かあったことを否定していない。
雪ノ下ならば本当に何も無ければ否定するはずだ。

55: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/24(金) 01:45:24.35 ID:OmlI9Lp50
「ああ、確かに依頼はされてない。これはあくまで俺の意志だ。」
「それこそあなたには関係無いと思うのだけれど。」
「だから関係あるって言っただろ。」
「説明しなさい。」
「まぁ、あれだ。あんまりこういうことを言う柄じゃないが、俺は奉仕部を結構気に入ってるんだよ。」
「それで?」
「だから今の奉仕部を壊したくないんだよ。ましてや雪ノ下と由比ヶ浜の内部トラブルでなんて絶対にゴメンだ。」
「そう・・・。」
「雪ノ下、俺は別にお前らの間に何があったかどうかなんて知る気は無い。」

雪ノ下の由比ヶ浜の喧嘩の内容。それは本当にどうでもいい。
内容を知っていれば解決はしやすいだろう。
でも俺の目的は解決じゃない。
俺の目的は雪ノ下の心のスキマを埋めて駆け魂を出すことだ。
あくまで仮説だが雪ノ下に駆け魂が入って由比ヶ浜に駆け魂が入らなかったのは友達の量の差だ。
俺の知っている限り、由比ヶ浜には三浦や海老名さんのようにスキマの部分を埋めてくれる友達がいるが、雪ノ下には由比ヶ浜以外の友達はいない。
現在その唯一の友達である由比ヶ浜が雪ノ下から離れていて心のスキマができているなら俺がそこに入れば良い。

56: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/24(金) 01:45:56.29 ID:OmlI9Lp50
「なぁ、雪ノ下。」
「何かしら。」
「由比ヶ浜が居ない今・・・どんな気分だ?」
「別に・・・元に戻っただけ。それだけよ。」
「そうか。」
「ええ。」
「でも由比ヶ浜が居たことは忘れられないだろ。まるで・・・今お前、心にスキマでもできてんじゃねえの?」
「・・・そうね。比企谷君のくせに随分と的確ね・・・。ええ、確かに由比ヶ浜さんは・・・一番大事な友達よ。少なくとも私はそう思っているわ・・・。」

雪ノ下からほとんど予想通りの言葉が返ってきた。
「お前には由比ヶ浜以外に信頼できる友達っているか?」
「・・・いないわ。」
予想通りの答え。これで俺が入れることがわかった。
問題は雪ノ下が俺を受け入れてくれるかなんだけど。

「そうか・・・まぁ、俺は最初から1人だし心の支えである戸塚や小町とは喧嘩する予定もないし喧嘩になりそうになったら俺が全面的に悪いと謝る覚悟だからお前の気持ちを完全に理解してやることはできないが・・・。」
「急に何かしら?気持ち悪いアピール?」
「まぁ、最後まで黙って聞け。ここからが本題だ。」
「随分と長い前置きだったのね。」
「良いから聞け!」

俺は雪ノ下の両手を掴み近づく。雪ノ下の顔がすぐ目の前にある。
「な、なに!?離しなさい!」
「俺は絶対離さねえ!」

57: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/24(金) 01:46:40.58 ID:OmlI9Lp50
「えっ・・・!?」
最初は抵抗していた雪ノ下だったが、今は力を感じない。
畳み掛けるには・・・もうここしかない。

「こんなこと言うのは柄じゃないのはわかってる。だけど・・・これだけは言っておく。俺とお前は友達じゃない。でも同じ奉仕部の仲間だ。だからこれから先・・・今みたいに辛い時は迷わず俺を頼れ!どんな時でも力になる・・・俺がずっと・・・近くにいてやる!」

言い切った。考えていたことは全部言えたわけじゃない。でも言いたいことは言えた。
後は、雪ノ下が答えを出すだけだ。

「ずっと近くにいるって・・・あなたストーカー?」
「うるせえ。そういう意味じゃねーよ。」
「あと何でも1人でやろうとするあなたに自分を頼れと言われてもイマイチ説得力がないわね。」
「・・・くっ。」

ダメ出しを受けてしまった。失敗だったか・・・?
駆け魂を出すってハクアに宣言したのにどうしよう。今日出ないかも。

「でも・・・あなたの言葉・・・嬉しかったわ。」
「雪ノ下・・・」
徐々に少なくなる雪ノ下との距離。

そして―

「ありがとう。」

唇が重なった。
そして同時に雪ノ下から駆け魂が飛び出る。

「出た!勾留ビン!」
雪ノ下から出てきた駆け魂を待機していたハクアが捕まえに行く。
「初めてにしては上出来よ!あんた才能あるじゃない!駆け魂勾留!」
そしてハクアが駆け魂を捕まえる。

「私の初めてをあげたのだから・・・責任取りなさいよ。」
「まぁ俺も初めてだしな・・・おあいこってことで・・・。」
「そう・・・。」

記憶が消えてくれなきゃ大変なことになりそうだ。
とりあえず・・・俺の仕事は終了。

58: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/24(金) 01:47:49.75 ID:OmlI9Lp50
次の日の昼休み。
雪ノ下が心配で廊下から部室を少し覗いてみると雪ノ下と由比ヶ浜が二人で弁当を食べているのが見えた。
「ゆきのーん!これ美味しいね!どうやって作ったの!?」
「レシピ通り作っただけよ・・・由比ヶ浜さんにも作れるわ。」
「ほんとー?じゃあ今度作り方教えてね!」
「はいはい・・・。あ、試食は自分でしてちょうだいね?」
「ちょっとそれどういう意味ー!?」

どうやら仲直りしたみたいだし、俺がこの場に割り込む必要もない。
部室には入らずにいつものベストプレイスに向かう。
「八幡。」
「ハクアか、どうした?」
「部室に行かないの?」
「ああ。雪ノ下には由比ヶ浜がいるしな。」
「そう。ほんとは残念じゃないの?校内一の美少女なんでしょ?」
「別にそんなことねえよ・・・。俺は俺の仕事をしただけだ。」
「ま、これからもよろしく頼むわよ!あんたも結構素質あるみたいだし。」
「偶然だよ。あんま俺に期待すんな。」
「協力者の私が期待しないでどうするのよ。」
「へいへい、そうですね。じゃあ俺は飯食いに行くからまた後でな。」
「私も行くわ。」
「どうぞご勝手に・・・。それよりちゃんと雪ノ下の記憶は消えてるんだろうな。」
「心配なら聞いてみれば?俺とキスしたか?って。」
「勘弁してくれ・・・。」

こうして、初めての駆け魂狩りは無事に終わったのであった。

FLAG4.0 生徒会長 に続く。

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